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日本の学生映画ファン代表! 東京国際映画祭学生応援団の7人が選んだベスト作品とは

小峰克彦

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小峰克彦

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第28回東京国際映画祭に初日10月22日から31日の閉幕まで潜入していたソーシャルトレンドニュース編集部。
会期中に心つかまれる場面は数あれど、初日に一番驚かされたのは、各国の映画監督・キャストが闊歩するレッドカーペットに登場した普通の日本人学生たちだった。

はにかみつつも堂々と歩き、パネルの前でまっすぐな目をして、報道陣のフラッシュを受けていた。
彼女たちは都内の学生で構成された東京国際映画祭学生応援団。
現役大学生が同世代の若者たちに向けて、映画祭の魅力を発信するプロジェクトのメンバーだ。結成5年目となる今年は、元からいるメンバー3人に、25倍もの高倍率をくぐり抜けた新メンバー4人も加わったという。

今回、東京国際映画祭で上映された作品は200以上にも及ぶ。
学生応援団のメンバーそれぞれに会期中に観た作品の中で一番印象に残った作品について伺った。

今年の学生応援団7名が選ぶ 東京国際映画祭で観たベスト作品とは……!?

青山学院大・後藤渓さん

1

「ベスト作品は『タンジェリン』です。東京国際映画祭という国際的な場でまさかこんな作品が流れるとは……と思うくらいスラングが飛び交うお下劣な映画でした(笑)。でも最後は友情を感じて泣いてしまいました。iPhone5sで撮影されたとは思えないほど映像が綺麗だったことが印象に残っています」

ショーン・ベイカー監督『タンジェリン』
作品詳細
ロサンゼルスの夏のようなクリスマス・イブ。出所したばかりのトランスジェンダーの娼婦シン・ディは、恋人の浮気相手を見つけてとっちめようと血眼で探している。アルメニア出身の心優しきタクシードライバーのラズミックは、秘めていた変態な欲望を満たそうと街へ繰り出す。出演者は監督が本作のために取材した際にストリートで出会った素人の女性。破天荒な物語ながら、セクシャル・マイノリティや移民に対する温かい視線が貫かれている映画作品。

慶応義塾大・北井瑠以子さん

2

「私のベスト作品は『スリー・オブ・アス』です。
イランの革命を題材にしたシリアスなテーマなのですが、監督がコメディアンということもあり、コミカルなのに泣ける素晴らしい映画でした」

ケイロン監督『スリー・オブ・アス』
作品詳細
フランスの人気コメディアンであるケイロンが、父の若き日を演じ、自らメガホンも取った感動の実話。
イラン政権に異を唱える活動家であったケイロンの父は、弾圧的な政府により逮捕される。長期にわたり投獄された後に、1983年にフランスに亡命。
亡命後はユーモアと勇気を武器に教育者として犯罪が絶えない街を再生へと導いていく。

一橋大学・迎亮太さん

3

「僕のベスト作品は『ボーン・トゥ・ビー・ブルー』です。トランペット奏者チェット・ベイカーの薬漬けでダメになった生活からの復活劇なのですが、主演のイーサン・ホークがめちゃくちゃカッコ良くて……。最初のシーンから泣かされてしまいました」

ロバート・バドロー監督 『ボーン・トゥ・ビー・ブルー』  
作品詳細
ジャズトランペット奏者として一世を風靡した、チェット・ベイカーの苦闘の時代を描いた作品。ドラッグに依存し、どん底に落ちたチェットが再生を目指す姿を、イーサン・ホークが再現する。
黒人優位のジャズミュージシャンの世界における白人スターという地位の複雑さと苦悩を見事に切り取った映画作品でもある。

東京外語大・水野智央さん

4

「僕のベスト作品は『ぼくの桃色の夢』です。中国の田舎で育った少年が、大人になるまで一人の女の子を想い続けるという作品です。いい意味でくだらないコメディタッチの前半から、社会性も出てくる後半や幻想的なラストが好きでした」

ハオ・ジエ監督 『ぼくの桃色の夢』 
作品詳細
中学生のチャオ・シャンシャンは学校一の美人リー・チュンシアに密かに恋心を抱くが、いじめっ子が無理やり彼女を自分のものにする。
しかし、彼女への想いは変わらない。高校を卒業し、無気力な大学生活に入るが、そこでチャオは映画に出会う。

青山学院大・松浦風光さん

5

「私のベスト作品は『ヴィクトリア』です。140分間ワンショットで撮るという高度な撮影技術を使っているのですが、それを感じさせないくらい物語に没入してしまいました」

ゼバスティアン・シッパー監督 『ヴィクトリア』  
作品詳細
ひとりクラブで激しく踊っていた家出少女のヴィクトリアは、4名の青年と出会い、酒を飲み交わし楽しい夜を過ごす。しかし青年のひとりが大物ヤクザの絡む金銭トラブルに巻き込まれていることが分かり、事態は急変してゆく…。
冒頭のクラブから始まる140分の悪夢のような物語を、全編ワンカットで撮った驚異的な作品。カメラは建物の内外を自在に行き来し、青年たちの絶望的な行動を途切れなく捉えていく。

成蹊大・寺尾梨花さん

6
(左:寺尾梨花さん 右:村上理絵さん)

「私のベスト作品はデンマークとドイツの共作の『地雷と少年兵』です。
元々作品選定プロデューサ―の矢田部さんから『誰が観ても泣ける』と言われていたのですが、重たい戦争をテーマにした作品ということもあり、どういうモチベーションで観ればいいかわかりませんでした。実際に観た時は上映時間中、ひたすら涙を流し続けるというかつてない映画体験をしました。自分でも途中から理由がわからないまま泣いていましたね(笑)」

マーチン・ピータ・サンフリト監督 『地雷と少年兵』 
作品詳細
終戦直後、デンマークの海岸沿いに埋められた無数の地雷の撤去作業に、敗残ドイツ軍の少年兵が動員される。憎きドイツ人兵士ではあるものの戦闘を知らない無垢な少年たちを前に、指揮官の心は揺れる。
第二次大戦中にデンマークの海岸に埋められた地雷の数は2百万個に上り、戦後にその処理で900人が死んだという。少年兵を全員新人が演じていることや、死の恐怖と残酷なコントラストをなす美しい海岸線が、実際に地雷が撤去された場所で撮影されたことなどが映画のリアリティを高めている。

早稲田大・村上理絵さん

「今回の映画祭での個人的なベスト作品は『シム氏の大変な私生活』です。
日本人の大学生の私が、フランスの中年男性になんで感情移入しているんだろうと思うくらい孤独の描き方にリアリティがありました。国とか言語を超えた普遍的な表現が胸にせまってきた印象的な作品です」

ミシェル・ルクレール監督 『シム氏の大変な私生活』 
作品詳細
冴えない中年男のフランソワ・シム。いつも「SIMカードと一緒」と名乗るが、ウケない。妻は出て行き、職も失い、何も上手くいかない。女性になりすましてネットのチャットで元妻に近づき、本音を探ろうとする情けなさ。ようやく歯ブラシの営業職にありつき、セールスの旅に出る。道中、若い女性に出会い、夕食に招待される。はたしてシム氏の人生は好転するのか……? 世代と国境を越えた傑作コメディ映画。

今年の映画祭で一番印象に残っていること 学生応援団のリーダーとして感じたこと

大学で講義を行ったり、ビラを配ったりと学生を中心に広報活動を行い、「東京国際映画祭を1万人にPR」という目標を無事に達成したという学生応援団。
最後に「映画祭を通して一番印象に残っていることは?」と聞くと、東京外語大の水野さんが「登壇した大学の講義後に学生から『来年は私も学生応援団受けます』『東京国際映画祭のボランティアスタッフへはどうしたらなれるんですか?』と声をかけられ、PRの効果を感じることができたことです」とうれしかった成果を教えてくれた。
今年2年目となるリーダーの村上さんは、「映画祭で上映される作品は配給がまだ付いていなかったり、事前の宣伝もほとんどなかったりするので、ほぼポスターの情報だけで映画を選んで観るんです。
『ラブコメだと思って観に行ったらホラーだった』ぐらいの振れ幅があるのが映画祭の面白いところなので、若者にはだまされたと思って映画祭に来て欲しいです」とコメントをくれた。
もう一人のリーダー寺尾さんは「学生観客の代表として思うことは、映画祭の作品は力強くて、若者への熱いメッセージがいっぱい詰まった作品が多いということ。
でも映画祭に来ている観客を観ると、客席に若い人があまりいなくて……。来てみれば本当に楽しいのに、来ないとずっと映画祭の面白さを分かってもらえないのがはがゆかったです」と感想を語った。
呼び込みたい若者と同世代だからこそのフラットな意見と感想を聞いて、「映画体験の面白さを若者にどう伝え、劇場に呼び込むか」のヒントは学生応援団の活動の中にあるように思えた。
映画好き学生や、学生時代に誰もマネできない体験をしたい学生は、ぜひ学生応援団のブログをチェックしてみてほしい。つまらないと思い込んでいる自分の学生生活をもう一度ワクワクさせることができるはずだ。
また、大人としても、今後も「映画を多くの人に届かせる方法」を導き出してくれるであろう学生応援団の活動に注目したい。
(文:小峰克彦)

■関連リンク
・東京国際映画祭 ワールド・フォーカス部門『タンジェリン』作品ページ

・東京国際映画祭 コンペティション部門『スリー・オブ・アス』作品ペー

・東京国際映画祭 コンペティション部門『ボーン・トゥ・ビー・ブルー』作品ページ

・東京国際映画祭 コンペティション部門『ぼくの桃色の夢』作品ページ

・東京国際映画祭 ワールド・フォーカス部門『ヴィクトリア』作品ページ

・東京国際映画祭 コンペティション部門『地雷と少年兵』作品ページ

・東京国際映画祭 ワールド・フォーカス部門『シム氏の大変な私生活』作品ページ

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