昨季まで9年連続Bクラスの横浜DeNAが、今季は首位を走っている。好調の理由は、3番・梶谷隆幸、4番・筒香嘉智、5番・ロペス、6番・バルディリスの中軸打線だろう。特に、クリーンアップの3人は開幕から全試合出場を果たし、一度も打順が動いていない(記録は5月13日現在。以下同)。
梶谷は3、4月の月間MVPを獲得し、ここまでリーグ1位の11盗塁をマーク。筒香は打点部門でトップを独走し、ロペスも勝負強い打撃でチームに貢献している。
前回、DeNA首位の秘密 グリエル離脱で『3番・梶谷』が盗塁しまくり得点力アップという記事で明らかにしたように、今季のDeNAは3番に俊足の梶谷が入ったことで、中軸打線を迎えても足を絡めた野球を展開でき、得点力が増している。昨年、グリエルが3番に入った時期は、ただただ中軸の爆発を待つしかなく、得点力に翳りが見えたのだ。
今季の梶谷は14度盗塁を企図し、11度成功。盗塁成功率は7割8分6厘を誇り、盗塁成功後は5度ホームに生還している。盗塁成功後の得点確率は4割5分5厘に上る。
球界には、『4番が打席に入っているときにランナーは動くな』という暗黙のルールがある。簡単に言えば、『4番を打撃だけに集中させろ』という意味だ。
だが、DeNAはそれを無視し、4番・筒香の打席時にランナー・梶谷をどんどん走らせている。
今季、梶谷は14盗塁企図中、11度を4番・筒香のときに走っている。
実は、このときの筒香の成績は、以下のようになる。
10打席8打数0安打2四球3三振 打率.000(2度、梶谷の盗塁失敗でチェンジに)
なんと1本もヒットを打っていないのだ。梶谷が良いスタ―トを切っていればストライクでも見逃す場面もあり、たしかに打撃だけに集中できるわけではない。その影響がモロに出ている数字だ。こうなると、『4番を打撃だけに集中させろ』という暗黙のルールは正しいと言えそうだ。
だが、この言葉は、あくまで『4番が打つか打たないか』にフォーカスしたもので、チーム全体の得点力を考えているとは言えない。
実際、4番・筒香は打てていないが、そのぶん5番・ロペスが得点圏に進んだ梶谷を返しており、3番・梶谷の盗塁はチーム全体にプラスとなっているのだ。
筒香打席時に梶谷が盗塁成功。その後、打席に立ったロペスの成績は、こうだ。
7打席7打数4安打5打点 打率.571
5割を超える勝負強さで、梶谷をホームに生還させている。また、後ろにバルディリスが控えていることもあり、投手はロペスと勝負せざるを得なくなる点も見逃せない。
要するに、『3番・梶谷』から『6番・バルディリス』までが1つの線になっているからこそ、今季のDeNA打線は手強いのだ。
逆に言えば、『4番のときにランナーは動くな』という球界の暗黙のルールは、“打線”という観点ではなく、“点”で捉えた発言だと気付く。チームではなく、個人優先の言葉なのだ。
みずからの打撃よりも、チームを優先し、犠牲になれる『4番・筒香』がいるからこそ、今季のDeNAは強いのである。
(文:シエ藤)