ー3カ月前、童貞を捨てた。思ったほど、世界は変わらなかったー
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ゴジゲン「朱春」に溢れる“愛おしい曖昧さ”

本稿は、劇団ゴジゲン主宰・松居大悟氏と親交の深い、当サイト・チェリー編集長の霜田明寛による『朱春』観劇コラムです。
『朱春』はザ・スズナリにて、4月11日(日)まで上演中。
なお、記事内に劇中の画像や台詞の一部が挿入されますことをご了承のうえ、読み進めて頂けますと幸いです。

「朱春」というのは、青春の次にやってくる「朱夏」まではいかない時代のことを指す言葉らしい。
青春とも言えない、壮年期とも言えないそんな曖昧な時代を指すという公演タイトルを聞いたとき、きっと、35歳の松居大悟の今が強く反映される作品になる予感がした。


6人組お笑いユニット「ジュバル」の解散の夜を描くこの作品。学生時代から10年以上続けてきた、という設定は松居大悟をはじめとした劇団ゴジゲンのメンバーとも重なって見える。

物語の前半でメンバーが「解散したら友達になれるのか」を議論する場面がある。
ということは、彼らにとって“仕事をしている仲間”は友達ではない、ということである。
そこでおこなわれる“友達かどうかはっきりさせようとするやりとり”に少し既視感があった。

今年の2月、僕は松居大悟がナビゲーターを務めるJ-WAVEの番組『JUMP OVER』にゲストとして呼ばれ、2週に渡って、自分たちは友達なのかを話し合った。

結論が出ないまま、2週目の出演も終盤に差し掛かった頃、僕は彼に「僕も結婚をしたし、これまで大悟と2人で過ごせてきた時間は奇跡のようなものだったのではないか」という趣旨の問いかけをした。

大悟がそこに対してすかさず返した言葉は
「区切ろうとすんなよ!」
だった。
彼の好きな野狐禅の『ならば、友よ』の歌詞を引用してまで反論をした。

たしかに僕は区切ろうとしていたのかもしれない。
正確に言うと、区切らなければいけないような気がしていた。
結婚するということは青春を終わらせることだと思っていた。
そもそも、こんな「青春をひきずる」をコンセプトにしたサイトを5年もやっているくらいだ。
ダラダラとひきずっていいものは、ひきずっていたい。
でも、そうもうまくはいかないだろう予感におびえている、そんな日々だ。


物語の後半、松居扮する“妖精”がこう囁く。
「曖昧なままでいいよ、全部」

きっと松居大悟も、曖昧にすること、と、はっきりさせようとすることのあいだで葛藤し続けているのだと思う。

つくづく“あいだ”を描く天才だな、と思う。
4年前に舞台作品として上演され、この春、映画として公開される『くれなずめ』も、結婚式と2次会の“あいだ”を描いていた。

友達なのか、友達じゃないのか。
今は、青春期なのか、壮年期なのか。
きっと、彼はそれを言葉にしてしまうことで、何か失われるものがあることに気づいているのだと思う。
そして、それに抗っているように見える。

言葉にすることは、誰かの作ったその言葉の定義にのってしまうことだから。
その代わりに、作品にする。
そんな言葉にできない愛おしい曖昧さがこの「朱春」の中に描かれ、溢れている。


<ゴジゲン第17回公演 「朱春」>


作・演出:松居大悟
出演:奥村徹也 東迎昂史郎 松居大悟 目次立樹 本折最強さとし 善雄善雄
日程:2021年4月1日(木)~4月11日(日)
会場:ザ・スズナリ
チケット料金:前売 3,800円 当日4,200円 U-22 2,200円※要年齢確認証提示 配信 2,500円
詳細はゴジゲン公式サイトまで

ゴジゲン 公式YouTubeチャンネル 「ゴジゲンのゴジtube」も配信中★

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