日活株式会社が1971年に製作を開始した日活ロマンポルノが、今年2016年で生誕45周年を迎える。
それに伴い、新たな映像表現を獲得するための“挑戦と遊戯”の場として、BSスカパー!をパートナーとして新作の製作が行われることが以前より発表されていた。
そして2016年3月14日、リブートプロジェクトを彩る第一線の監督陣のラインナップが遂に公開!
同じ製作条件を課された監督たちが、それぞれの個性でどのような性愛の表現に挑戦するのか。
かつての日活ロマンポルノ出身である宮下順子や美保純のように、日本映画を背負うどんな女優たちが生まれてくるのか……期待が膨らむ。
完全オリジナル作品でロマンポルノに挑む5人の監督陣
塩田明彦 × バトル
師匠の大和屋竺(脚本家・監督)にたたきこまれた脚本術で、神代辰巳監督をリスペクトしながら奔放な女と翻弄される男の躍動感あふれる駆け引きを軽妙に描く。塩田監督の原点回帰作にして新境地。
白石和彌 × 社会派
『凶悪』『日本で一番悪い奴ら』に続く渾身の社会派作品。現代社会を生きる女たちをジャーナリスティックな視点で描き、田中登監督のロマンポルノ作品『牝猫たちの夜』(72)にオマージュを捧げる。
園子温 × アート
極彩色のファンタジックな世界で、少女の妄想と現実が入り乱れる。自由を求めて表現の壁をぶち壊す、アナーキーで過激な美しき問題作を発表予定だ。
中田秀夫 × レズビアン
日活に入社し、助監督としてロマンポルノの現場で学ぶも、今作で初めてロマンポルノを監督する。師匠・小沼勝監督へ敬意を込め、旧作の魂を継いだレズビアンの世界に挑む。
行定勲 × ロマンス
ラブストーリーの名手・行定勲が今まで描き切れなかった愛の本質=性愛にロマンポルノで挑む。『贅沢な骨』から15年、切なく官能的な大人の愛を描く、入魂の一作。
国内からも世界からも注目される第一線の監督陣の中から、これまでロマンポルノを撮ったことのない監督に依頼。
ロマンポルノという歴史をもつレーベルの中で映画を撮ってみたいという監督、ロマンポルノで活躍した監督や俳優らを尊敬する監督、大胆な挑戦をものともしない女優を起用して映画を撮りたい監督など、日本映画界を牽引する5人の演出家が集まった。
そのうち、塩田明彦監督、園子温監督、中田秀夫監督は1961年生まれの54歳。ロマンポルノ製作開始時には10歳で、多感な青年期に、ロマンポルノの名作に出会った世代だ。
行定勲監督は、ロマンポルノにも造形が深いこともあり、このリブートプロジェクトに参加した。
今回の監督陣の中では最年少となる白石和彌監督は、中村幻児監督や若松孝二監督の元で多数のピンク映画製作に関わり、その手腕が期待されている。
5人の監督が、同じ製作条件で表現を競い合う!
新作プロジェクトのルールは?
ロマンポルノの1971年当時の製作条件を、現在のフォーマットに置き換えるものの、一定のルールの中で撮影するというロマンポルノの特質を新作製作においても受け継いでいる。
具体的にはロマンポルノの定番ルールである、「10分に1回絡みのシーンを作る」、「作品の上映時間(70分~80分前後)」などのほか、製作面では、「全作品が同じ製作費」、「撮影期間が1週間程度」という条件だ。
新作プロジェクトの新しい条件として、これまでにロマンポルノを撮ったことがない監督のオリジナル作品であることが追加されている。
そもそも日活ロマンポルノとは?
「日活ロマンポルノ」は、日活が1971年に打ち出した当時の映倫規定における成人映画のレーベル。
「10分に1回絡みのシーンを作る、上映時間は70分程度」などの一定のルールと、製作条件を守れば比較的自由に映画を作ることができたため、チャンスを与えられた若手監督たちは限られた条件の中で新しい映画作りを模索した。
作品への情熱と、助監督として培ってきた技術と経験で、さまざまな「性」の表現に立ち向かっていった日活ロマンポルノ。
男性向けに作られながらも、女性とその生き様を深く美しく描くことを極めていったことも特徴的だった。
製作終了した1988年までの17年間に、約1,100本もの作品を継続して公開し続けた結果、映画史において、最もセンセーショナルな作品レーベルとして、現在も国内外で高く評価されている。
今、なぜ新作を製作するのか?
日活からのメッセージ
日活は、1971年に、男性に向けて”裸の物語”の製作を開始。センセーショナルな表現で性という人間の根源を描き、社会現象となりました。それは計らずも映画の新しい表現への挑戦の場となり、男女の新しい価値観も生み出しました。 2015年の現在、人間の根源である性ついて、男性・女性ともに考え、語られる時代になっています。しかし、それを堂々と表現することは、未だタブー視されています。日本のマスメディアが放送内容に関して自主規制を厳しくする一方で、猥褻な画像や映像はインターネット上に溢れています。公の場での表現が規制された時、それを補ってきたのが映画でした。パソコンやスマホから容易に入手できる猥褻な情報に”ロマン”は皆無です。このように性の表現が二極化する中で、日活は再び<裸を題材にした人間の本質的なドラマ=”裸の物語”>をつくることに挑戦します。男性も女性も等しく楽しむことができるエンターテイメントとして、新しいロマンを生み出します。
手法は違えど、今までも“人間”を生々しく描いてきた5人の監督たち。
今の日本映画を作ってきた名匠たちの“裸の物語”は、いまの日本のエンタメ界に、前代未聞の刺激を与えてくれるはずだ。
“エロ”や“イロモノ”を期待して劇場に行った若い観客が、いい意味で度肝を抜かれ、“人間という生き物”について考えさせられる瞬間が楽しみで仕方がない。
また、2016年の日活ロマンポルノが上映される劇場はリニューアルした新宿武蔵野館とのこと。2つの意味で映画ファンにはうれしいニュースに、今冬が待ち遠しい。
(文:ソーシャルトレンドニュース編集部)
■関連リンク
・日活ロマンポルノ公式サイト