SNSは個人の情報発信のツールとして広く活用されている一方で、マーケティングにも利用されています。
140文字で想いを伝えたり、インフルエンサーに協力してもらって画像から世界観を伝えたり……。その手法は実に様々です。でも、様々だからこそ、SNSマーケティングを生業にする人たちには思うこともあるよう。
そんな思いを語るべく、20代のマーケターたちが集まってディスカッションを開催。ソーシャルトレンドニュース編集部は、会場にお邪魔し、お話をうかがうことに。
昨今のSNSマーケティングについて白熱の議論が交わされる中、特に注目されているインフルエンサーについてを抜粋します。
20代マーケターが本音で語る!今とこれからのSNSマーケティングについて
登壇したのは、Twitterでも実名を出し情報の発信をしている以下の3名です。
■金濱 壮史さん(@Kanahama)
アライドアーキテクツ株式会社SNSマーケティングプランナー。エンタメをはじめ、金融や官公庁など大手顧客のSNS戦略を支援している。
■戸高 純さん(@junpo_po)
株式会社N.D.Promotionにて、女性メディア『Nomedeplume』の立ち上げおよびマネタイズを担当。直近では胸キュンTwitterドラマ『とけないで、サマー』をプロデュースするなど、ミレニアルズに向けた広告商品の開発も行っている。
■小東 真人さん(@gxsoc_kohigashi)
ガイアックスにて『ソーシャルメディアラボ』の編集長を務めるかたわら、スポーツチームや食品、金融業界などのSNSコンサルも行う。
ファシリテーター:福間 昌大さん(@fukuma_1023)
テテマーチ株式会社SNS戦略室室長。対企業向けにSNSマーケティング・若年層マーケティングの企画・戦略立案を担当している。
今の日本にインフルエンサーはいない!?
乱立する「ニコパチ」問題
福間さん:インフルエンサーを活用した案件でよくあるのが、「ニコッとしてパチっと撮る」の略称である「ニコパチ」。これについてはいかがでしょう?
戸高さん:いいものと悪いものがあると個人的には思っています。最近、進化した「ニコパチ」というのが出ているんですよ! お洒落な屋外へわざわざ行って、一眼レフなどで商品を持って撮影する。インフルエンサーとしてはお洒落な空間の方がエンゲージは望めるので、そういった理由から進化しているんだと思います。
小東さん:「ニコパチ」って企業からオーダーするものなんですか?
戸高さん:多くがそうですね。一般的にInstagramは、本人の顔が映っているものの方がエンゲージが高いといわれているんです。企業的にはエンゲージが高い投稿をして欲しいから、「ニコパチ」のオーダーが増えるんだと思います。
インフルエンサーの次のフェーズ
金濱さん:先日、weiboで700万人くらいのフォロワーを抱える中国のインフルエンサーにお会いしたんですけど、その事務所の方が「日本のインフルエンサーマーケティングは3年遅れている」とおっしゃっていました。マネタイズの仕方が違うそうなんです。彼女たちは自分たちの影響力を使って、案件じゃなくて物販ができる、と。
戸高さん:日本のインフルエンサーは、広告塔としての投稿案件が多いのが現状です。最近はInstagramを活用して自分のブランドを持つ人が徐々に出はじめています。でも、フォロワーの数が多いからといって成功するわけではない。熱量とビジネス視点でのセンスがすごく影響するんです。
金濱さん:まさに、同じようなことをその方もおっしゃっていました。中国でインフルエンサーとして成功するには、顔が可愛いよりも、マネジメント能力が必要だと。ちゃんと自分のオピニオンがあるかどうかが求められるらしいんですよね。そこにカリスマ性があるから、フォロワーは共感者。だから、何かを発信した時にモノが売れるそうなんです。
戸高さん:フォロワーのつき方がそもそも違いますもんね。ただ可愛くて数万フォロワーを集められた人もいれば、身近感を利用し、発信の方法を考えて数万フォロワー獲得した人もいる。後者の場合は、そこを起点に、じゃあ何かやろうってなった時に強い。ちゃんと自分で考えてコンテンツをプロデュースしてきた人は、しっかり横展できる傾向があるように思います。セルフプロデュース能力はめちゃめちゃ大事。
1,000フォロワー以下は本当にダサいのか?
福間さん:その文脈でいくと、小東さんもある意味インフルエンサーですよね。
小東さん:革靴のことですね。最近、SNSの情報発信に関わっているのにフォロワー1,000人以下はダサい、みたいな風潮があるじゃないですか。それを見ていて、僕自身もちゃんと発信力をつけなくちゃと思ったんです。そこで自分は何の分野ならオピニオンリーダーになり得るのか、改めて好きなモノを考えた時に、学生時代に4年間やっていた革靴の販売員が思い浮かびました。革の手入れ方法には自信もあったので、そういった情報を革靴専用のTwitterアカウント(@k_leather_lover)やnoteで発信していったんです。そしたら、こいつ面白い投稿しているなって、たまたまあった“革靴クラスタ”の人たちに広まって、オフ会に呼ばれるようになりました。そこから話が進み、ファッションブロガーさんとコラボして限定30個で靴磨きセットを販売したんですが、2週間で完売。当時のTwitterのフォロワー数はせいぜい600人くらいでした。この体験を通して、インフルエンサーの定義って何だろう?と考えるようになりましたね。何万人の人に届ける拡散力はないけれど、たしかに僕の発信で影響を受けてくれている人がいるわけなので。
金濱さん:これまでのインフルエンサーってフォロワー数の1軸でキャスティングしていたじゃないですか。それにもう1軸加わって、カテゴリへの詳しさや好き度、ブランドへのロイヤリティなどを掛け合わせてキャスティングしていかないとモノは売れないということですね。
今のインフルエンサーはインフルエンサーじゃなく……
福間さん:今一般にいわれているインフルエンサーって、インフルエンサーじゃなくてディフュージョナー=拡散者かなって思っているんです。インフルエンサーって本来、受け手に影響を与えるものじゃないですか。だからフォロワーが300人でも、その人がいいよ!といったものが300人にちゃんと影響を与えるのであれば、その人はインフルエンサーだし、そこまでの影響力はないけど、フォロワーは1万人いるから情報を拡散できるっていう人はディフュージョナー。それが今後のインフルエンサーマーケティングにおいて重要な境界になるんじゃないかと思います。
20代マーケターが本音で語る!今とこれから
20代の彼らは、世間でいわれると頃の“デジタルネイティブ”世代。その上、仕事の上でも日々SNSに触れる、アーリーアダプターです。
ただトレンドに流されるわけではなく、本当の意味で企業のためになることは何なのか、真摯に考えている姿勢が伝わってくるディスカッションでした。
こういったマーケターが多くいるのであれば、日本のマーケティング市場もまだまだ明るいといっても過言ではありませんね!
(文:あまのさき)