作成者:TBS公式Youtuboo
長年犬猿の仲にあった男子校(とんこー)と女子校(さんじょ)が合併を目指し、実験的に共学クラスに入ることになった生徒とそれを見守る大人たちの青春ドラマ『ごめんね青春』。
『半沢直樹』のヒットが記憶に新しい日曜9時、TBS日曜劇場の枠だが、先週第5話の視聴率も7.4%と振るわない。
しかしtwitterをはじめとしたネット界隈では、熱狂的な感想を多く見かける。
ダイノジ大谷ノブ彦ら著名人も本作についてツイートするなど『木更津キャッツアイ』のように視聴率は低いが熱狂的なファンを生み出す、官藤勘九郎の「ニッチなヒット作」の1つになることは間違い無さそうだ。
『池袋ウエストゲートパーク』で窪塚洋介や山下智久、『タイガー&ドラゴン』で星野源などを起用し、独自のクドカンワールドを作り上げながら次世代を担う役者を多く発掘し、世に出してきた彼のドラマたち。今回は初の学園ドラマということもあり、未来を担う逸材が多く出てきそうである。
そこで今回出演の多様なメンバーの中から「おバカキャラで素直」というバラエティ番組を中心に世間に浸透しているキャラクターを逆手に取り、魅力を爆発させている川栄李奈について取り上げたい。
バラエティではバカキャラ扱いされ、「足のにおい」などでもいじられている川栄が演じる神保愛は早稲田大学が合格圏内であるほどの秀才という役柄。自分たちより偏差値が低いクラスの男子に勉強を教える姿も様になっている。その上何かあればその男子に容赦ない怒号を浴びせるキレキャラである。
ネットでも「川栄のキレる演技がスゴい」という声が多く寄せられている。本当にすごいのはテレビの向こうの自分ですら「びくっ」としてしまうほど怖いのに、「神保愛」には下品さがなく、ちゃんと女の子として可愛い点であると思う。
第1話終盤の神保愛はこっそり自分の彼女に手を振る海老沢(重岡大毅)に対して勘違い「つーかおめえ何チラチラ見てんだよ!え?じゃねえよさっきからニヤニヤして小さく手振りやがってオカマか、コラ!」と怒号を浴びせる。
しかし第2話、放課後の教室で女子数人と共にふざけているところに海老沢がやってくる。神保愛も再び啖呵を切り、追い返そうとする。しかし彼が阿部あまり(森川葵)に向けた「一緒に帰ろう」という誘いを自分だと勘違いすると一転「え、あ、あたしと?」口を緩ませ照れて聞き返す。
他の女優さんなら何でもないシーンだ。しかし「キレ方」が尋常じゃなく振りきれている上に、一瞬デレる表情にアイドルとして身に付けた「かわいい」を全てつめこむ。だからこそ彼女のツンデレは唯一無二のシーンとして強く印象に残るのだ。
作成者:TBS公式Youtuboo
アイドルとして背負ってしまった業、求められてきた魅力。それらを逆手にとる演技ほどささるものはない。AKB48のセンターとして同世代の若者には経験しがたいほどのプレッシャーに対し笑顔で戦ってきた、彼女の先輩である前田敦子が『もらとりあむタマ子』でみせた「1人の親とも向き合えない」弱くて怠け者の芝居が素晴らしかったように、川栄李奈にはこれからも「アイドル」として築き上げてきた魅力を面白くひっくり返すような、唯一無二の女優になってほしい。
(文:小峰克彦)