(C)鳴見なる/竹書房
近年、『深夜食堂』や『孤独のグルメ』など、人気のグルメ漫画が映像化されて大ヒットとなる構図が目立つ。
今クルーでも、ドラマ『ラーメン大好き小泉さん』(フジテレビ系)の第2話が深夜ドラマにしては高い8.2%の視聴率を叩き出した。
今回はそんな人気ドラマの原作である漫画『ラーメン大好き小泉さん』(鳴海なる・竹書房)の魅力を紹介したい。
本作は“美少女が大好きな女子高生”大澤悠が、クールな美少女にも関わらず、ラーメンが大好きな転校生・小泉さんにつきまとうことで、ラーメンの魅力にハマっていくというストーリー。
例えば、「ジロリアン」と呼ばれるファンがおり、「ヤサイマシニンニクアブラカラメ」など呪文のような注文フレーズで知られる“二郎系ラーメン”。
横浜の『吉村家』が発祥とされる“家系ラーメン”など、ラーメン好きであれば馴染み深い名店が取り上げられている。
しかし本作が広く支持される理由はそれだけではない。
その街にしかない名店だけでなく、チェーンの名店もピックアップ
新宿ゴールデン街の『すごい!煮干しラーメン凪』や西荻窪の『パパパパパイン』など、その街にしかない名店を取り上げており、ニッチなラーメンファン受けもよい本作。
一方で、繁華街であれば1店舗は存在しているのではないかと思われる人気チェーンの名店を評価し、取り上げている点も忘れてはならない。 『天下一品』、『一蘭』、『一風堂』、『蒙古タンメン中本』、『野郎ラーメン』など、“ラーメンビギナー”な方でも1つは知っているお店があるのではないだろうか。
ラーメン初心者でもわかる、チェーン店の小ネタがうれしい
そんなチェーンの名店を取り上げる際でも、描写が細かい点も特徴的だ。
『一蘭』の自習室風の仕切りがついたカウンター。『一風堂』の、水ではなく、ルイボスティーが用意されていること、ピリ辛もやしが食べ放題というオプションの豊富さetc.
これらはファンにとっても深くうなずける“あるある”だが、この微細な描写のお陰で再現された雰囲気が、「偶然入ったことある!」という方でも共感できる要素となっているのだ。
お店だけでなく、コンビニのカップ麺から冷凍タイプまで網羅
小泉さんはラーメン店だけでなく、近年増えてきたコンビニ内のイートインスペースでもラーメンを食べている。
第十六話では、コンビニのプライベートブランドであろう魚介系のラーメンに、店内で購入がきる味玉と天かすをトッピングするメニューが紹介された。
どんなジャンルのラーメンに対しても敬意を払い、ベストな食べ方を編み出す姿勢はお店のラーメンに対峙する時となんら変わりがない。 彼女のお嬢様な見た目らしからぬ、“コンビニ食を堪能する”庶民ぽいおギャップが印象的だ。
また、この回では「生麺」、「冷凍タイプ」、「カップ麺」のそれぞれの特徴と良さについて小泉さんの口から語られ、“生活に密接したラーメントリビア”を知ることもできる。
大学時代、二郎系ラーメンで3年間アルバイトをしていた筆者。まさに男の園であるラーメン屋に、「勇気を出して食べに来た!」と言って通いはじめた女性が、徐々に常連になっていく様をカウンター越しによく目撃していた。
気になるけど、行きづらい……そんなお店への背中を押してくれる“グルメ×美少女”漫画。
今後どんな作品が生まれるのか、注目したい。
(文:小峰克彦)