毎日放送制作の『情熱大陸』(TBS系、日曜23時〜)は、毎回1人の人物を取り上げ、実像に迫るドキュメンタリー番組です。タレントやスポーツ選手に限らず、蕎麦職人、海洋生物学者、カカオハンター…等々、幅広い分野から取り上げています。
2014年の平均視聴率は5.19%でした。ドキュメンタリー番組が視聴率不振で消えていくなか、健闘しています。
昨年の視聴率ベスト10 (関東地区/ビデオリサーチ社調べ)を見てみましょう。
このランキングを見ると、ひと目で『情熱大陸』が異色の番組だとわかります。
『タレント潜在視聴率』なるデータがあるほど、昨今の番組はタレントのキャスティングにこだわります。テレビ番組においても、マーケティングは必須であり、一概に悪い傾向だとは言えません。
しかし、マーケティングにこだわる番組が多過ぎると、どのチャンネルをつけても同じようなメンツが並び、似通った番組が増えます。すると、視聴者は飽き、テレビ離れを引き起こす一因となります。
特に、最近はテレビ全体の視聴率が低迷しているため、どうしても数字の取れそうな“安定した番組”を制作しがちになります。
そのなかで、『情熱大陸』は人選からして異色なのです。ベスト10を見ても、いわゆる有名人ではない人の名前も挙がっています。
ほかでは取り上げないような人物に密着し、視聴率という結果を残す。『情熱大陸』は、一般的に名が通っていなくても、数字は制作者次第で変わると証明する“現代テレビ界のアンチテーゼ”と言えるような番組です。
(文:シエ藤)