先日発表されたトレンド総研のレポートによると、何かを買うときに、例えば「内容量○%増量」や、「有効成分○倍」といった“数字”を見る人は8割にも上るんだとか。
かく言う私もそのひとりで、例えばちょっと元気が出ないときによくお世話になる栄養ドリンク。連日の疲れが響いていたり、風邪気味だったりするとなおさら、早く効くものがほしいと「有効成分1,000mg配合!」と力強く謳っているものに惹かれてしまいます。似たようなところで言うと、少しでも栄養を摂ろうと、コンビニで野菜ジュースのビタミンの量を見比べて、多そうな方を選んでいる人もきっといるはず…栄養ドリンクだったり薬だったり、化粧品なんかも、有効成分の量が多ければ多いほど効きそう!良さそう!って思いますよね。
でも、冷静になって考えてみると、「有効成分1,000mg配合!」って、数字の「1,000」のせいですごく多そうに見えても正味1g。「有効成分 1g配合」って見ると、急に少なく見えるのは“数字のマジック”ってやつでしょうか。だまされているわけではないけれども、なんだか「思ったのと違った」気分になる不思議…
こうした“数字”の使い方に詳しい、中央大学大学院 客員教授の朝野煕彦氏によると、“数字”自体には客観性があって、それが説得力につながるために、それぞれの“数字”がどれだけメリットになるか分からなくてもつい買ってしまう消費者は多いそう。企業としては、商品の特長を最大限に打ち出すために工夫を凝らした“数字”を活用しているわけですが、消費者はこの“数字”が意味するところではなく、その印象に影響を受けやすいとコメントしています。
巧みな“数字のマジック”は日常のあらゆる商品の中に潜んでいて、思わずなるほど!と唸ってしまうのが、朝野氏が挙げた「貼り薬」の例。例えば、新しく出た貼り薬のパッケージに、「有効成分の濃度が2倍!」とあったら……先の野菜ジュースのビタミンの話ではないですが、ついついこれまでの貼り薬より効きそうだと思っちゃうのが人の性じゃないでしょうか。ここが“数字”の落とし穴なのです。
そもそも貼り薬の場合、薄いテープタイプや厚みのあるシップタイプなど、タイプごとに単位面積あたりの有効成分の含有量が定められていて、好きなだけ入れられるものではありません。「同じ形態の貼り薬の場合、貼り薬の大きさが変わらないのであれば、効き目の強さ(大きさ)を決めるのは、有効成分の含有量」であり、「『濃度が2倍』とあったとしても効き目が2倍になるわけではなく、変わらない」(同氏)のだそう。
つまり、まったく同じタイプで、有効成分の量まで同じ貼り薬があったとして、片方に「濃度2倍」と書かれていた場合、それに“マジック”がかかっているのです。マジックを解く鍵になるのは、「濃度」というワード。1枚あたりの有効成分量は同じまま、それ以外の材料を半分にすれば、必然的に「濃度(割合)」は2倍になるというロジックです。
解き明かしてみるとシンプルで、これまで有効成分の量の“数字”を目安に買っていた自分が恥ずかしくなりますが…少し目線を変えてみるだけで、ちゃんと理解した上で買える、そして、そもそも買うときに迷うこともなくなりそうですよね。特に例に出ていた貼り薬もそうですが、しっかり効果が出てほしいものに関しては、きちんと選んでいきたいものです。
「数字は嘘をつかない」と言われますが、 “数字”自体は正しくて、それを見る目が養われているかどうかがポイント。その“数字”が生まれた背景を少し想像すると、こうしたマジックに嵌ることも少なくなって、賢い買い物ができるようになるのかもしれません。
※参考リンク:
トレンド総研 「消費者のモノの選び方」に関するレポート