横浜DeNAベイスターズが絶好調だ。開幕から好調をキープし、2位・巨人に2.5ゲーム差をつけて、首位に躍り出ている(5月10日現在。今年の記録は以下同)。
大きな原動力は、3番・梶谷隆幸、4番・筒香嘉智の生え抜きコンビだ。開幕から全試合に出場し、打順を一度も変えることもなく、打線を引っ張っている。
特に、3番・梶谷は3、4月度の月間MVPを獲得。打率、安打、二塁打、盗塁の4部門でリーグトップに立った。
『3番・梶谷』にこそ、ベイスターズ躍進の秘密が隠されている。
昨年も開幕から3番を任されたが、ユリエスキ・グリエルの加入以降、『1番・梶谷』のオーダーが増えた。今年、もしグリエルが来日していたなら、梶谷は1番に戻ったことだろう。
以下のデータを見て頂きたい。昨年、梶谷が座った打順と盗塁数の関係である。
足の速い選手が起用されるイメージのある1番よりも、3番に座った試合のほうが盗塁の確率が高いのである。
梶谷自身、「3番のほうが走りやすい。1番だと、バントやエンドランの可能性も考えないといけない」と話しているという。4番が打席に立っていれば、ほかのサインは頭に入れる必要がないため、盗塁だけに集中できる。1番だと、ベンチの作戦との兼ね合いがある。
迷いの有り無しが、3番での成功率9割、1番での成功率6割6分7厘という差になって現れているのだ。
特に、現在リーグ2位の犠打数を誇るDeNAの場合、1番打者が塁に出ると、手堅くバントで送る傾向にある。
今年、1番打者が回の先頭打者として出塁したケースは、26回ある。そのうち、2番打者は18回も犠打を試みている(16回成功。二塁盗塁後の犠打は除く)。
1番打者が回の先頭打者として出塁した場合、
バント企図確率 6割9分2厘(バント企図後の得点確率 4割4分4厘)
にまで上るのだ。逆に、同じ条件での盗塁企図は、開幕第2戦の巨人戦の1回表のみ。無死1塁から、石川雄洋が2盗。26回中1しかない。
盗塁企図確率 0割3分8厘(盗塁企図後の得点確率 10割)
つまり、DeNAの戦法を考えると、梶谷が1番に座っても俊足は生かせない。そのため、3番のほうが梶谷自身しっくりきているのだろう。今年、37試合11盗塁(2盗塁死)の内訳を見てみると、梶谷はスチール後、5度生還している。
盗塁成功率 8割4分6厘(盗塁成功後の得点確率 4割5分5厘)
『1番・梶谷』だと足が生かせないが、『3番・梶谷』になると盗塁がしやすくなる。梶谷は「4番を迎えた場面で走るな」という球界の常識を覆し、積極的にスチールを敢行している。そして、得点圏でクリーンアップを迎えることもあり、盗塁が得点に結びついているのだ。
昨年、グリエル来日後は『1番・梶谷』『3番・グリエル』というオーダーが増えた。グリエルは62試合3盗塁。走って、相手を掻き回す選手ではなかった。
『1番・梶谷』だと彼の個性は死んでしまう。そして、『3番・グリエル』は走るわけではないので、後続打者の打棒に期待するしかなくなってしまう。
要するに、3番がスチールできないことで、併殺打の可能性も高くなるし、攻撃のバリエーションが限定されてしまうため、昨年終盤のDeNAは得点力不足に陥っていた。
グリエルが来日していれば、梶谷はおそらく1番で起用されただろう。すると、思うように盗塁ができなかったはずだ。グリエルの思わぬ離脱は、『梶谷の足を存分に生かせる』というプラスの効果をもたらし、実はDeNAの得点力を伸ばしていたのである。
(文:シエ藤)