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「安倍晋三はちんちんを出そう」演劇界の鬼才が語る正論の“正しい伝え方”

正しさと面白さを奇跡的に両立させた男

正しいことは、たいてい面白くない。だから、“面白く”正しいことを言うのは難しい。そう、正論はギャグにしづらいのだ。そんな中、その“正しさ”と“面白さ”というなかなか両立しづらい2つを、見事に両立させてしまった映画がある。11月28日(土)公開の『愛を語れば変態ですか』だ。

愛という正論をそのまま伝えてしまったら、面白くないどころか変態扱いされてしまうような風潮に、逆説的に切り込んだ刺激的なタイトル。作品は、かなりのハイテンポで笑いを繰り出しながら、最終的に観客にしっかりと愛を届けることに成功している。

監督・脚本を務めるのは福原充則。劇団ピチチ5を旗揚げし、岸田國士戯曲賞にもノミネートされた演劇界の鬼才だ。本作で映画デビューを果たし、最近では、テレビ東京系の新コント番組『SICKS ~みんながみんな、何かの病気~』の脚本を務めたことでも話題になっている。そこで、前編・後編の2回に分けて福原にインタビュー。

映画の話はもちろん“正論の正しい伝え方”から話は発展、この国の首相まで巻き込んだ、“ついていきたいリーダー像”にまで話は及んだ。

メッセージを“メロディという理屈”で包み込むバンドに対して僕は

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――前半の登場人物の笑える会話の応酬から一転、後半の愛に関するメッセージの崇高さにやられました。

「やっぱり、愛は大事じゃないですか(笑)。でも「愛は大事」とか「愛は勝つ」とか言うと、ほんとに鼻で笑われるんですよね。僕自身、子供のころ大事MANブラザーズバンドを鼻で笑いながらも『でもこの人たち、言ってることは正しいよなあ』と思ってて(笑)。

で、次にそういうお安いメッセージの歌謡曲をバカにしているロックバンドの歌詞を聞いてみますよね。そうすると、言ってることは一緒なんですよ。要は言い方の問題なんです。どんな格好して、どんなメロディで言うかで、こんなに伝わり方が違うんだって、いち音楽好きとして、すごく感じたんです。シンプルなメッセージがあるとすると、メロディの部分は理屈なんですよね。彼らがメロディで武装してる分、僕も武装しなきゃいけない。だから、僕はくだらない会話で武装して伝えていこうとしているんです」

――そして福原さんの会話劇は、くだらない会話の中に、突然すっと真理が挿し込まれますよね。

「正論が好きなんですよ。でも正論ってむかつきますよね。小学生の時から真面目な学級委員に『廊下を走らないでください』って言われても聞かなかったじゃないですか。それに、正論だけ言っていても生きてけないですしね。だからひとつ正論を言うときは10の言い訳をつけないと聞いてもらえないんです。いきなり正論を言われても『それはお前だから言えるかもしれないけど、こっちの社会で色々大変なんだよ』と思うこともありますよね。

でも一方で、みんな映画のようなフィクションの登場人物には、ズバッと正論を言ってほしいんだと思うんです。だから、僕は、実社会で生きている人が納得できる形でいかに正論を言うか、っていうことをいつも気にしています。そうすると登場人物たちは、多弁で詭弁になっていくんです」

――それぞれの生きている世界が違いますから、なかなか多くの人を納得させるのは大変ですよね。

「どういう奴が言ってるのかっていうのも関係してきますよね。例えば6歳の男の子に『世の中をよくしてください』って言われたら、一瞬感動はするかもしれない。でも『お前は、どういう世の中のこと言ってんの?』って、感じると思うんですよ。自分の“世の中”と、6歳の“世の中”は違うと思うんです。だから、真面目な話をすると、今の安倍首相もそうだと思うんです」

説得に必要なのはくだらなさと軽いエロ

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――安倍首相ですか?

「僕は、安倍首相は別に戦争をしようとは思ってなくて、真面目にこの国をよくしたいと思ってるんだと思うんです。でも、あの人が思ってる“この国”とそれぞれが思ってる“この国”が違うから、デモが起こったりするんだと思うんです。それぞれが『この国をよくしよう』と思っているのは一緒なんじゃないか、と」

――彼らがそれぞれのメッセージに説得力を持たせるためにはどうすればいいんでしょうか?

「あくまで僕の場合ですけど、説得力と波及力には、くだらなさと軽いエロが必要だと思っています。エロは下ネタ、とも言い換えられますね。生きていく、仕事をする、飯を食べる、金を稼ぐといった中核の外側に、くだらないことがある。外側を抜きに話してる人は世界が小さく見えるし、逆に外側まで含まれていると世界が広く見える。『うんこ』『ちんちん』とか、あまり必要なさそうなメッセージまで含んで伝えてもらえると、響くといいますか(笑)」

――真面目なことだけ言っている人の話より聞く気になりますね!

「真面目に喋っている人の言うことは聞きたくないじゃないですか(笑)。だから、安倍首相がちんちん出しながら『この国を平和にしたい!』って言い出したら、ちょっと聞く気になりませんか? 『包茎か、…うん、悪い人じゃないかも』とか……。とはいえ、安部首相の味方をする気は全くありませんけどね」」

「愛は地球を救う」を言うだけじゃない主人公

――確かに、一気に“ついていきたいリーダー像”に思えてきました。

「僕にとって、今回の主役で黒川芽以さん演じるあさこはついていきたいリーダー像なんです。誰の後ろならついていきたいかなあ、って考えたら、すごく真面目なリーダーよりは、ついていくとキスしてくれるらしい人のほうがいいなあ、って(笑)」

©2015 松竹

©2015 松竹

――そして、色々と屁理屈を言う登場人物たちの中で、あさこだけは、自ら行動にうつしますよね。

「そうですね、劇中でひたすらみんなが屁理屈を言ったあとに、彼女は動きます。テレビ局や世の中がよく言う『愛は地球を救う』っていう言葉に対して、言葉だけじゃなくてやるのがあさこです。そして、愛とは何かと言ったら、子供じゃないわけで、セックスまでも含むわけですよね」

――そう考えるとラストシーンは、まさに“愛は地球を救う”図ですね。

「そうなんです! 救いに行く図なんです。別に僕はみんなに『あさこのような先陣をきって行動をする人になろう!』と言おうとは思っていないんです。自分で最初の道を歩かなくてもいいから、誰か先陣をきったあさこのような人についていくだけでもいいから動こうよ、と。

『書を捨てよ街へ出よう』とか『ネットばっかしてないで街へ』とか、オッサンみたいで言いたくもないし、僕も言われたらイライラするけど……でもそうじゃないですか(笑)。ネットを見てると、みんな屁理屈がうまいなって思うんですよ、今回の登場人物たちのようにね(笑)。でも、誰かについていって行動することすら、萎縮しちゃう風潮が世の中にあると思うんです。屁理屈で理論武装したら、それは使ったほうが面白いよ、と思うんですけどね」

記事は後編に続きます!

(取材・文:霜田明寛 写真:田尻和花)

■関連リンク
・ソーシャルトレンドニュース特設ページ 11月 愛を感じる2作品『恋人たち』✕『愛を語れば変態ですか』
・映画『愛を語れば変態ですか』公式サイト http://aikata.jp/2015年11月28日(土)よりロードショー

【キャスト】黒川芽以、野間口 徹、今野浩喜(キングオブコメディ)、栩原楽人、川合正悟(Wエンジン チャンカワイ)/永島敏行
【監督・脚本】福原充則
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(c)2015 松竹


(c)2015 松竹

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