ー3カ月前、童貞を捨てた。思ったほど、世界は変わらなかったー
チェリーについて

岩井俊二・1995年を振り返る「日本って病院みたい」

一足早く2016年の日本映画界を総決算!

3月にオープンした“永遠のオトナ童貞のための文化系マガジン・チェリー”。オープンした年が、邦画の当たり年だったため、どれを選んでいいか迷うほど、多くの邦画を取り上げてきた。インタビューした監督は、岩井俊二宮藤官九郎西川美和山下敦弘……と錚々たるメンバー。
そこでチェリーでは、東京国際映画祭に潜入しながら、当たり年といわれた2016年の邦画を総決算。過去のインタビュー記事とともに、『Japan Now』部門でのトークセッションの内容をレポート。本記事はその第二弾。コレを見れば、一足早く2016年の日本映画が総決算できる……はず!
(『君の名は。』『湯を沸かすほどの熱い愛』などをレポートした第一弾記事はこちら!

クドカン「そんなに人は成長しない」

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(c) 2016 Asmik Ace, Inc. / TOHO CO., LTD. / J Storm Inc. / PARCO CO., LTD. / AMUSE INC. /

まずは『TOO YOUNG TO DIE! 若くして死ぬ』。宮藤官九郎監督史上、最大のヒットとなった本作。東京国際映画祭では、公開が一旦終了したタイミングということもあってか、再びスクリーンで見たいファンが殺到。5回、6回は当たり前で、なんと13回見たという観客からも熱い質問がとんだ。

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「クドカン作品では、あまり主人公が成長している気がしない」と指摘された宮藤は「2時間しかないのに、そんなに人は成長しないと思っている」とポロッと人生観を吐露。作品の中でのスタンスとしては坂井真紀演じる主人公の母親が気に入っているといい「息子の死を悲しみながらも、目の前にやってきたインコを捕まえることにやっきになっている。そうやって死と生活が混じっているのがいい。僕が死んでも、弟はオナニーしてるんだろうなあ、と感じたことから生まれたシーンです」と、作中の、インコとしての蘇りシーンを解説した。

また、この作品は第45回ロッテルダム国際映画祭でも上映され、500人の観客によるスタンディングオベーションが起こった作品。日本の著名人を実名で使って笑いを取るのは、宮藤脚本のお家芸でもあるが、篠山紀信が登場するシーンは海外ではウケなかったことをサラっと告白した。

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岩井俊二「日本って病院みたいだなと思っていた」

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そして『Japan Now』部門では、岩井俊二監督の特集上映も。今年、久々の実写映画となる『リップヴァンウィンクルの花嫁』が公開された岩井俊二監督。東京国際映画祭では、同作を含む5作品を上映した。

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(c)RVW フィルムパートナーズ

『Love Letter』上映後には、中山美穂さんと、『スワロウテイル』上映後にはCharaさんとの豪華な対談がおこなわれた。それぞれ、1995年と1996年に公開された作品だが、当時について岩井監督は「日本って病院みたいだなと思っていた」と述懐。同時期に公開されたChara主演の『PiCNiC』の、精神病院の塀を歩きながら、外の世界に飛び出すという設定に活かされたことを明かした。

『青の青さに』『躊躇して』と部分的に歌詞に指示

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(c)1996 SWALLOWTAIL PRODUCTION COMMITTEE

またCharaは『スワロウテイル』の娼婦役について「与える愛に興味があって」受けたことを明かした。同作に登場するYEN TOWN BAND名義で『Swallowtail Butterfly 〜あいのうた〜』も発売したが、当時の作詞の過程を明かす発言も。
「岩井さんから、部分的に歌詞の注文が来るのよ。『青の青さに』『躊躇して』っていう部分は岩井さんから使う指示が来たの」と話した。

蓋を開けたら散漫な記憶が出てくる、のが現実

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(c)フジテレビジョン

一方、『Love Letter』について、岩井俊二はこう語った。
「この作品は前半はミステリーのように話が進行していきます。普通の映画はミステリーを解き明かしていく方向だと思うんですけど、後半ミステリーが崩壊していきます。それは、当時やりたかった挑戦でもあるんです。あの話のように、蓋を開けたら散漫な記憶が雨あられのように出てくる、というのがきっと現実なんですよね」

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そして最後に客席から突如「お元気ですか?」の声が。劇中の名シーンにあわせて、中山美穂が「私は元気です」と返し、大いに客席が盛り上がった瞬間となった。

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東京国際映画祭・邦画レポート記事、第三弾では『Japan Now』部門ではなく『コンペティション』部門に出品された12月公開の映画『アズミ・ハルコは行方不明』の舞台挨拶をレポートする。

(取材・文:霜田明寛)

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