現在48歳、20代での、会社員経験やバイトをしながらの役者生活を経て、現在は『勇者ヨシヒコ』シリーズを始め多くの作品で、活躍する俳優・佐藤二朗。最新作はMBS・TBS系列で放送されるドラマ『やれたかも委員会』。過去の“やれたかもしれない夜”が長く心に引っかかり、赤裸々に自らを晒す相談者たちに、全身全霊を込めて「やれた」のか「やれたとは言えない」のかのジャッジをくだす、委員会の主宰者・能島譲を演じる。
まさに“やれたかもしれない”日々を引きずって生きる“永遠のオトナ童貞のための文化系マガジン・チェリー”は、『やれたかも委員会』に深く共鳴。
主演の佐藤二朗さんにインタビューをおこなった。苦節の20代の頃を語ってもらった前回に続き、今回は、佐藤さんを支えた現在の奥さんの話、結婚相手の選び方などを聞いた。
★インタビュー現場での音声の一部を特別公開!
佐藤さんの肉声の臨場感とともにお楽しみください★
“やれなかった女性”はどんどん綺麗になっていく
――『やれたかも委員会』が、ついに放送・配信が開始されますが、ご覧になっていかがでしたか?
佐藤「まだ2話分しか見てないんですが、武田玲奈ちゃんカワイイよね。前に同じ枠でやっていた『目玉焼きの黄身 いつつぶす?』ってドラマで一緒で、現場でもひたすら『玲奈ちゃんかわいい』ってずっと言ってたんですけどね。倉持由香さんも色気があって、どの回も女性が色っぽくてかわいいんですよ」
――このドラマは、そんな女性たちを思い出す男性たちが委員会に相談にくるという形式で基本的には進んでいきます。
佐藤「 “やれなかった女性”は、記憶の中でどんどんと綺麗になっていきますよね。やれなかったからこそ、余計にね。」
――佐藤さんも、このドラマを見て、過去の女性たちがよぎったりされましたか?
佐藤「嫁と住んで23年が経つんで、だいぶ忘れちゃってますね……。いや、もちろん、事実としては覚えてはいます。でも、感覚が思い出せないんです。それこそ『やれたかも委員会』のドラマで描かれているような、ドキドキした感情が思い出せなくて。だから、自分が忘れてしまっている分、ドラマで相談者の思い出に対して毎回言う『大事になさってください』というセリフに熱がこもりましたよね」
後悔をひきずる人のほうが魅力的
――このドラマを見て、基本“やれてない”側の僕たちも、“やれなかった夜”に価値を感じることができるようになりました。
佐藤「僕も皆さんと同じ側の人間なので、”すぐにやれちゃう”人たちに、負け惜しみっぽいコメントになってしまうんですが……。“やれた”側の男の人たちには経験できないプロセスを、僕らは味わうことができていると思うんですよ。たしかに、人生では、異性との関係に限らず『もしかしたら、やれたかも』と、たくさん悩みます。でも、後悔を引きずる人のほうが魅力的だと思うんです。やれたかもしれない夜は、人間の綻びであり、綻びがあったほうが人は奥深くなったりする。そんな気がするんです」
――まさに、こうして佐藤さんの言葉を聞いても、ドラマ自体を見てもそんな気がします。
佐藤「こういう『やれたかも委員会』というバカバカしい看板を掲げる形はとってますけどね、意外に人生哲学があったりして、笑える回もありますが、ぐっとくる回もある、奥が深いドラマなんです」
――「綻びがあったほうが人は奥深くなる」ということですが、佐藤さんが、奥深い、と感じる人はいらっしゃいますか?
佐藤「やっぱり、山田孝之は奥深いですね。10代の若いうちに人気俳優になったけれど、その後、紆余曲折を経て今がある人ですからね。ひと回り以上も下の年齢だけど、アイツは素直に凄いと思う。冗談ではなく、そう思います」
――ちなみに山田さんとはこの『やれたかも委員会』を見て何かお話されましたか?
佐藤「恋人になりたいと思っている人と見ると、もしかしたら、うまくいくかもしれない、と。でも、全く逆パターンになる可能性もあるかもしれない、と言ってました(笑)。他にも『男女混合で見て判定を下しながら見ます!』ってメールしてきてくれた20代の舞台女優もいましたけど、判定するには、普通は思っていても口に出さないようなことを言わないといけないから、なかなか危ない橋ですよね(笑)」
根拠もなく“絶対”って思ってた
――“人間の綻び”とは少し意味がズレるかもしれませんが、先日NHKの『SWITCHインタビュー達人達』で「僕の芝居を見れないことで、世の中の人が損するんじゃないか、って子供の頃から思ってた。バカでしょう?」とおっしゃっていたのを見て、ものすごく、自信と謙虚さのバランスの取れた方なのだな、と感じました。
佐藤「あそこは『そんなこと思ってたの?』って連絡が何人かから来ましたね(笑)。一歩間違えたら、ただの勘違い野郎ですから、使うんなら『バカでしょう?』とあわせて使ってね、って友人でもあるディレクターには言っておいたんですけど」
――「バカでしょう?」という距離感を持ちながらも、小さいときからそう思える強さに感銘を受けました。
佐藤「特に根拠もなく“絶対”って思ってたんですよね。役者でやっていける、と。もちろん、それと同じくらいの大きさで『こんな片田舎にいて、ひとりで東京に行って役者で食えるわけがない』とも思っていました」
“29歳・バイト生活”を選んでくれた素晴らしい嫁
――じゃあ、20代はそのシーソーが行ったり来たりする感じだったんでしょうか?
佐藤「まさに、そんな感じですね。会社に勤めて、会社をやめて、芝居をやって、また会社に勤めて、またやめる……。29歳でバイト生活でしたからね。そのときから、つきあっていた今の嫁がよく許してくれたなと思いますよね」
――素晴らしいお嫁さんですね!
佐藤「まあ、素晴らしいですよね。これは、きちんと書いておいてください(笑)」
――承知しました(笑)。そんな矢先になんなのですが、この『やれたかも委員会』のように、やれるかもしれない状況が巡ってきたら、素晴らしいお嫁さんがいても揺らいでしまうのが男だと思うのですが、佐藤さんは大丈夫なのでしょうか?
佐藤「浮気ってことですよね? 僕は全くないですね。浮気の経験というか、心が揺らぐこと自体がないです。『ない』と言わないと、しょうがないくらい嫁が怖い、ということもあります」
――心が揺らがない理由としては、愛よりも恐怖のほうが大きいと。
佐藤「ええ、“愛<恐怖”ですかね(笑)。だから、自分が浮ついてるなーと思う男子諸君は、怖い女性を見つけるといいのかも……しれません」
――その上で、佐藤さんの奥さんのように才能を信じてくださる方だと最高ですね!
佐藤「29歳でバイトと芝居の並行生活をすることを許してくれたのが、才能を信じていたからなのか、僕が何を言っても聞かない人だと思って諦めたのか、単なる放任主義だったのかはわからないですけどね(笑)」
結婚の最優先条件は“愛”
――どれだったにしろ、失礼な言い方ですが、お金が目的なわけではなかったわけで、そこは素晴らしいですよね。
佐藤「たしかに、それは心から思いますね。ちょっと昔に流行った『3高』という言葉があるじゃないですか。女性が男性を選ぶ基準としてあげる3つの基準が『高学歴、高収入、高身長』っていう。僕は、本当に、心からその感覚がわからないんですよ。1位は『愛』でしょ?
あ、これ、かっこつけようとか、好感度をあげようとかそういうことで言ってるんじゃないですよ。『愛』が1位じゃないと、その人の人生が地獄になっちゃうと思って言ってますけど」
――最高に響きます! でも、いまだに「3高」を重視する女性は多い感覚です。
佐藤「『3高がいい』って言ってる女の人は、そのほうが都会的に、現代的に見えると思ってわざと言ってるんじゃないか、くらいに僕は勘ぐってますよ。逆に男性でも『愛はいらない。金が全てだ』みたいなことを言う人とか、ときどきいますけど、彼らもみんな露悪的に、わざと言ってるんじゃないか、と思ってます」
――「愛が大事」っていうと気持ち悪がられることもあるから、“逆に”ってことですよね。
佐藤「そうです!『やっぱり愛が大事ですよね』って言うと『なにそれ?バカなの?』みたいな感じで周りにひかれちゃうから、その本心をあえて隠してるんだろうと僕は思っているくらいで(笑)。それくらい、『3高』を結婚の条件にあげる感覚が信じられなかったんです。僕はマジで、身長や学歴や収入よりも、愛で結婚相手を選ぶべきだと思っています。そのほうが、心安らかに人生をおくれると思うんですよね」
女子高生、愛はどうした?
――愛が1位、めちゃめちゃ共感するので、佐藤さんの考えが一般的になっていったら嬉しいです。
佐藤「前に、喫茶店で女子高生2人が、結婚の条件について話しているのを聞いたんです。ひとりが『安定かなー』って言っただけで驚いたんですが、なんと、もうひとりが『私も!』って言ったんですよ。それでTwitterで『おい女子高生、愛はどうした? おじさんは1位だと思う。現実わかってない?愛だけじゃ飯は食えない?では考え方を改めよう。愛はダントツで1位だ』みたいなことを書いたんです。そうしたら、すごく拡散された反面、『愛だけじゃ飯は食えないと思います』みたいな反論のリプライも多かったんです。でも、僕は本当に、愛は1位だと思うし『一生この人と一緒にいたいと思える人と結婚すればいいと思う』といつも言っています。綺麗事かもしれません。でも、僕みたいな人間が、そういう綺麗事をちゃんと言っていかなきゃいけないと思っているんです」
(取材・文:霜田明寛 写真:浅野まき)
▼作品情報
MBS・TBSドラマイズム
ドラマ「やれたかも委員会」
出演:佐藤二朗 白石麻衣(乃木坂46) 山田孝之
間宮祥太朗 勧修寺保都 小倉優香 / 浜野謙太 倉持由香 / 森永悠希 武田玲奈 / 永野宗典 江夏詩織 手塚とおる /
杉野遥亮 山本舞香 / 中尾明慶 森川葵 / 矢野聖人 山地まり / MEGUMI 福田麻由子 小関裕太 (エピソード順)
原作:吉田貴司「やれたかも委員会」(cakes・双葉社)
脚本:山崎淳也 橋口俊貴 山口雅俊
演出:山口雅俊
製作:ドラマ「やれたかも委員会」製作委員会・MBS
©2018吉田貴司/ドラマ「やれたかも委員会」製作委員会・MBS公式Twitter:@yaretakamo_tv
公式Instagram:@yaretakamo_tv
公式LINE:@yaretakamo_tv▼放送情報
MBS 4/22(日)スタート 毎週日曜深夜0:50~
TBS 4/24(火)スタート 毎週火曜深夜1:28~
▼配信情報
dTV /Netflix 毎週水曜深夜0:00~