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女子大生が椿鬼奴主演映画『ビッチ』を見たらビッチになれるのか

きのくに ちく美

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きのくに ちく美

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◆私がビッチ女子大生になるまで

「入江ちゃん、こんなの興味ない?」
上司から突然のFacebookメッセージ、何だろうと思って見てみると『ビッチ』という映画の上映会の案内が。

私「これ何ですか?面白そう!」
上司「じゃあ取材に行ってもらえますか!」
私「ぜひ!」
上司「ありがとう!ビッチ女子大生にピッタリの映画だね!

え?ビッチ女子大生?……私ってビッチ女子大生なの?!
正直なところビッチの自覚がなかった私。どちらかというとビッチに嫌悪感すら持っていたのですが、まさか私がビッチ呼ばわりされるとは……。

心に小さなキズを負いつつも、10月11日夜、渋谷の会場に到着。
上映5分前だったからか、場内は超満員でざわついた様子。男性よりも女性が若干多く、20代~30代くらいの若い方が大半でした。

入場の際に、女性がオナニーの際に使用するセルフプレジャーグッズ『iroha』をプレゼントして頂き、(上映中にこれを使って……ということなのだろうか…)と軽く戸惑いながら会場内へ。いよいよ『ビッチ』上映です。

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◆めくるめく、女性性のワンダーランド!

第5回沖縄国際映画祭出品作品としてテレビ東京・吉本興業により制作された本作。
「下ネタが聞こえるだけでもちょっとイヤ!」という超下ネタ嫌いの女性芸人、椿鬼奴さんが日本で巻き起こる女性のエロブームの現場に潜入し、自身の中の『性』と向き合っていくというドキュメンタリー映画です。

始まりは“ビッチ”へのインタビュー。赤裸々に自身の経験を語る20代女性、経験人数100人越えという驚異の40代女性……。傍から見ると奔放すぎるのでは?と思うような『性』の話に交じり、彼女たちは1人の女性としての正直な実感も語ります。
「女性が(性の)経験を言うと、異性からも同性からも引かれる」
「男性にはピルを飲んでることは言わない、ナメられるから」

「オナニーって、一番平和な行動ですよね」
と熱弁するのは、自分のオナニーの仕方についてWEB上で動画配信をしているという女性。

彼女にとってのオナニーは“自分の快楽を求めるためのオナニー”であり、よく女性誌で目にする文句「オナニーをして彼とのSEXでの感度を上げよう!」のようなSEXのためのトレーニングとしてのオナニーではない、といいます。SEXとオナニーは全く別のものとして考えているそうです。

このように考える女性は、彼女だけではありません。
事実、女性用がオナニーの際に使用する、セルフプレジャーグッズとして代表的な『iroha』を始めとする、女性向けのラブグッズが売り上げを伸ばしていることは、以前ご紹介したとおり。
女性にとって、性は身近なものとなりつつあるようです。

さて、その後映画では、女性の間でひそかな人気となっている話題サービスを鬼奴さんが体験。
まず紹介されたのは『レンタル彼氏』
サービスの内容はいたってシンプル。女性が料金を支払って、男性を“彼氏として”レンタルできるというものです。

作品中では鬼奴さんが1日レンタル彼氏を体験。鬼奴さんがパチンコ好きだということでデートはパチンコ屋からスタート。
「パチンコ屋かよ!」と思いましたが、仲良く並んでパチンコを打つ2人の様子はまるで本物のカップルそのもの。鬼奴さんも遊園地に来たばりのキラキラ輝かしい笑顔で、時がたつのも忘れて楽しんでいます。
女性客の好みや希望に合わせて、彼氏役の男性自らデートプランを組んでくれるこのサービス。作中には、鬼奴とのデート後に彼氏役の男性自身へのインタビューシーンも。
男性が語る「将来の夢」はその現実とのギャップに、会場から「え?方向性そっち?」というつぶやきも。必見です。

さて、彼氏体験を楽しんだ鬼奴さんが、続いて体験するのは『性感マッサージ』
『性感マッサージ』とは、女性が身体を愛撫してもらえるサービス。“快楽”によるリラックス&リフレッシュを体験できるそうです。

そんなマッサージを仕事にする男性なんて、どエロ顔に違いない……と思いきや、意外にもイケメンが登場。雰囲気的には“大手家電メーカーの営業マン”という感じ。なんとなく優しげな表情が、家電のような親しみやすさを放っています。

さすがに下ネタ嫌いの鬼奴さんがマッサージを受けるのは難しい……ということで代わりに登場するのが常連客だという美人(っぽい)女子大学院生。
大人しそう&可愛らしい印象の彼女でしたが、ホテルの一室でマッサージを受け始めると一変。
このイケメンマッサージ師が凄いのか、はたまた彼女の隠された素顔なのか、女性が快感に身悶えする様子に思わず会場全体が「ごくり。」な空気に。
こんなサービスが存在していたなんて、日本という国はつくづく、小さくも奥深い国である。

ところで気になるのが、この女子大学院生。マッサージ師との会話の内容から察するに“彼氏持ち”のようですが、それでも『性感マッサージ』を利用しているのはなぜなのでしょうか。
加えて先ほどの『レンタル彼氏』、実はサービスは遊びや食事にとどまり「性的なサービスはお断りしている」とのこと。

これまで、キスやSEXは恋愛と絶対的に結びつけて考えられていたもの。「好きでなくても抱ける」というのが男性なら、「好きだから身体を許す」というのが女性でした。
しかし、この2つのサービスが人気であることを考えると、どうも女性にも“恋愛”と“性”は一続きのものではないように思えます。

◆ビッチ女子大生、ビッチアラサーになる

あらゆる性ワールドを垣間見て、「自分はこのまま、性感マッサージを受けないような自分でいいのか……」と疑問をもった椿鬼奴さんが最後に訪れたのは、瀬戸内寂聴さんのもと。

恋人に捧げるものだった日本女性の“性”。しかし性器も性欲も、女性自身のもの。ほかの誰のものでもなかったはず。
冒頭の『ビッチ女性』たち、露出度の高い衣装を身にまとう『コスプレイヤー』や、世界に広まりつつあるという『BL女子』、熟女代表として登場する岩井志麻子さん、そのほか作中に登場する女性たちはイキイキと自分の“性”を楽しんでいました。

鬼奴さんが自分で見ないようにしていた、自分の中の“性”。「今まで知らなかった自分が出てきてしまったら怖い、おかしいと思われたくない」と言う彼女に、瀬戸内寂聴さんが言った言葉は、
「一度、男に溺れてみたらいい」

食の好みが異なるように、好みのタイプが異なるように、“性”の楽しみ方も人それぞれ。
しかし、レストランのメニューを体調や気分によって相談しながら選ぶように、性の場面において相手とそのようなコミュニケーションをとる人がどれほどいるでしょうか。

相手がどのような事が好きか、自分は何が気持ちいいのか、これまで何となく考えるのを避けてきた、“性”。
性を正面から見つめ、自分の快楽を追求する女性たちの姿。作中に描かれる『ビッチ』は、決してふしだらな女ではなく、自分の性のあり方を自ら選択する、自立した女性の姿でした。

「自分の性と向き合うことは、自分の心と向き合うことなのかも」

瀬戸内寂聴さんの神々しさに心洗われ、上気した気持ちで会場を後にする私。
数々の性ワールドを目撃し、70分の映画を見ただけで今後10年分のエロを体験したかのような感覚です。ビッチ女子大生を通し越して、ビッチアラサーになった気すらします。おそらくこの先、どんな性癖に出会っても広い心で受け止められるでしょう。(というか私はいつからビッチになったのでしょうか)

日本の知られざるエロ市場を赤裸々に描いたドキュメンタリー映画『ビッチ』は、2014年10月15日(水)にDVDを発売。まだ日本の、そして自分のエロを知らない皆様にぜひ広くお勧めしたい一本です。

でも私、ビッチではないと思うんだけどなあ……。こんな記事書いてるけど…。しゅん。

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左から、書籍『ビッチの触り方』の著者の湯山玲子さん、監督の祖父江里奈さん、作中に登場する岩井志麻子さん。
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