女子をときめかせる行為の1つとして多用される「壁ドン」。
男子が女子を壁に追いつめ、掌でドンとしてその逃げ場をなくし、告白なりチューなりしてキュンとさせることを言います。かねてから少女マンガでは定番で、恋に恋する乙女たちの支持とニヤニヤを集めてきました。
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(なんと『壁ドン ~好きって言うまで逃さねえ~』というタイトルのゲームまで登場)
ところが最近、注目を浴びたい女子なら一度はやられたい、というテイストで大きく取り上げられています。多くのテレビドラマにも取り入れられ、雑誌でもシチュエーション別に特集が組まれるなど、その勢いは増すばかり。
あたかも女子の心をつかむ鉄板のように扱われている壁ドン。
ドンッ。えっ。好きだよ。みたいなシーンを見て「キャードキドキしちゃう」とぬいぐるみを抱きしめる女子は多いのでしょうが「はい、出た出た」と天を仰いで鼻を鳴らす系女子もいるはずです。主人公気分を味わえるようなカメラアングル、やわらかい照明効果にむずがゆさと寒気を感じるのも事実。私だけではないと信じたい。
世の女性は本当に壁ドンを求めているのか。鼻で笑っちゃう系女子は他にもいるはず……!、というわけで女子大生20人ほどに調査したところなんと半数以上が壁ドンを経験済み!自分の恋愛経験値の低さに動揺しながら、やはり壁ドンは支持を得ているのかと愕然としていると、中には「彼氏に頼んでやってもらった」なんて強者も……。
しかし「流行ってるからやってもらったけど……リピートはないかな」と雲行きの怪しい意見。さらに「お前何してんだよと腹が立った」「威圧感があり、恐怖でしかなかった」など理由は様々にしてもロマンチックな雰囲気とはかけ離れていて「なんか違う」感じがあったといいます。テレビドラマを見ていても、その違和感はぬぐえないようで、ときめくどころか失笑しちゃう系女子も少なくないことが判明しました。
みんな諦めたように「あれは夢物語だから」と笑います。
「夢」ではあるけど、実際にはノーサンキュー。この女子の複雑さ一体どういうことでしょう。
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(元祖ツンデレ男子×ラブコメディのドラマ『イタズラなKiss2』でもこんなシーンが)
話を聞き進めると、彼女たちに共通する理想と現実の線引きが見えてきました。
どうやら女の子の中には「理想の恋愛シアター」とでもいうべき、何をしても許される世界が存在するようです。そこでは、勝手に創り出した王子様と超美人な自分が愛を育み、壁ドンでもお姫様抱っこでも、なにをしても画になる無敵空間だというのです。
しかしその理想と妄想が現実世界で起こると、なんか違うんだよなーと許せなかったり、失笑してしまうメカニズム。現実では相手も生臭い人間だし、自分も見慣れた自分自身でしかないのです。描いていた理想は現実では輝きを失い、むしろ取り残されたような切なさで台無しにします。もう、笑うしかないというわけです。
確かに、夢は夢の中で存在するから美しいのであって、それが飛び出て目の前に現れる必要はない。むしろ萎えてしまうかもしれません。
そう、女子は自分勝手。私の希望通りできないならやらんでいい、的な思考を持っています。
現実世界でいくら男子が胸キュンシーンを再現したところで、私たちが長年かけて完成させた王子様に追いつくことは到底できません。
お前ごときがなにやっちゃってんの、生意気、と鼻で笑ってしまうのです。
男子諸君、壁ドンすれば女の子を落とせると思ったら大間違い。
あなたが王子様じゃないってことくらい、女子はちゃーんとわかってますからー!
(文:大久保彩乃)