テレビが好きだからこそ、攻めた“面白さ”が見たい
“若者のテレビ離れ”なんてニュースをよく耳にするが、テレビ全盛期を知る世代にとっても、昔ほど夢中にはなれないという人は多いのではないだろうか。
それはなぜか?
いくつか理由はあれど、やはり大きいのは、「キワドい企画」がやれなくなったこと。
昨今はソーシャルメディアの発達の影響もあり、何かツッコミどころがあればすぐに炎上する。企業のコンプライアンスが取りざたされるケースも多い。
こうなるとやはり、キャストも制作側も委縮してしまうのだろう。攻めた企画というのはほとんど地上波ではお目にかかれなくなった。
昨今の番組は「面白いものを作ろう!」ではなく、「問題にならないものを作ろう」というモチベーションで作られているような気がしてしまうのが、テレビで育った世代の視聴者としては寂しい。
端的にいえば、「もっと攻めたテレビ番組が観たい!!」ってことだ。
今田耕司、東野幸治の「地上波NG企画番組」がヤバイ
そんな中、テレビ全盛期から今も変わらずにお笑いシーンのトップランカーである今田耕司、東野幸治の“Wコウジ”が、「今の地上波ではできない企画」に挑戦していくという、Amazonプライム・ビデオのオリジナル番組に注目したい。
『今田×東野のカリギュラ』は、マニアックすぎて観る人を選ぶ、コンプライアンス的にNGといった理由で、今の地上波放送では実現が難しいような企画を取り上げていくというバラエティ番組だ。
“カリギュラ”とは、禁止されるほど試したくなる心理現象を意味する。
“バラエティ”といっても、単純な笑いを提供する内容ではない。
「生きることの本質」「人間らしさ」「現代社会の闇」
観たものを笑わせながらも、自分たちの暮らしに対してどこか考えさせるような、社会的メッセージもはらんだ企画ラインナップとなっている。
禁止企画1:「東野、鹿を狩る」
かねてから「狩猟をしてみたい」という願望を持っていた東野幸治。そんな東野がプロから狩猟のいろはを学んでいくシリーズ企画。
サバイバル登山家・服部文祥氏に同行してもらい、山での狩猟の厳しさに直面しながら、「生きるとは何か?」に本気で向き合う究極のドキュメントだ。
観た感想を初めにお伝えすると、この企画、結構な「閲覧注意モノ」である。
狩猟で仕留めた生き物の血や臓物、解体の様子が、そのままの姿で映し出されている。地上波のモザイク処理に慣れた身からすると、「ヒィア……ッ」と、思わず声を上げてしまう程の衝撃……。
筆者も決してこのようなグロテスクなコンテンツは得意ではないのだが、目を覆いたくなる場面もありながらも、食い入るように観てしまった。
「目を背けてはいけない気がする」そんな迫力があったからだ。
「私達が普段、スーパーや店で食べる“肉”とは?」「食べる、食べられるとは?」「生きる、死ぬ、とは……」
このような大きなテーマに対して文字通りリアリティを持って迫っていくのだが、決して重たいばかりの内容ではないというのもお伝えしたい。
東野の持ち味でもある“クズさ”が随所に発揮され、人間らしいというか、思わず笑わされてしまうのはさすがだ。
シリーズ企画として展開されたこの企画も、6月30日(金)の配信をもって完結を迎えた。
見ごたえ十分なドキュメンタリーだっただけに、“次”はあり得るのか?というところにも期待したい。
禁止企画2:「うちの親は大丈夫!母ちゃん、オレオレ詐欺選手権」
近年、深刻な社会問題となっている「オレオレ詐欺」。
番組が結成した詐欺グループが芸人の母親に本気でオレオレ詐欺を仕掛けてみるという企画だ。
「うちの親は大丈夫!」と思っている芸人、大地洋輔(ダイノジ)、久保田和靖(とろサーモン)、太田博久(ジャングルポケット)が挑戦する。
今田が「これまでにも何度もやりたいと言っていたが、誰も首をタテに振ってくれなかった!」という、まさに地上波NGの内容。
実際の「オレオレ詐欺」でも使われているのであろう巧妙な手口、言い回しは、思わず「やるなあ~」と関心してしまうというか、勉強にもなる。
禁止企画3:「自作自演やらせドッキリ」
昨今のテレビ規制事情に物足りなさを感じている芸人が自らドッキリを考案し、全て自分で引っかかる完全な“やらせ”ドッキリ企画で、初回、挑戦したのはオードリー春日。
お色気、危険動物、カースタント、爆破、人間火だるまなど、やりたい放題の過激映像の数々が繰り広げられる。
中々の費用もかかっていると思われるド派手演出、むき出しに開放された春日のセクシャリティなど、近頃のテレビではなかなか見られなくなったシーンのオンパレード。ドッキリを終えた後の春日のすがすがしい表情が、なんとも笑える。
禁止企画4:「ホームレスインテリクイズ王決定戦」
聞き込みをして見つけた都内にいる4人のホームレスから、実は知識人という“インテリホームレス”を発掘すべく、クイズ大会を開催するという企画。
捜索日数60日間、交渉人数154名という大規模な聞き込みの末、化学の本を愛読する者、ビッグバンドでTV出演経験を持つ者、元銀行員の者、時事問題に詳しい者と、経歴も個性もバラバラな4人が揃ったのだが……。
まさかまさかの展開に、これまでクイズ番組で感じたことのない“マジか”という笑いがこみ上げる。
司会を務めた芸人・銀シャリの盛大な戸惑いっぷりも見所のひとつだ。
禁止企画5:「教えてシリガール~美女のイケないレッスン~」
こちらは7月7日(金)配信予定の内容。
ケンドーコバヤシによる持ち込み企画であり、セックスレス大国ともいわれる日本人の性欲低下を危惧し、”分け隔てなく男性を愛してくれる女性たち”「シリガール」に性のレッスンを施してもらうというものだ。
これからの放送となるので全貌はわからないが、これまで配信済みの企画とはまた違った意味で“今の地上波では放送できない”、ドエロイ内容と予想。
金曜日の夜に観るにふさわしいものであることを期待したい……。
“テレビ好きこそ必見”のコンテンツが充実
Wコウジをはじめとした出演者たちも、いい意味でこの番組を“使っている感”がある。
本当にやりたかったことをやってみている、という感じだ。
キャストも制作側も一緒になって「ネット配信番組でしかできないような攻めた番組にしよう」というわかりやすい目標に向かってまとまっている感じが見てとれる。それがおそらく番組のクオリティにも繋がっているのではないだろうか。
年会費3,900円、月額にして325円相当という価格で大量の動画が見放題であるAmazonプライム・ビデオだが、30日間は無料トライアル視聴が可能。
映画やドラマのラインナップも豊富だが、この『今田×東野のカリギュラ』をはじめとしたオリジナル・コンテンツの自由度の高さにこそ、ネット配信サービスの醍醐味を感じられる。
かつてのテレビ好きたちであれば、まずはトライアル登録してみても、決して損はないだろう。
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(文:ソーシャルトレンドニュース編集部)