2015年、女性たちが好きな人に、会いたくて会いたくて震えていた頃、遡ること13年前、同じ日本では「明日晴れたら君に会いに行こう」というまさかの超ポジティブシンキングな歌が歌われていました。(ちなみに私は会いたくて会いたくて震える相手が欲しくて震えているので助けてください。明日が雨だろうが雪だろうが会いに行きます)
「歌姫」=「浜崎あゆみ」
現在23歳の筆者の中ではギリギリこの方程式も理解が出来るのですが、2000年の「歌姫」と言えば西野カナでもmiwaでもなく、100%浜崎あゆみでした。
ですが、時は流れ2015年現在では、その姿をテレビで見かけることも少なくなり、我々若者からすると正直彼女は「古い」存在として認識されるようになりました。
ですがそんな現代でまさかの「あゆが大好き」だという女性を発見!
もはや国宝級の希少価値……!!
そこで今回は2015年の今でも浜崎あゆみファンだという女性にインタビューをし、その独特の「浜崎あゆみ愛」について、完全「西野カナ世代」の現役女子大生ライターが迫っていきたいと思います。
個人的に今までずっと謎だった一人称が「僕」であることの謎や、時代を超えた彼女の生き方など、意外な真実が明らかとなりました……!
「ダサいまま突っ走っているその不器用さを愛してみないかい?」
(アパレルメーカー営業担当女性26歳)
――まず、浜崎あゆみ(以下あゆ)を好きになった経緯を教えてください。
今でもはっきり覚えているんだけど、あゆを好きになったのは2000年の6月でした。きっかけは当時放送されていた「スーパーテレビ情報最前線」という番組を見たことで、その中であゆが取り上げられていて、まんまと「あゆってすごい……」ってなっちゃったんです(笑)。 元々私、あゆに良いイメージって持っていなくて、どちらかというと鈴木あみの方が好きかなって(笑)。
……鈴木あみは知ってる?
――知ってます! ちょっと顔似てますよね?(笑)
そうそう! それで、あゆは声も高くて金髪で、正直バカだと思ってたの。でも、その番組の中で実は歌詞作りにはじまり、CDのジャケット、コンサート作りまで全て彼女が関わっていると知って「こんなにすごい人なんだ!」って思って。あとは、彼女の書く歌詞がすごく刺さったの。みんなが知ってる曲だと……「SEASONS」っていう曲があるじゃない? そこに「今年もひとつ季節が巡って 思い出はまた遠くなった」っていう一節があるんだけど、そういう言い回しがすごく素敵だなって!
――確かにあゆの歌詞って独特ですよね! では、歌詞が好きということで好きな曲と嫌いな曲を教えてください。
え~どれも好きで選べないよ~(笑) 。嫌いな曲も特に……。でも大衆向けに作られた明るい曲はあまり聴かないかな。でも聴くと好きだし……。
――それっていわゆる「ファン心」ってやつですよね! 私も浜崎あゆみに関しては全然共感出来ないですけど自分の好きなアーティストに置き換えたら理解できます!
う、うん。良かったです(笑)。 だから明るい曲も嫌いなわけじゃないけどあんまり聴かないって感じかな。
――ちょっと分かりあえたような気がしますね! あ、歌詞と言えば前から気になっていたんですが、あゆってなんで歌詞の一人称が「僕」なんですか?病気なんですか?中二病なんですか? 思春期に少年から大人に変われていないんですか?
違うよ!(笑) それにはちゃんとした理由があるんです!
一人称を「私」にしちゃうとあゆの言葉になっちゃうんだよね。でも「僕」なら聴き手が自分のこととして捉えられるじゃない? だから「僕」にしてるんだよ。ちなみにたまに一人称が「私」のときもあって、そういうときは「あゆ自身の叫び」が多かったりするの!
さらに言うと、「僕」のときは「君」で、「私」のときは「あなた」って言葉をよく使うの。
そして「私」の発音はたまに「アタシ」にもなるんだよ。
――(笑) どういうことですか?(笑)
気分が高ぶってくると「私」を「アタシ」って発音するからそういうときは「あー、気分高ぶってるなあ」って思うの(笑)。
「アタシが!!!!!!!!!!!」みたいな感じなんじゃないかな(笑)。
ダサいのは彼女が時代に合わせていかなかったから
――なるほど(笑)。せっかく貴重な(笑)情報を教えて頂けてとってもありがたいんですが……ちょっと心苦しい質問をさせて頂きます!!
正直イマドキの私たちにとって「浜崎あゆみ」ってかなり「ダサい存在」なんですが、それについてはどう思いますか?
あ! 私もそう思う!
なんだろうなー……時代に合わせなかったんだろうね。ほら、ミスチルとかってさ微妙に歌詞とかを時代に合わせて変えていってるんだよね。でもあゆはそれをしてこなかった気がする。あと、あゆがやりたいことと、私たちファンが求めていることが違うんだよね(笑)。
――どう違うんですか?
昔のあゆは私たちの「代弁者」だったんだよね。でもいまのあゆはそういうことよりも「ショー」がやりたいみたいで。ライブもね、お色直しを10回もやるんだよ!? 結婚式ですらそんなに変えないわっていう。お金がかかってる分、ライブのクオリティは高いんだけど、私たちはあゆの声が聞きたくてライブに行ってるわけでショーが見たいわけじゃないんだよね。
――なんだか完全にあゆの独りよがりになってますね。
そうなんだよねー……でもそもそも若い子たちがあゆのことを話題にしてくれているのが嬉しいんだけど!
――実は、先日放送されたミュージックステーションに出演していたあゆが、劣化がすごいって話題になって……あ! すみません……!!
いや全然(笑)。別に私が劣化してるわけじゃないので(笑)。
むしろその通りだと思うし。やっぱり若い子たちに受け入れてもらえるようなあゆになって欲しいな。例えば松田聖子みたいな。昔は可愛く歌っていた「赤いスイートピー」を今は綺麗に歌い上げるみたいな。上手にシフトチェンジして欲しかったな。
――確かに、今のあゆってなんだか年齢にあった働き方をしていない気がしますね。
そうなるとライブとかにも若い子たちはいないんですか?
新規は少ないよね。さすがに東京は埋まっているけど、地方とかになると少し空席も目立つみたい。私ね、2006年に一回友人をあゆのライブに連れて行ったことがあるの。そしたらその友人が「こんなに歌が下手なの……!?」って言ってて、例えばさ、ドリカムのライブだったら興味が無くても行ってみたいって思うじゃない? でもあゆにはそれが出来ないんだよ。楽しませることが出来ないんだよね。すごくショックだったなあ。
それで私も一時期行かなくなったんだけど、やっぱり一回好きになっちゃうと嫌いになれなくて、また行き始めました(笑)。
あゆライブの楽しみ方は「全てを受け入れること」
――なんだか逆に行ってみたくなりました(笑)
ではせっかくなので、あゆに興味がない若い子たちでも楽しめるように「あゆライブの楽しみ方」を教えて下さい!
まず、「全てを受け入れること」と「何があっても動じないこと」かな。基本的にあゆは歌が下手なのでそれを理解して、やたら衣装替えが多くて、もはや繋ぎのダンサーを観に行っているような気持ちになるけどそれも我慢する。あとは、あゆのライブって毎回構成がほぼ同じなのね。だから過去のDVDを1本でいいから見てもらって予習して、なんならミクシィとかであらかじめネタばれしてもらって、その日のライブの曲を覚えてくるのもいいかもしれない!
――ネタばれするんですか!? ライブなのに!?
最近のあゆのライブって、もうコアファン向けになってるから新規の人じゃ知らないようなアルバム曲とか平気でやったりするの。だからついてこれないとつまらないと思うので、ネタバレした方が楽しめると思います(笑)。
――なるほど……かなり斬新なライブの楽しみ方ですね……。
では、そんな新規ファンを増やすためにも、私たち若い世代に向けてあゆの魅力を教えてください。
「ダサいまま突っ走るその不器用さを愛してみないかい?」
――(笑) 全然意味が分からないですけど、めちゃめちゃ面白いので使わせて頂きます(笑)。
そう、不器用なんだよね。でも最近は不器用ながらに素直になったかな。昔は自分の想いを伝えたりしなかったけど、最近ではSNSにそういうのを書いたりしているし。
……ただね、正直言えば、愛さなくてもいいんだ。むしろ彼女に変わって欲しい。みんなから愛されるようなあゆになって欲しいなって思います。
その昔、「側にいて愛する人時を超えて形を変えて」と高らかに歌い上げていたかつての歌姫は今、時を超えてどのような形に変わったのでしょうか。
時を超えてその時代時代に合わせて形を変え、根強い人気を博してきた他のアーティストたちのように生きることが出来なかった彼女のその姿を、ファンの女性は「ダサいまま突っ走るその不器用さ」と形容していました。
今回のインタビューを終えた今、23歳の私の中で今までただ「古くてケバイ存在」だったあゆがなんだか少し可愛く見えました。
歌唱力が少し落ちていても、上手にシフトチェンジが出来なくても、アイドルたちのように黒髪ナチュラルメイクじゃなくても、あゆはあゆなりに一生懸命「自分」を伝えようとしている。そんな姿を見ていたら、「会いたくて会いたくて震えていた自分」から「明日晴れたら会いに行ける自分」になってみようかな、なーんて気持ちにいつの間にかなっていました。そう、時を超えて形を変えて。
(文:田中七海)