近頃、本屋の漫画コーナーに立ち寄ると、昔懐かしい作品がたくさん並んでいるのを目にします。
『きんぎょ注意報!』(猫部ねこ作)、『だぁ!だぁ!だぁ!』(川村美香作)など、アラサ―女性なら一度は触れたことがあるような、作品。それが“新刊”のコーナーに平積みされているのです。
これは、少女まんが誌『なかよし』(講談社)の創刊60周年を記念して、過去の名作10作品を「なかよし60周年記念版」完全復刻シリーズとして7月から刊行しているため。12月まで毎月複数作品を刊行予定です。
今回はそんな復刻シリーズの中から『ミラクル☆ガールズ』(秋元奈美作)を紹介したいと思います。
「もしかしたら」を想像させる身近なファンタジー
『ミラクル☆ガールズ』は、1990年から1994年まで『なかよし』本誌で連載されていた作品。同時期に連載されていた『美少女戦士セーラームーン』と併せて2大連載として扱われるほど、夢見る少女たちから絶大な人気を誇っていました。
ストーリーは、超能力を持った双子の姉妹“ともみ”と“みかげ”を中心に起こる事件や、恋愛をコミカルに描いたもの。
連載当時の90年代初期といえば、「ハンドパワー」で知られるMr.マリックがテレビ露出を強めていた時期でもあり、子どもたちの間では超能力がブームに。
“双子”という存在に対しても、憧れに似た感情を抱いていた子が多かったように思います。ここ数年、双子の割合は増加傾向にある(※)と言われていますが、当時は今よりも少し珍しく、「何か特別な力を秘めていそうな存在」だったのです。
“双子”、“超能力”。「自分たちの周りでも起こり得るかも」なんて想像の余地を感じさせる“身近なファンタジー”に、いつもドキドキしながら読んでいたものです。
(※)…2015年2月16日 日本経済新聞 電子版より
ファッション=女の子の自己表現だと知る
そして当時の『ミラクル☆ガールズ』の人気は、“ともみ”と“みかげ”、それぞれのファッションも大きな理由となっていました。
運動神経抜群な姉の“ともみ”は、ボブヘアーにミニスカートやキュロットなど動きやすいスタイルが多め。しかし実はおしとやかで女性らしい性格なのです。その影響か、英国の学生を思わせるような洗練されたコーディネートにまとめていて、子どもながらに「オシャレだな」と感じていました。
対して妹の“みかげ”は、腰まであるロングヘアーに、フリフリレースが施されたふんわりロングスカートが定番スタイル。「こんなお姫様みたいな格好してみたい!」と憧れましたが、実は男勝りで家事は苦手というギャップにも好感が持てました。
きっと多くの少女たちが2人のまったく違う性格とファッションを見ながら、「高校生くらいになったら、こんな服を着たい!」と、自分なりのファッション美学を形成していたことでしょう。
少女だった頃の自分に向き合わせてくれる“名作”
今回『ミラクル☆ガールズ』を紹介したのは、わたし自身が20数年ぶりにこの作品に触れ、「子どもの頃に影響を受けた作品は、いくつになっても色褪せない」と実感したからです。
もう立派な大人になり、超能力も双子も、昔ほどファンタジーだとは思っていません。少女向けの作品なだけに、今となっては表現が単純すぎるなと感じるところもあります。
それでも今なお、読んだ後に「おもしろい!」と素直に思えるのは、やはり“名作”だからこそ。「あの時これが好きだったな」「これ真似したな」といったように、作品を通して少女だった自分と対面することができるのも、復刻シリーズの醍醐味です。
「いつの間にか漫画を読むのをやめていた」という大人になった女性たちも、少女時代の“漫画を読むワクワク感”や“知らない世界へのキラキラした憧れ”を、きっと思い出すことでしょう。
(文:佐藤由紀奈)