フジテレビが一時期の低迷を脱しつつある。
7月〜9月期の連続ドラマ『HERO』『昼顔』が大ヒット。『HERO』のヒットに比例するように、『SMAP×SMAP』の視聴率も上昇。最近になって、『とんねるずのみなさんのおかげでした』『めちゃ2イケてるッ!』という長寿番組の数字も回復中だ。
そして、10月の改編では、タモリ司会のトーク番組『ヨルタモリ』、フリーになった田中みな実アナ司会の『ニュースな晩餐会』といった目玉番組が始まる。このまま、かつての勢いを取り戻せるのだろうか。
最近ではゴールデン帯やプライム帯の視聴率で、首位を獲得する日もある。日テレの独走状態だった数ヶ月前から考えれば、フジが盛り返してきた印象だ。しかし、全日帯ではなかなか勝てない。
たとえば、9月16日(火曜)、フジはゴールデン帯14.2%、プライム帯12.7%で首位に躍り出た。日テレはゴールデン帯10.1%、プライム帯10.3%でいずれも民放2位。
これだけ離していれば、通常は全日でもフジが首位になるはず。しかし、全日で見ると、日テレが7.8%で首位。フジは7.2%で民放2位に終わっている。
『HERO』の最終回だった9月22日(月曜)は、ゴールデン帯15.4%、プライム帯16.3%と他局を圧倒して、堂々の首位。2位は、ともに13.1%の日テレだった。しかし、全日帯では同じ8.4%で、首位を分け合う形になってしまった。
テレビ界で重視されるゴールデン帯やプライム帯で圧倒しているのに、なぜ、全日帯になると追い抜かれてしまうのだろうか。
『バイキング』から『スーパーニュース』までの午後帯の視聴率が足を引っ張っているのだ。いくらドラマが当たったり、バラエティが復活したりしても、毎日放送する帯番組が悪ければ、全日視聴率で勝つことは難しい。フジの場合、『めざましテレビ』『とくダネ!』『ノンストップ!』までは好調で、同時間帯1位を取る日が多い。
それに反して、午後帯は他局に大きく引き離されてしまう。『バイキング』の不振に合わせて、後番組『ごきげんよう』も数字が落ちている。
そして、14時から約3時間もドラマを放送し続ける編成には、首を傾げざるを得ない。13時30分からのいわゆる昼ドラを含めれば、4本連続ドラマだ。
家にいる主婦が午後帯に、3時間半もドラマを見続けることは考えづらい。買い物に出かけることもあれば、夕飯の準備もしなければならない。その時間帯に、集中力の要するドラマを4本も見ることは、よほどのセレブでもない限り無理だろう。主婦ではなくても、3時間半連続でドラマを見る人は稀だ。
そもそも、ドラマを見たいなら、DVDをレンタルしたり、CSで好きなドラマの連続放送を見たりするはず。わざわざ、地上波のドラマにチャンネルを合わせる人は少ないのだ。
このような生活習慣からしても、午後帯は“ながら見”のできる情報番組が適している。日テレの『ミヤネ屋』が圧倒的に強いのもうなずける話だ。
一昨年と昨年、フジは『知りたがり!』『アゲるテレビ』という情報番組を放送していたが、低視聴率で打ち切りに。ドラマ枠に戻したが、数字は芳しくない。その影響が『スーパーニュース』にも出てしまっている。
午後帯の低迷は連綿と続いているのだ。
『バイキング』『ごきげんよう』は、なかなか結果に結びつかないものの、視聴率回復に向けて、新企画を打ち出している。一方で、14時からのドラマ再放送枠には、特に工夫が見られない。
情報番組『知りたがり!』が始まる以前、00年4月から12年3月までフジテレビの午後帯は、時間の長短はあれ、ドラマ再放送枠だった。長いときは今のように約3時間にわたり、ドラマを流していた。05年から09年にかけての出来事である。当時、フジテレビは視聴率3冠王を獲得している。
この成功体験に基づいたのか、情報番組が失敗に終わると、フジはドラマ枠に戻した。
しかし、この試みは前述のように成功しているとは言い難い。
11年の地デジ化で、BSの普及率が一気に高まった。
ビデオリサーチの「BS世帯普及率調査」によれば、BSデジタル放送視聴可能世帯は09年の50.4%から13年の72.4%までに上昇している。来年3月のデジアナ変換終了予定に向けて、その数字はさらに上向いているだろう。
05年〜09年当時は地上波しか観られない視聴者も多かった。しかし、今は無料でBSを観られる時代なのだ。その点を忘れてはならない。
ドラマの再放送をただ垂れ流しても、視聴者がついてくる時代ではないのだ。
いくらドラマやバラエティがヒットしようとも、平日14時からの3時間連続ドラマを止めない限り、フジテレビの全日帯視聴率上昇はありえない。ドラマは1時間程度なら効果があるが、3時間はさすがに長過ぎる。
たとえ苦戦が予想されても情報番組で勝負をするのか。それとも、新機軸を打ち出すのか。10月改編ではイジらなかったが、今すぐにでも変えるべき枠なのである。