映画には色んな楽しみ方がありますが、私は映画の中には『雰囲気を楽しむ映画』なるものが存在すると思っています。
それは『映像や音楽、ファッション、家具などがお洒落でセンスがあり、そのスタイリッシュな雰囲気を楽しむ映画』ということです。
古くはウディ・アレンの『アニー・ホール』から、『アメリ』『エターナル・サンシャイン』、最近では『ルビー・スパークス』や『500日のサマー』などが当てはまるでしょう。
ハリウッドの大スペクタクル映画みたいな派手さはないし、物語に大きな起伏もないけれど、人間の心の機微を繊細に描きとった脚本が魅力で、好きな人はきっと好きな映画。
(勝手なイメージですが、女性ならI am IやAmbidex系の服を着ている人が好きそう)
さて、今回はそんな“雰囲気映画”の中で徐々に知名度を上げつつある一本の映画を紹介したいと思います。その名も『シンプル・シモン』。
2010年にスウェーデンで公開され、アカデミー外国語映画賞のスウェーデン代表にも選出された本作品。
予告編はこちらになります。
作成者:シネマトゥデイ
☆あらすじ
広汎性発達障害のひとつとして知られるアスペルガー症候群のシモンは、物理とSFが大好きで、気に入らないことがあると自分だけの“ロケット”にこもって しまう。そんなシモンを理解できるのは、兄のサムだけ。しかし、シモンのせいでサムは恋人に振られてしまう。兄の新しい恋人探しを始めたシモンは、偶然出会った天真爛漫なイェニファーに狙いを定め、2人を近づけようとするが……。
(大好きなお兄ちゃんのため“完璧な恋人”探しを始めるシモン)
では、『シンプル・シモン』の魅力を紹介していきましょう!
(1)正反対な主人公とヒロインのやり取りが面白い!
アスペルガーの主人公シモンのキャラクターはまさに唯一無二。
人の感情を読み取るのが苦手で、パニックになるとドラム缶の中に何時間もこもったり、人に触られるのが苦手なあまり誰かに触られるたびにビンタするなど、その突拍子もない行動は予想のはるか上をいきます。
一方、天真爛漫なヒロインのイェニファーも魅力的。
アスペルガーのシモンにも遠慮なく絡んでいく人懐っこい性格で、ファッションもライフスタイルも自由きまま。
シモンとはまさに“水と油”のような存在。
(二人の噛み合っているのかいないのか分からない会話が楽しい)
冒頭であげた『500日のサマー』などもそうですが、ラブコメではこのような“ヒロインに振り回される”系の映画は王道中の王道ですよね。
映画のみならず、世の男性はそういう女性に一度は痛い目に合わされたことがあると思いますが、まあなんだかんだ言って嫌いになれなかったりしますよね。
(2) 家具や雑貨がカラフルで可愛い!
シンプルながらも洗練されたデザインで今や日本でも大人気の北欧雑貨ですが、この作品でも存分に登場します。
カラフルなんだけど決して目ざわりじゃない、優しい風合いの家具たち。
壁紙のテキスタイルも日本では見ないようなもので、とても素敵です。
また、スウェーデン郊外の緑豊かな自然の風景も、この映画の優しい印象に一役買っています。
(3)スウェディッシュ・ポップがお洒落!
作中で流れるポップでキュートな楽曲の数々もまた魅力的。とにかくポップで明るくてテンションが上がります!
昔、日本でもABBAやカーディガンズなど、スウェーデン出身のバンドがブレイクしましたが、それらが好きな方はきっと音楽も楽しめるはずです。
(4)“アスペルガーが恋のキューピッドになる”という発想が面白い!
ハリウッド映画のように大金をかけられて作られる訳ではない“雰囲気映画”は、脚本がなによりも大事です。ごまかしがきかないので、脚本の良し悪しが如実に現れるんですよね。
その点、本作『シンプル・シモン』は“アスペルガーの弟が兄の恋人を探す”という今までにない発想の作品。
他者の感情を読み取るのが苦手なアスペルガーは恋愛にも疎いとされますが、本作品ではそんなアスペルガーのシモンが兄の恋人探しに奮闘します。
センスのいいアイデアを、センスのいいストーリー展開で膨らませていく様子は、そう簡単に先を予想できるものではありません。
(予想できないラストに思わずほろっときてしまいます)
これらの他にも色々と『シンプル・シモン』の魅力はありますが、それはぜひ映画館へ足を運んで確認して頂きたいと思います。
都内は渋谷ユーロスペースのみでの公開と、ひっそりとスタートした本作品ですが、SNSを中心に口コミの拡散が広がり、今では全国の映画館で上映中です。
CGばかりのハリウッド映画や、漫画原作ばかりの邦画に飽きた方は、たまにはこんな映画を見てもいいのでは?
お洒落でキュートで恋の素晴らしさも感じられるので、デートムービーにもぴったりな一本です!
(もちろん、ロンリーな人が見ても十分楽しめます。私が保証します)