ー3カ月前、童貞を捨てた。思ったほど、世界は変わらなかったー
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ウエンツ瑛士「打算をやめました」31歳で見えてきたこと

『ヨコハマメリー』中村高寛監督11年ぶりの新作にウエンツ瑛士が参加!

「ハマのメリーさん」と呼ばれる横浜の娼婦の女性と、彼女を取り巻く人々を丹念に追い続け、2006年にドキュメンタリー映画としては異例のヒットを記録、数多くの賞を受賞した『ヨコハマメリー』。

処女作として『ヨコハマメリー』を手がけた中村高寛監督の実に11年ぶりの新作となるのが『禅と骨』。

『禅と骨』は日系アメリカ人である禅僧ヘンリ・ミトワ氏の生涯を追うドキュメンタリーであり、その中にドラマパートが挟みこまれる構成になっている。そのドラマパートで、ヘンリ・ミトワさんを演じたのが、ウエンツ瑛士さん。4歳で芸能活動を始め、現在31歳。 30歳になる直前にこの作品を撮ったというウエンツさんに、この作品を経て30代にはいったことで見えてきたものや、理想の男性像、追い求めるものの変化などを聞いた。

「想像つかないけど、絶対大丈夫」

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――最初にこの企画を伺って、中村高寛監督の作品にウエンツさんが参加されるという異色の組み合わせに心躍りました。まずは、どういう経緯でウエンツさんがこの『禅と骨』に出演されることになったのかお聞かせください。

「中村監督とスタッフの方々が直々に来てくださって、オファーをいただきました。もう、情熱がすごくて。正直『ドキュメンタリーを撮って、そこにドラマパートを入れて……』と言われても、どういうものになるか想像つかないじゃないですか(笑)。想像はつかないんですけど、でもなんだか絶対大丈夫だろうっていう確信はあったんです。だから、気持ちで言われて、気持ちで返した、という感じですね」

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――長い人生経験があり、ひとことでは表せないヘンリ・ミトワさんという人物。演じる上でどうアプローチしていったんでしょうか?

「長く生きてこられた中で、色んなことが何層にも重なって、最終的なヘンリ・ミトワさんができあがっていったんだと思うんですね。だから、その重なったあとの人生を見て、薄くして演じるのではなく、何層もある中の一部の層をしっかり演じるという感覚でしたね」

ベッドシーンと英語シーンは……

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――異色の……といいますか、ベッドシーンもありました。行為の際に、母の顔がよぎるという。

「あそこは、どうして、そして、どうやって母の名前が出てくるのか、中村監督と話しましたね。男としては、母親の名前を出すってちょっと恥ずかしいじゃないですか。その恥ずかしさを取っ払ってしまう感情とは何なのか、考えました」

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――そして、流暢に英語を喋るシーンもありました。

「あそこは練習しました。僕、英語喋れないですから(笑)。ひとつずつ確認しながらやっていきましたね」

自分と技術と役の3つを結びつける

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――バラエティなどでも活躍されているウエンツさんですが、お芝居に関してはどんな捉え方をされているんでしょうか?

「自分自身が充実していないと、どんな役もやれないんだな、というのは思います。自分の実体験と技術と役の3つを結びつけていく作業の楽しさを、最近やっと感じられるようになってきたところです」

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――今回のヘンリ・ミトワさんを演じる上でも、自分の実体験を思い出されたりしたのでしょうか?

「普段この顔で生きていて、ときどき『なんか嫌だな…』と感じる一言をくらうことがあるんですけど、そのときの気持ちを思い出したりしましたね。ただ僕はこういう仕事をしているので、他のハーフの方に比べるとそういう経験は少ないとは思います。普通は何万回と『日本語大丈夫ですか?』なんて聞かれてると思うんですけど、僕はある程度、皆さんに日本語が喋れるということを認知してもらっているので、外国人として扱われることは少ないんです」

魅力的な人のそばにはいたくない

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――そしてドキュメンタリー部分も完成した作品を見て、あらためてヘンリ・ミトワという人物をどう感じられましたか?

「そばにいたくないですね(笑)。パワーがありすぎて……」

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――ええっ、どういうことですか?(笑)

「ヘンリ・ミトワさんに限らずなんですが、僕は、“究極的に魅力的な人”のそばにいるのが嫌なんです。もうこれは性分なんです。自分がそういう魅力的な人でありたいと思っているので、そういう人のそばにいるのは嫌なんですよ」

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――それは昔から今までずっとなんですか?

「20代後半くらいからやっと、逆にそういう魅力的な人がいたら面白がったり、取り入れたりしてみようという発想が出てきました。けど、昔は絶対に離れていましたね。そういう人といるくらいなら離れようと思って家に帰るんですけど、家でもひとりでイライラしているという(笑)」

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――なかなか徹底されてますね……。

「もう、そのリアクションもですけど、むしろ、僕以外がみんな、そういう発想じゃないことが驚きでしたもん。みんなオトナだな、って(笑)」

かっこいい男像、変わるものと変わらないもの

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――年齢を重ねると共に、大丈夫になっていったのはなぜなんでしょうか?

「うーん、プライドが落ち着いてきたのかもしれませんが……。自分の目指す、かっこいい男像が少しずつ変わってきたのかもしれません。 “魅力的な人をより魅力的に見せられる自分”にもなりたいといいますか」

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――色々と大人への変化が起きているんですね。ちなみにかっこいい男像でいうと、25歳のときの著書で『40歳でキャーと言われる男になりたい』と書かれていましたが、そこはブレてないですか?

「ええ、あれは僕にとって、芯の中の芯の部分なので、いつも変わらないです。変化が起きている部分は、後輩を見て受けた影響が大きいですね」

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――後輩の俳優さんを見て感じることがあったということですか?

「なんだか、尖っている若者がいないじゃないですか(笑)。下の世代に、バカなことをしているような、尖ったやつがいないなって気づいたときに、下の世代が大人に見えて恥ずかしくなっちゃって。そこから僕の目指すかっこいい男像の微調整が始まったのかもしれません」

「自分はどう生きたいか」考えることを放棄していた

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――それでは、ウエンツさんがヘンリ・ミトワさんに影響を受けた部分があれば教えてください。

「30歳になる前のタイミングでこの作品を撮ったのですが、自分はどう生きていきたいのか、考えるようになりました。僕は4歳からこの仕事をやっていて、ありがたいことにお仕事をいただけてここまできて。でもその分、みんながどこかでしているだろう、自分はどう生きたいか考えるということを放棄して生きてきてしまったんです。そのことに気づけましたね」

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――ちなみに、どう生きていきたいと考えるようになったのでしょうか?

「ヘンリさんは、自分の意思だけで生きているじゃないですか。自分のやりたいようにしか、やってきていない。そういう風に生きていきたい、と思うようになりました」

未来を描くより、今に意識的に

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――ウエンツさんの中に、やりたいことができていない、という感覚があったということでしょうか?

「ええ、実は心の底ではそう思っていたんだ、ということが掘り起こされた感じですね。周りからしたら僕は、やりたいことをやってきているように見えると思うし、そういう部分ももちろんあります。求められることも、やりたいこともバランスをとってやってきたつもりだったんですが、まだまだやりたいことをしきれていないぞ、と気づかされた感じです」

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――さらにその撮影での気づきから2年以上が経ちましたが、変化はありましたか?

「それまでは、自分の未来を描いて、そこからやりたいことを逆算して決めていく……というやり方だったんです。それが、もうちょっと直感的になりましたね。打算的に考えないといいますか。『何にも繋がらないかも』と思っても、やりたかったらやる。未来を描くよりも“今自分のやりたいこと”に意識的になってきました。もちろん、まだまだ変化の途中ですが、少しずつ変わっていければと思っています」

魂が汚れていると、機会がやってくる

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――もしかしたら、その先にウエンツさんが、ヘンリ・ミトワさんのようなパワーある大人になる日がくるかもしれませんね。

「だといいですね。ただ実は、このヘンリ・ミトワさんを演じた後にも、舞台でスコット・フィッツジェラルドを演じる機会があったんですよ。アメリカの作家なのですが、ヘンリ・ミトワさんと同じく、周りを巻き込んでいくタイプのパワーのある人で。『こういう役が続いてくるということは、僕も本来そういうタイプの人間なのでは?』と思い始めています(笑)」

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――ヘンリ・ミトワさんやフィッツジェラルドのような、魅力的すぎて、パワーのある人。

「ヘンリ・ミトワさんもフィッツジェラルドもきっとどこかで僕を見ていて、僕の魂が汚れているのを見ると、やってきて、こういう素敵な機会をくれているんだと思うんです。彼らが僕の、もともとあったピュアな魂を引きずり出してくれるんですよ。
だから、過去の僕みたいに、パワーを奪われたくないと思っている人は、早急に僕から離れたほうがいいかもしれませんよ(笑)」

『禅と骨』は9月2日(土)から、ポレポレ東中野、キネカ大森、横浜ニューテアトルほか全国順次公開。

(取材・文:霜田明寛 写真:浅野まき)

映画 『禅と骨』9/2(土)より、 ポレポレ東中野 キネカ大森 横浜ニューテアトルほか全国順次公開
監督・構成・プロデューサー 中村高寛 / プロデューサー 林海象
ドラマパート出演 ウエンツ瑛士 / 余 貴美子 / 利重剛 / 伊藤梨沙子 / チャド・マレーン / 飯島洋一 /山崎潤 / 松浦祐也 / けーすけ / 千大佑 / 小田島渚 / TAMAYO / 清水節子 / ロバート・ハリス / 緒川たまき / 永瀬正敏 / 佐野史郎
ナレーション 仲村トオル
©大丈夫・人人FILMS
2016年 / 127分 / HD 16:9 / 5.1ch 配給:トランスフォーマー

<衣装>
ベスト/¥27,750、シャツ/¥17,900、パンツ/¥27,750
ネクタイ/¥12,050、シューズ/¥24,250
以上全て TED BAKER LONDON
(価格はすべて税込み)

チーフ/参考商品/フェアファクス

その他/スタイリスト私物

<スタイリスト>
スタイリスト:伊達めぐみ(UM)

<ヘアメイク>
Aico

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