フジテレビで日曜21時から放送中の『ワンダフルライフ』が9月限りで終了すると報じられました。リリー・フランキーと山岸舞彩を司会に据え、毎回1人のゲストにスポットを当て、インタビューを交えたドキュメンタリー番組でしたが、わずか半年で打ち切りになるようです。
ゴールデン帯にもかかわらず、6月15日には視聴率2.1%(ビデオリサーチ調べ、関東地区。以下同)を記録するほど低迷しただけに、当然の措置と言えます。それにしても、なぜここまで数字を獲れなかったのでしょうか。
初回は、フィギュアスケート浅田真央のコーチを務めた佐藤信夫氏を特集し、10.5%とまずまずの発進でした。前番組『クイズ!それマジ!?ニッポン』の2時間スペシャルが7.1%でしたから、『ワンダフルライフ』のためにチャンネルを合わせた人がいる証拠です。
しかし、2回目に3.3%とまさかの数字を出してしまいます。5月4日には闘病中の大塚範一キャスター、5月25日には石川さゆり、6月15日には横綱・白鵬とビッグネームが出演しましたが、視聴率は2ケタに届きませんでした。
原因はいくつかあると思います。
1.初回に浅田真央を仕込めていれば…
もし初回に浅田真央を仕込めていれば、状況は変わったかもしれません。ソチ五輪から2ヶ月ほどしか経っていませんでしたし、もし浅田の特集ができれば、視聴率15%程度は獲れたはずです。フジはソチ五輪直後の2月に、『独占!浅田真央 誰も知らなかった笑顔の真実』を放送していましたが、『ワンダフルライフ』の初回では浅田本人を取り上げることはできませんでした。
仮に浅田をキャスティングできていれば、後に続くゲストを仕込みやすくなります。『浅田真央さんも出て頂いて』という枕詞を使えるし、『そのとき視聴率15%だったんです』と言えば、『じゃあ出ましょう』となる。
しかし、2回目以降、低視聴率が続いたため、ゲスト候補が首を縦に振りづらくなったのです。ゴールデン帯で1人をフューチャーする構成ですから、普通は有名人が出たがる番組です。
それなのに、ゲストの人選は、ラモス瑠偉(7月20日出演)や泉ピン子(7月27日出演)など、『なぜ、今?』と疑問を抱かせるものでした。これは、ひとえに低視聴率の影響です。いわゆる“1人ゲスト”番組に出演し、数字が悪ければ、出た本人が『数字を持っていない』と判断されてしまうからです。当然ですが、タレントは致命的に低い視聴率を出してしまうと、その後の芸能人生に影響を及ぼしかねません。“1人ゲスト”番組は、それほどゲストに掛かる比重が大きいのです。
2.フジテレビの日曜21時台に合わないゲスト人選
また、この番組は70代や60歳前後をゲストに呼ぶことが多い。5月18日の三浦雄一郎氏は81歳です。それ自体が悪いとは思いませんが、その世代はフジテレビの日曜21時台にチャンネルを合わせる習慣がありません。
20時から大河ドラマを観て、21時になったら風呂に入るパターンではないでしょうか。
それに、現状がどうであるかは置いといて、“フジ=若者のためのテレビ局”というイメージをいまだに持っているでしょう。実際、フジの日曜21時台は昨年3月まで2年半にわたり、ドラマ枠で『花ざかりの君たちへ〜イケメン☆パラダイス〜2011』などを放送していました。少なくとも、60代〜70代をターゲットにしたドラマはありません。
3.ブレまくった軸 〜70代ゲストと20代司会者では話が噛み合なくて当然〜
しかも、70代や60代のゲストに対する司会が50歳のリリー・フランキー、27歳の山岸舞彩というのも得策ではなかった。もちろん、2人はゲストについて熱心に勉強しているでしょう。とはいえ、知識では補えない“時代感”というものがある。要するに、同じ世代を生きた人間にしかわからない共通認識に、どうしても欠けてしまう。特に、70代や60代は戦後の混乱期を生きてきた人たちですから、10歳の差は現代以上に大きいはずです。司会2人の責任ではなく、番組として、どの世代をターゲットにするかという軸がブレまくっていたのです。
4.「好きな有名人:ラモス瑠偉と泉ピン子」と答える視聴者はほぼいない
それに加えて、毎回呼ぶゲストに統一感もないので、いわゆる“常連客”も増えません。
わかりやすい例を出せば、ラモスが出た次の週に、泉ピン子が登場しています。
考えてみて欲しいのです。「好きな有名人は?」という問いに、「ラモス瑠偉と泉ピン子」と答える人がいるのか。ラモス好きを公言する人物に「ピン子も好き?」と聞いたら、「え?」と驚かれるでしょう。逆も同じです。
言い換えると、番組にまるで連続性がないのです。そのため、視聴率が安定しない。
かつて、『笑っていいとも』の“友だちの輪”が絶妙だったのは、ゲストに連続性があったからという側面もあるでしょう。昨日のゲストと今日のゲストに何かしらの共通点があったのです。何も関係ないような2人に見えても、大前提として“友だち”という括りがあった。世代は違っていても同じドラマで共演していたり、事務所の先輩後輩関係があったりした。「明日も観るか」と自然と視聴者に思わせる巧妙な作りになっていたのです。
このような原因が重なり、『ワンダフルライフ』は終了に至ったと思います。