ー3カ月前、童貞を捨てた。思ったほど、世界は変わらなかったー
チェリーについて

橋本マナミ「愛人」と呼ばれる葛藤

“愛人にしたい女”が演じた“普通の主婦”

「国民の愛人」のキャッチコピーで“愛人キャラ”が定着しつつある橋本マナミ。バラエティ番組にグラビア、先日の『ベストヒット歌謡祭2017』では司会を務めるなどジャンルを問わず活躍の場を広げている。しかし、本来の彼女は女優志望で、芸能界入りも1997年の全日本国民的美少女コンテストでの演技部門賞の受賞がキッカケだ。
そんな約20年の彼女の芸能生活の中で、女優としての転機になりそうなのが、11月25日(土)公開の映画『光』。
『ケンタとジュンとカヨちゃんの国』『セトウツミ』などで知られる大森立嗣監督が、『まほろ駅前狂騒曲』でもタッグを組んだ作家・三浦しをんの原作を映画化。

井浦新・瑛太・長谷川京子といった豪華キャストの中で、橋本マナミは、井浦新演じる主人公・信之の妻・南海子を演じている。
激しい濡れ場も披露している本作に、橋本マナミはどのように臨んだのか。そして、女優を目指して芸能界に入った彼女は、女優としての転機になりそうなこの作品を経て何を感じたのか。“永遠のオトナ童貞のための文化系マガジン・チェリー”ではインタビューをおこなった。

愛人キャラは“演じている”感覚

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――今回演じられた南海子は、不倫こそしているものの、橋本さんの普段のイメージとはちょっと違う、ほぼノーメイクで団地に暮らす“普通の主婦”ですよね。

「ええ、私の普段のパブリックイメージは“愛人にしたい女”という、結構華やかな感じなので(笑)。でも、実は南海子のように、私も人と関わり合いを持つのが苦手だったり、社会性を気にしてしまったりする部分があるので、素の私には近いんです。それに、テレビやグラビアに出るときは巻き髪にして華やかなイメージかもしれませんが、普段の私は生活も質素で地味なので」

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――そうなんですか! では、ある意味、バラエティやグラビアのときも演じている感覚があるということなのでしょうか。

「そうですね、演技でもバラエティでもグラビアでも、いつも“演じている”感覚は持っています

4年前まで清純派 求められるイメージに応え続けたら今になった

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――そうすると、愛人と呼ばれすぎてイメージが先行することに、違和感を感じることもあるんじゃないですか?

「ええ、本当は“お嫁さんにしたい人・ナンバーワン”になりたかったので(笑)。だから、ちょっと違う方向にいってしまった感覚はあります。でも、後悔はしていません。求められるものに応えていったら、今のようになったんですよね。だから、愛人イメージは、ファンの方とともに作ってきたもの、という感覚もありますね」

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――愛人イメージを作り出す前はどんな感じだったのですか?

「4年前までは清純派でした(笑)。それまでは自分の居場所もなくて、キャラもどうすればいいかわからなかったので、今は居心地が良くなった感じですね」

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――ちなみにバラエティ番組などでの経験を経て、演技にいい影響を及ぼすようになったことってありますか?

「動じることがなくなりましたね。お恥ずかしい話、昔は、すごい人が相手だと、不安になってセリフがとんだりすることがあったんです。でも最近は、バラエティで色々な大物の方と接することも多くなってきたので、その経験値と共に、怖いものがなくなってきました(笑)

大森監督に「ビシバシしてほしかった」

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――たしかに最近はバラエティやグラビアのイメージも強い橋本さんですが、もともとは女優志望で、ワークショップなどにも通われていたんですよね。

「ええ、実は大森立嗣監督のワークショップに通ったこともあったんです。そのときは、すごく厳しい印象だったんです。でも、今回の『光』の現場では、穏やかで優しい方でした。もちろん、私が悩んでいるとアドバイスをくれるんですが、それ以外は私が逆に心配になるくらい、何も言われず……。演出も、追いつめる感じではなくて。本当はビシバシやってほしかったんですけどね(笑)」

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――大森監督に以前抱いていたイメージと、撮影現場では違ったんですね。

「でも、撮影が終わって、出来上がった『光』を見てみたら、やっぱりすごく怖くて変な人なんじゃないか、と思いなおしました(笑)。もちろん、昔からエッジの効いた作品を撮られてはいますけれど、今回はジェフ・ミルズさんの音楽の効果もあって、より恐怖心が掻き立てられる感じで……。まだまだ全容がつかめないというか、奥深い方だな、と感じます」

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――ちなみに大森さんのものに限らず、ワークショップに通っていた時代に学んだことはありますか?

「ワークショップには刺激を受けたくて通っていたところも大きいんです。やっぱりそういうところにいらっしゃる役者さんたちの気合の入り方ってすごいんですよね。その場で裸になっちゃう人もいるくらいで。当時は『私にはできない……』なんて思いながら見ていました」

汗にいたるまで… リアルでフリーな濡れ場シーン

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――そんな過去もあった橋本さんが、今回は堂々たる濡れ場をスクリーンで披露されています(笑)。

今は、自分に出せるものは全部出そうという感覚になれていて。濡れ場にしても、感情を出すシーンにしても、自分にストッパーをかけることはしないようにしています」

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――では、今回の瑛太さんとのシーンも、リアルな濡れ場ということで解釈してよろしいんでしょうか?(笑)

「ええ、監督からもリアル感を求められて、イメージを伝えてくださったあとは、全部フリーだったんです。キスするタイミングから何から全部フリーで、私たち任せ。狭い部屋だったので、スタッフの方もギューギュー詰めになって、みんなで汗をかきながら、数回のテイクで撮りきりました。だから、私の汗にいたるまでリアルですよ(笑)」

「芸能人が嫌いだった」

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――さて、映画『光』は、幼いころに抱えていたものが、30歳を過ぎて表出してくるという物語でした。橋本さんの人生を振り返って、小さい頃抱えていたものが、最近、表出してきたと感じられることはありますか?

「私、小さい頃、芸能人っていうものが大嫌いだったんです(笑)。内気で、人前に出るのが苦手なコだったので、『人前に出て、自分をさらけ出して、何が楽しいんだろう?』って思ってたんですよ」

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――ええっ!そんなコが芸能界に入ってつらくはなかったんですか?

「うーん、今は仕事はつらくはないので、合っていたんだとは思います。好きと嫌いは紙一重といいますか、そういう、自分をどう表現していいかわからないというコンプレックスがきっかけになって、この世界に入ったんだと思うんですよね。でも、今でも芸能界に友だちが多くないのは、その頃の気持ちも影響しているのかもしれません」

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――友だちが少ないのは意外でした!

「芸能界は派手なところですけど、そういうところにはあまり近づかないようにしているんです(笑)。女子会も得意じゃないですしね」

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――ちなみに「人前で自分をさらけ出して何が楽しい?」って思っていた橋本さんが、今回は色々とさらけ出しまくってますけど(笑)。さらけだせるようになったのはいつ頃からなんですか?

「180度変わっちゃいましたよね(笑)。うーん、芸歴20年くらいなんですけどほとんど下積みだったので、この3年くらいですかね。だから、自分をさらけ出す今回の役も、昔だったらできていなかったと思うんです。映画を見てくださった方に『橋本マナミにはこんな一面もあったんだ』と新たな発見をしてもらえたら嬉しいです」

(取材・文:霜田明寛 写真:浅野まき)


■関連情報
映画『光』11月25日(土) 新宿武蔵野館、有楽町スバル座 ほか全国ロードショー井浦新 瑛太 長谷川京子 橋本マナミ監督・脚本:大森立嗣 原作:三浦しをん(「光」集英社文庫刊) 音楽:ジェフ・ミルズ配給:ファントム・フィルム©三浦しをん/集英社・©2017『光』製作委員会

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