10月9日放送の『中居正広のキンスマスペシャル』(TBS系)には、モーニング娘。のOGである中澤裕子、石黒彩、飯田圭織、安倍なつみ、保田圭、矢口真里、石川梨華、吉澤ひとみ、辻希美が出演。大ヒット曲を連発していた頃の1期から4期にかけてのメンバーがほぼ揃い、当時を振り返った。
だが、後藤真希(3期)、市井紗耶香(2期)、加護亜依(4期)、芸能界を引退した福田明日香(1期)は登場しなかった。
モーニング娘。の歴史を振り返る際、後藤と加護の存在は特に欠かせないもの。後藤は当時のVTRで頻繁に映っていたが、加護は4期メンバーに触れるVTRでも、「吉澤、石川、辻らが加入」と、残り1人にもかかわらず、“ら”扱いされていた。
ご存知の通り、加護は未成年時の06年に『FRIDAY』、07年に『週刊現代』と二度喫煙を報じられ、モー娘。の事務所から契約解除を言い渡された。08年に芸能活動を再開したものの、その後も順風満帆とは行かず、今年6月末には離婚。8月には所属事務所との契約も切れ、現在はフリーで活動している。
このような経緯があるため、加護はゲストに呼ばれることなく、当時のVTRでも最小限しか映らず、ナレーションでも触れられなかったのだろう。いわば、タブーなのだ。
だが、その壁をぶち破った人物がいた。司会のSMAP中居正広である。
番組終盤、3期と4期についてのVTRを受け、スタジオトークが始まった。3期である後藤真希の加入をどう思ったかを安倍なつみや保田圭が話した後、中居はこう振った。
「そのあとに、2人、ここ(後段に座る石川、吉澤、辻を見て)と加護が入ってくるんだ」
4期の紹介VTRでは“ら”扱いされていた、加護の名前を堂々と口にしたのだ。
直後、中居の真骨頂が発揮される。スタジオトークを再現してみよう。
中居:そのあとに、2人、ここ(後段に座る石川、吉澤、辻を見て)と加護が入ってくるんだ。
モー娘。:4人で。
中居:4人どうだったの? 入ってくるときは。
吉澤:怖かったんですけど、怪獣2人がいたんで。
この時点ではオンエア上、メンバーはまだ誰も「加護」と発言していない。
吉澤は、「加護」と言うことを躊躇したのだろうか。すると、中居は話を遮り、こう聞いた。
中居:怪獣2人ってどういうこと?
吉澤:辻と加護です。
中居の質問によって、メンバーが「加護」という固有名詞を口にした。中居は、メンバーが「加護」と言えば、加護本人やファンが喜ぶことを計算した上で、「怪獣2人ってどういうこと?」と聞いたはずだ。細かい事情をよく知らない視聴者の違和感を取り除く意味もあっただろう。
いったん流れができれば、あとは乗ればいい。矢口の口も滑らかになった。
矢口:(2人は)目を離すと、どこに行ったかわからなくなるんですよ。あれ、辻、加護、今ここにいたけど、どこ行った? みたいに。
中居の質問が呼び水となり、メンバーもタブーと感じていたはずの「加護」という名前が、わずか1分のあいだに2回も電波に乗った。
「金スマ」は生放送ではない。いくら収録で触れても、カットされてしまえば水の泡。
百戦錬磨の司会者である中居は当然、編集も計算に入れ、番組の流れ上、絶対にカットできないところで、「加護」と発言している。
番組構成を考えれば、「4期生加入」についてのスタジオトークをカットすることはあまりに不自然だ。まして、ゲストに4期生である石川梨華、吉澤ひとみ、辻希美が来ている。収録といえども、“絶対にカットできない部分”というものは存在する。
そこを重々承知した上で、中居は「加護」という言葉をぶっ込み、視聴者の違和感を見事に取り除いた。もし加護本人が番組を観ていれば、歓喜したに違いない。
「怪獣2人ってどういうこと?」という質問は、中居正広の司会力の高さ、人としての優しさを凝縮していた。
(文:シエ藤)