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浅田真央に結果を求めるのはやめてほしい 見たいのは点数ではなく笑顔のラスト

佐藤由紀奈

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佐藤由紀奈

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1月5日(火) 、東海テレビ『みんなのニュースONE』で放送された浅田舞・真央姉妹の対談映像を見て、2016年初めて号泣してしまいました。
普段メディアではあまり弱音を話さない真央さんが、「昨年12月の全日本選手権は、引退覚悟で臨んでいた」と、初めて告白したからです。

そんなにも思いつめていたのか……という苦しさ。
それでもまだ競技を続けてくれるんだ、という嬉しさ。

同時に、ファンたちも覚悟を決めないといけないんだと強く感じました。
「一戦一戦、応援できるのも、これが最後になるかもしれない」……という覚悟を。

だからこそ、メディアや世間には、もう安易に順位や点数だけで彼女を煽ることはやめていただきたい。
いつだって、「これが最後」なのかもしれないのだから。

「観ない」と約束した姉へ異例の連絡

東海テレビ『ONE』でキャスターを務める浅田舞さんと、妹であるフィギュアスケート選手・浅田真央さんの対談が行われたのは、12月末に札幌で行われた全日本選手権の試合直後。

舞さんが買ってきたというたくさんのケーキを見ながら、「迷うよね~これ。モンブランかなあ。ああ、でもショートケーキもいいなあー!」と選ぶ姿は、気の知れたお姉さんの前だからこそ見せる素の姿。
いつも報道陣に答えるよりも1トーンほど低いリラックスした声も、新鮮に感じられました。

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「試合が終わって一番初めに何食べたくなった?」という舞さんからの問いには「いや~………そういうことは考えなかった、今回は」と答えた真央さん。
一口ケーキを食べた瞬間、「ああ~~! 体に……浸透してきた~」と、一気にゆるんだ表情を見せていましたが、そのやりとりだけでも、いかに今回の大会中、気を張り詰めていたのかが伝わった気がしました。

(真央さん本人は否定していましたが)舞さんいわく「どん底だった」という状態の中、「ケジメ」という思いで出場を決めた大会。
それでも上手くいかなかったショートプログラム。
「これが最後の演技になるかもしれないから」と、急きょ舞さんに「明日、札幌に観に来てほしい」と連絡をしたそうです。

昔から姉妹の間では「素の弱い真央が出てしまうから、真央の試合会場には観に行かない」という約束が交わされていたことは、ファンの間では知られていました。
それが今回、舞さんが会場で観戦したことをTwitterで報告しており、「珍しいな」とは思っていたところ、まさか、そんな舞台裏があったなんて……。

きっと今できる最高の笑顔だった

そんな中、迎えたフリープログラム。
自分が“今できる最高”を演じようとする本人の気迫と、曲のテーマである「悲恋だとしても自分の意志を貫く」という強い日本女性の姿が重なり、テレビで観ていても、息をするのを忘れてしまうくらい魅入ってしまう美しさでした。

演技が終わった後、ゆっくりと自分の演技した4分間を噛みしめるように何度もうなずいていた真央さん。顔を上げると、瞳には涙を溜めていました。彼女のそんな姿を見るのは、長い競技生活を振り返っても珍しく、いかに特別な思いで演技に臨んだのかが伺い知れます。

「我々が見たいと思っていた笑顔とは少し違っていたかもしれませんが、素敵な笑顔です」という西岡孝洋アナの実況にはグッときました。順位や点数に関わらず、選手へ敬意が払われた、素晴らしいコメントだったと思います。

浅田真央が演じているのは、スケート人生そのもの

本人も周りも驚くほどの、想定よりも高いレベルで復帰したことが、世間の期待をさらに過熱させてしまったかもしれません。
それでも彼女を長く応援しているファンならば、彼女は元々スロースターターであり、試合におけるジャンプの出来に浮き沈みがあることは承知のことと思います。
それも含めて、わたしたちを一喜一憂させてくれるのが“浅田真央”なのですから、常勝でなくてもいい。
たった1回でも、彼女が満足できる演技をして、そして笑ってくれればそれでファンは報われるのだと、真央さん自身にも、そしてメディアや世間にもわかってほしいものです。

「本当に自分ができないと思うところまでやる、それを私のスケート人生にしたい」
復帰に際し、そう宣言した彼女には、本当に、「なんてかっこいい女性なんだろう!」と震えました。

フィギュアスケートは基本的に、理不尽なスポーツです。
曖昧さのある採点競技であることに加え、頻繁にルールも改定されます。そんな世界で10年間もトップで戦い続けてきたこと自体がすでに異例で、さらにまだ、この理不尽な戦いに挑み続けようというのは、もはやド根性の天才。
彼女の人生そのものが、「世の理不尽さに負けず、自分の理想を追求する」壮大なドラマなのかもしれません。
彼女は姉妹対談の中で、「こんな素晴らしい舞台で滑れるっていう有難さを、もっと感じて滑らなきゃいけないなって思う。もうスケート人生、長いわけじゃないから」と言いました。
ですがそれは、わたしたちも同じこと。
浅田真央という稀代のスケーターが、人生を賭けて見せてくれているドラマを、そしてそれをリアルタイムで味わえているという喜びを、1シーン1シーン、噛みしめなければ。

“やり切った”と思えた時、果たしてこのドラマはどんなラストを迎えるのでしょうか。願わくば、それが最高の笑顔でありますように。そう祈るばかりです。

(文:佐藤由紀奈)

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