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放送3回目で視聴率3.7%記録――『ミュージックステーション』が28年続く理由

シエ藤

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シエ藤

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『ミュージックステーション』(テレビ朝日系、金曜20時〜。以下、Mステ)は、10月で28周年を迎えました。ヒット曲が出なくなった今、民放地上波のゴールデン帯でレギュラー放送されている唯一の歌番組です。

『Mステ』は、これまで何度も打ち切りの危機がありました。

関口宏と中原理恵の司会で始まった86年10月当時、テレビ界は歌番組全盛でした。中森明菜やチェッカーズ、おニャン子クラブのメンバーなどがヒットチャートを賑わせ、『ザ・ベストテン』(TBS系)、『夜のヒットスタジオデラックス』(フジテレビ系)などがゴールデン帯で放送されていた時代です。
2つの代表的な歌番組は、毎週視聴率20%前後を獲り、時には30%近い数字を叩き出すこともあるほどでした。

そんな状況下で開始された『Mステ』は他番組との差別化を図れず、歴史でも劣ることもあって、視聴率で苦戦を強いられます。初回8.1%(関東地区、ビデオリサーチ調べ。以下同)でスタートすると、3回目で3.7%というゴールデン帯では異例の低視聴率に。
同週の『ザ・ベストテン』は19.5%、『夜のヒットスタジオ』は18.2%ですから、いつ打ち切られてもおかしくない数字だったか、よくわかります。
12月5日、『Mステ』はようやく10.5%と初の2ケタを獲得しますが、年内の2ケタはこの日だけ。
開始当初から番組には暗雲が立ち込め、87年4月の改編で、司会を関口宏からタモリに交代させますが、それ以降も視聴率は思うように伸びませんでした。

そして、89年になると、歌番組全体が低迷する時期に差し掛かります。『ザ・ベストテン』が、裏番組の『とんねるずのみなさんのおかげです』に敗れ、10月5日をもって11年8ヶ月の歴史に幕を閉じます。すると、それまで何とか2ケタを保っていた『歌のトップテン』(日本テレビ系)の視聴率が1ケタに終わる週が目立ち始め、翌年3月限りで終了に。『夜のヒットスタジオ』も数字が獲れなくなり、90年10月3日の総集編でフィナーレを迎えてしまいました。

続々と、テレビ史に名を残す歌番組が終了するなか、『Mステ』だけは継続されます。だからといって、『Mステ』の視聴率が良かったわけではありません。『ザ・ベストテン』終了直後の89年10月20日には、4.5%まで落ち込むなど1ケタは当たり前。89年は放送45回中、6回しか2ケタをマークしていません。業界全体の流れからいっても、この頃に打ち切られても何ら不思議はありませんでした。

それでも、番組が続くことで、『Mステ』の希少価値は高まっていきました。現在と同じように、90年代前半はゴールデン帯に歌番組がほとんどなく、特にティーンエイジャー層向けの歌番組は皆無の状態に。そのなかで、番組をやめない『Mステ』は、自然と存在感を現すようになったのです。

当時のテレビ朝日は視聴率的にも芳しくなく、常時高い数字を獲れる番組は『ドラえもん』『ニュースステーション』くらい。そのため、低視聴率でも『Mステ』が継続できたという見方もできます。これが、当時視聴率トップ争いをしていたTBSやフジテレビであれば、打ち切られていたでしょう。

80年代のティーンエイジャーにとって“歌番組=ベストテン”であったように、90年代前半のティーンエイジャーにとっては“歌番組=Mステ”という図式が出来上がり、『Mステ』のブランド力は高まりました。そして、歌番組が全体的に活気を取り戻した90年代中盤には視聴率も上がっていきます。

近年、テレビ朝日は視聴率好調で、今年のゴールデン帯、プライム帯で年間民放2位を獲得しそうな勢いです。そのなかで、『Mステ』は視聴率10%前後であり、決して高い数字とは言えません。まして、『HEY!HEY!HEY!』(フジテレビ系)、『うたばん』(TBS系)など90年代から00年代にかけて高視聴率を獲得した歌番組が、10年代に入って相次いで終了。現在は、90年代前半と同じく、“歌番組冬の時代”が到来しています。

しかし、他の歌番組が消えていくなかで、数字が悪い時期も打ち切りせず、28年続けてきたという功績は、音楽業界やその時代のティーンエイジャーにとって、とてつもなく大きいものです。そして、その価値は“歌番組冬の時代”だからこそ、高まっています。
“もし今でも、『ザ・ベストテン』や『夜のヒットスタジオ』が継続されていたら…”と夢想する音楽ファンは少ないないはずです。
いずれ『Mステ』がそうならないように、たとえテレビ朝日が視聴率トップに躍り出る日がきたとしても、半永久的に番組を続けてほしいものです。

(文=シエ藤)

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