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とんねるず 『ザ・ベストテン』撃破でお笑い番組の地位向上

シエ藤

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シエ藤

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CD不況と言われる昨今。比例するように、テレビからも音楽番組が消えつつあります。若者向けのゴールデン帯のレギュラー番組は『ミュージックステーション』(テレビ朝日系、金曜20時〜)だけ。ミュージシャンが新曲を発表しても、テレビで歌う機会はほとんどありません。
90年代初頭にも、同じような状況がありました。89年秋に『ザ・ベストテン』(TBS系、木曜21時〜)、90年春に『歌のトップテン』(日本テレビ系、月曜20時〜)、90年秋に『夜のヒットスタジオ』(フジテレビ系、水曜日 22時〜)が相次いで終了。ティーンエイジャーの観る歌番組が一気に消滅したのです。

なぜ、80年代後半になって、突如として歌番組の視聴率が衰退していったのでしょうか。
さまざまな要因が考えられるなか、主な視聴者層である子供(小中高生)の嗜好が、“音楽からお笑いへ”移行していった点は見逃せません。

端的にいえば、80年代を代表する歴史的歌番組『ザ・ベストテン』は『とんねるずのみなさんのおかげです』に、『歌のトップテン』は『志村けんのだいじょうぶだぁ』に視聴率で敗れ、番組が終了したのです。
終了の前年である88年、『ザ・ベストテン』の視聴率は決して悪くありませんでした。1月から3月までの放送13回中10回も20%以上(関東地区、ビデオリサーチ調べ。以下同)をマークしています。

8週連続1位の光GENJI『ガラスの十代』に代わって、中森明菜『AL-MAUJ』が1位に輝いた2月18日には、25.3%を記録。このとき、『ザ・ベストテン』が1年半後に終了すると言っても、信じる人はいなかったでしょう。
4月以降、20%超えは減りますが、それでも10%台後半をキープ。

『教師びんびん物語』の熱血教師役がハマった田原俊彦が、同ドラマ主題歌『抱きしめてTONIGHT』で約4年8ヶ月ぶりに1位に輝いたり、『TATTOO』を歌う中森明菜のセクシーな衣装が話題を呼んだり、『ザ・ベストテン』は相変わらず眩い光を放っていました。

しかし、10月に同時間帯で『とんねるずのみなさんのおかげです』が始まると、流れは激変します。『ザ・ベストテン』の視聴率は、1ケタまで落ちる週も出始めるのです。9月に、2度も20%超えを叩き出していた番組とは思えない数字です。その後も、10%前後の数字が続き、打ち切りの噂が出始めます。

『ザ・ベストテン』自体のコンテンツ力が落ちていたわけではありません。その証拠に、89年1月5日には18.6%、12日には17.1%を獲得。なぜ、視聴率が上がったかと言えば、裏番組の『とんねるずのみなさんのおかげです』が休止だったためです。同じ状況下だった4月6日も、17.1%を獲っています。しかし、『とんねるずの〜』が放送されれば、またしても10%前後の視聴率に戻ってしまい、7月6日には放送終了が発表されます。

『とんねるずの〜』の放送がない日、『ザ・ベストテン』は20%近い数字をマークしていたわけですから、今になって考えてみれば、終了ではなく“時間帯の移動”という選択肢があっても良かったのでは…と惜しい気がします。

『ザ・ベストテン』の番組自体がパワーダウンしたわけではなく、視聴者が音楽に急激に興味を持たなくなったとも考えづらい。つまり、毎週25%前後の数字を叩き出していた『とんねるずのみなさんのおかげです』の勢いがあまりに凄まじかったのです。

この頃から、ティーンエイジャーの興味は「お笑い>音楽」に明らかに変わっていったのです。

70年代半ば、夜9時台はドラマや映画、歌番組が主流でした。萩本欽一は、その時間帯に『欽ちゃんのどこまでやるの!』(テレビ朝日系)というお笑い番組を始めたことで、芸人の全体的な地位を向上させました。その大革命から10年以上経った80年代後半、とんねるずが歌番組『ザ・ベストテン』を撃破したことも、お笑い番組の地位を上げる大きな革命のひとつだったと言えるでしょう。

(文=シエ藤)

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