この日の舞台挨拶の最後に福士蒼汰さんはこう言った。
「出てくるキャラクターに悪い奴が1人もいない。みんなすごくいいやつというのが見どころ。この映画を観て、いい気分になって帰ってください」
日本中の女の子に憧れられている21歳は、その人気に一切おごるそぶりを見せなかった。自分のことを二の次にして、ずっと“共演者や作品のいいところ”ばかりを口にしていた。
テレビや映画のみならずCM出演などで彼を見かけない日はない。しかし、それでももっと彼のことを観たいし、知りたいと思うイベントだった。
■女子高生の胸キュンバイブルが原作、映画『ストロボ・エッジ』がついに完成!
NHKの連続ドラマ小説2013年前半期『あまちゃん』出演以降、福士蒼汰と有村架純の破竹の勢いが止まらない。そんな“旬すぎるW主演”が話題の映画『ストロボ・エッジ』の完成披露試写会が、16日に都内で行われた。
原作は女子高生を中心に支持され、累計580万部を突破した咲坂伊緒のマンガ作品。監督は『余命1カ月の花嫁』『きいろいゾウ』などで男女の機敏な感情を描き、恋愛映画作品に定評のある廣木隆一監督だ。
会場となったホールは500倍以上から選ばれたというラッキーなお客さんで満員になった。
女子高生中心の観客が多く、みんな少女マンガの登場人物のような面持ちでイベントの開始を待っている。
席が暗転してカーテンが開くと、劇中の制服姿に包まれた主要キャストが登場…!
■“どんな奴にも優しい”人気者のクラスメートたちを観ているような舞台挨拶
まず最初に是永麻由香役の佐藤ありささんから「26歳なのに制服着ちゃってごめんなさいっ」という挨拶。それを受けたように入江さんから「美人のおねえちゃんがいて、幸せな是永大樹役の入江甚儀です」とコメント。
ここまでイケメンで美女ぞろいだと一人くらい調子に乗ってもよさそうなものだが、ほんわかする自己紹介ばかりが続く。
その日のキャストはとにかく“お客さんに楽しんでもらいたい”“いかにこの映画と仲間が魅力的か知ってほしい”という思いに溢れた様子だった。
不遇の青春時代を送り、普段はイケメン嫌いの筆者だったが、一緒になって笑い、一瞬でこのキャストたちのファンになってしまった。
特に男子キャスト陣はプライベートでの仲の良さを思わせるほど息ぴったり。安堂拓海役の山田裕貴さんが「福士くんはすごくいい子」と誉めると、福士さんも「裕貴もすごい真面目で優しい人間。人の気持ちを思いやっていて、どうすれば相手が気持ちよくいい状態になれるかをいつも考えている」とお互いに褒め合う。
すると、入江さんが「イチャイチャしないで!俺の蒼汰だから!」と2人の間に入り場内は興奮気味の笑いに包まれた。
実際の高校生活でもスクールカースト上位のグループに居そうな彼ら。
“グループが違う奴”にも優しい、(絡んでもらえるとこっちまでうれしくなるような)クラスの人気者たちのような印象を持った。
それは時々見受けられる作品宣伝用の“仲が良い俺ら”という用意された愛想とは全く異なるものだ。
なぜそんな彼らがキャストに選ばれたのか、この作品のストーリーをみると納得するものがあった。
■ただのリア充ムービーではない!ハチクロ以来の全員が片思い映画!?
この物語は、恋に奥手な女子高生・木下仁菜子(有村架純さん)が冒頭、学校イチの人気の男子・一ノ瀬蓮(福士蒼汰さん)に告白してフラれるシーンから始まる。登場人物全員が片想いしているという切なすぎる学園ラブストーリーなのだ。
好きな人に彼女がいる、まわりにカップルだと思われるくらい仲良かった女の子に振られてしまう、チャラい自分が一途になってしまうくらいの女の子に出会う……etc.
スクリーンに映し出される純粋な想いたちは、高校時代のあなたに重なるかもしれない。もしくはまわりに同じような恋をしている人たちの辛さに寄り添えるかもしれない。
本作はいつまでも大切したかった気持ちに、もう一度出会える映画であるように思えた。
■福士蒼汰、ブレイク前から『ストロボ・エッジ』の蓮を演じたかった?!
そのイベントで今をときめく福士さんから、「僕も高校2年生のときに読んでいて、大好きな原作なので、実写化されて嬉しい。
当時、僕が蓮をやったら……って思いつつ、声を出しながら読んでいたんです。夢が叶った!」と作品への想いを語っていた。
『インザヒーロー』での一見横柄な若手アクション俳優、『神様の言うとおり』での無意識に命がけのゲームを好む高校生、など正統派イケメンのみならず役の幅を広げてきた福士さん。
彼の夢であったキャラクターが、“一見クールだが優しくて繊細な一ノ瀬蓮”といういまの福士さんと重なるのは彼がその夢を叶えるベストタイミングでの出演だったような気がしてくる。
高校時代の福士蒼汰さんの夢が溢れる映画。彼のファンならば、ぜひ劇場でのぞいてみてほしい。
そして彼をはじめとした“純粋な片思い”の代弁者にふさわしいまっすぐな彼ら。
日本中に彼らの瑞々しい演技が届く、来月のホワイトデーの公開日が楽しみだ。
(文:小峰克彦)