もうなんか全てをかなぐり捨てて、どこか遠くに行きたくなることってありませんか。
僕は毎朝起きる度にそうなります。
とはいえ現実はそうもいかないものです。
忙しくて時間がねぇ。仕事や学生生活を無視する訳にはいかねぇ。シンプルに金がねぇ。東京でベコ飼いてぇ。
皆それぞれに理由を抱えている現代人。
シンプルに金がない僕なんて卒業旅行まだどこ行くか決まってない始末です。下手したら熱海になりそうで泣きそうです(いや熱海もいいところだけども)。
そんな世知辛い状況下でも、やっぱり僕らは遠くへ旅に出たいのです。知らない土地で、知らないものを見て、知らないことを経験したいのです。
だって人生はもっと未知に満ち満ちているはずだから。ダジャレじゃないです。
今回はそんな、ああ全部投げ出してぇ!どっか行きてぇ!! てか仕事とかしたくねぇ!!!な人のために、主人公たちの旅の道中を描いた傑作ロードムービーを、3つほどお届けします。
1.ノッキン・オン・ヘブンズ・ドア (独:1997年)
この二人に憧れられない人生なんて。
(出展:https://www.youtube.com/watch?v=ItF9oWAhZ6w)
とある病院で余命わずかと宣告されたルディとマーチン。
病院でたまたま出会った若者二人は、一度も見たことがない“海”を死ぬ前に見るべく、地下駐車場のベンツを盗んで脱走します。
様々なトラブルに見舞われながら海岸を目指した二人、その最期の数日間を描いたストーリー。
病院から盗み出した車が実はギャングの車だったり、いつの間にか警察から指名手配される身になったりと、道中で待ち受けるスッタモンダがこの映画の見どころの一つです。
そりゃあもう、“どうせ死ぬから”とやりたい放題のルディとマーチン。強盗だってやっちゃいます。ギャングや警察とのハチャメチャな追いかけっこの痛快さと言ったら筆舌に尽くし難い、てか脇を固めるキャラクターがまぁ濃い。
そんなド派手な旅を送るルディとマーチンですが、共にしているのは余命いくばくもないという現実。まさに“天国の扉をノックせんとしている”二人組。
全体としてコメディタッチではありながらも、死期が刻一刻と迫っている男二人が最後に見せる“生き様”、そして待ち受ける結末に、心揺さぶられます。
劇中、海を見たことがないと打ち明けたルディに、マーチンがこう言うのです。
「天国じゃ、みんなが海の美しさについて語り合うんだぜ」
粋すぎる。
島国日本に住む僕達にはイマイチピンとこないと思いますが、この作品、ドイツ映画なんです。海岸がめちゃめちゃ少ない国で制作されているんです。
そんな本国ドイツではなんと、350万人を動員する記録的大ヒットを記録しています。
避けられぬ運命を前に、“最後の生”を懸命に生きようとする男二人の姿。
彼らが最期に見た景色の先に、あなたは何を見るでしょうか。
2.ストレイト・ストーリー (米:1999年)
デヴィッド・リンチ、こんな映画もつくれんのかよ!
(出展:https://www.youtube.com/watch?v=XmqWVRc5kpg)
と、突っ込みたくなるような、心あたたまる作品。
アイオワ州ローレンスという町に住む老人、ストレイトの元に、ウィスコンシン州に住む兄が心臓発作で倒れたという知らせが届きます。
実は若い頃から仲が悪かったストレイト兄弟。長年音信不通だった兄に会うため、おじいちゃんが350マイル(560km)の道のりをたった一人、“芝刈り機”に乗って行く姿が描かれた物語。
まず言いたくなるのが、「おま、なんで芝刈り機で行くねん」というところ。
560kmといったら大体東京から大阪くらいまでの距離。それをトコトコトコトコとのろっちぃ芝刈り機で行くなんてどうかしていると思いませんか。道が芝だったら何トン刈れんだよ。驚くことにはこの映画、実話を元につくられているんです。
実在の人物をモデルにしたこのおじいちゃん、もう~め~ちゃくちゃ頑固。頑固だから仲の悪い兄の元にすぐさま飛んで行くなんてことはしたくない訳です。だからといって行かないって訳にもいかない。
んで間をとって(?) 芝刈り機で行くことにしたみたいです。無類のひねくれじいさん。姓は“ストレイト”なのにひねくれています。
道中幾多のトラブルを乗り越え、「なんだこのヘンテコなじじい」みたいな目を向けられながらも、時速8kmで兄の元へ向かうストレイト。
腰をやられて一人で立ちあがることも出来ないほど弱っているおじいちゃんの姿に、観てるこっちが心配になります。
じいさん大丈夫かよ、おい無理すんなってなります。
恐らく本人にとっては命がけの旅路です。
この映画のラスト。本当にあんなスクリーン全体をバイオレンスで埋め尽くすような監督のものとは思えません。ジーンと心が温まります。本当ですよ!?
ロードムービーの良作であると同時に珍しいデヴィッド・リンチを垣間見ることのできる作品です。
3.イントゥ・ザ・ワイルド (米:2007年)
それは、自分をぶっ壊す旅。
(出展:https://www.youtube.com/watch?v=eQyE0Mu97Ec)
1992年、夏。アメリカの最北部アラスカ州の荒野で命を絶たれた一人の青年が、全米でニュースになりました。
青年の名はクリス。彼は裕福な家庭に生まれ、恵まれた環境で育ち、大学も優秀な成績で卒業という絵に描いたようなエリートおぼっちゃん。
しかし大学卒業直後、2万4千ドルもの貯金を全額慈善団体に寄付し、身分証とクレジットカードを切り捨て、突然アラスカの大地へ旅立ったのです。
この映画はそんな衝撃の実話をショーン・ペン監督が10年の歳月を費やして映画化した作品。
金銭、学歴、そして家族。何もかもが恵まれていた一人の裕福な青年が、それら全てに背を向けてまで手に入れたかった本当の幸せとはなんだったのか。
積み上げたものぶっ壊して、身につけたもの取っ払ったリアル全力少年の姿を、圧巻のスケールで見事に描き切っています。
エンドロールを迎えた時、僕の全身にはこれでもかというほどに鳥肌が立っていました。あやうく鳥になりそうでした。
ただそれと同時に、とてつもなく嫉妬してしまうんです。主人公クリスに。
僕はなんでも買い与えてもらえるほど裕福ではなかったし、誰もが憧れる学歴を持っている訳でもない。
なによりたとえ持っていたとして、それらを完全にかなぐり捨てて、本当の意味で自由で孤独な旅をする勇気なんてきっとないんです。
クリスの勇気、生き様、死に様、その全てが羨ましいと感じてしまいます。
そして自分も彼以上に充実した人生を過ごさなければと、奮い立たされるのです。
休日になんもやることなくて、だらっとしてしまった日の夜とかに見るもんじゃないです。
わぁ俺はなんて無駄な一日を過ごしてしまったんどぁ!!
ってなります必ず。
人生とは、幸せとは。その一つの答えが、ここにある気がします。
いかがだったでしょうか。
全編を通して人生を象徴しているかのような傑作ロードムービー。
今回は僕の独断と偏見により3つほど厳選してお届けいたしました。あなたの心に刺さる作品が見つかりましたら幸いです。
記事にするためにあらためてこの3本見返してみて、僕はもうお腹いっぱいです。
卒業旅行は、熱海でいいかな。
(文:ソーシャルトレンドニュース編集部)