4月12日、『サンデーモーニング』(TBS系)で、野球評論家の張本勲氏(74)がJ2横浜FCのFW三浦知良(48)に対し、「カズファンには悪いけども、もうお辞めなさい。若い選手に席を譲ってやらないと。しがみつく必要はないでしょ、あれほどの選手なんだから。指導者に」と引退を促すような発言をした。すると、ネット上では、張本氏に対し、批判の嵐が巻き起こった。
2005年のシーズン途中、J2横浜FCに移籍した頃から、カズへの批判はほとんど巻き起こらなくなっていた。「あの年齢でプレーするのは凄い」というような賛辞しか出てこなくなった。そこには、プレーの質や結果は関係なく、「ピッチに立っているだけでOK」という認識が見え隠れした。
果たして、現在のあまりに穏やかな状況は、カズが望む形なのだろうか。
Jリーグ創世記の熱狂、フランスW杯予選の狂騒……カズは絶賛されることもあれば、日本中を敵に回したかのようにバッシングされる時期も経験した。
1997年のフランスW杯予選の時、「もっとできるはずだ」と思われたからこそ、カズは叩かれまくっていたわけだ。それが、いまやカズへの批判は“タブー”になりつつある。
これに対し、いちばん不安に感じていたのはカズ本人だっただろう。厳しい評論で知られるセルジオ越後氏は、こう証言している。
<以前、カズと話した時に、「自分に何が足りないのか教えてくれるのは、セルジオさんくらいだ」と言っていた。周りに持ち上げられて批判の声が聞こえなくなるのを恐れていたんだ> 『サッカーダイジェスト』2015年3月26日号より
“レジェンド”と化したカズに対し、現在厳しい言葉を浴びせる人はほとんどいない。
それは、サッカー選手として期待されていないことの現れと言い換えることもできる。
張本氏の意見こそ、ある意味、カズが待ち望んでいた形かもしれない。
この批判を、カズは力に変えるはずだ。
(文:シエ藤)