J-POP、洋楽、クラシック……どれも好きなんだけれど、最近なんとなく既存の音楽シーンには食傷気味……と、いう方!そんな方には是非、「ゾンビ音楽」をオススメします。私が初めてゾンビ音楽という言葉を聞いたとき想像したのは、ゾンビのうめき声で構成された音楽だとか、止めても止めても再生される音楽だとか、かなり怖いイメージのもの…。でも実際のゾンビ音楽は、一度聴いたらなんだかクセになってしまう、と~っても不思議な音楽だったのです!
なにはともあれ、まずはその「ゾンビ音楽」を収めた映像をご覧ください!
そう、ゾンビ音楽とは、コンピューターで制御する機械部品の指でリコーダーを演奏するロボットの音楽のことだったのです!作家の安野さんいわく、「ロボットで音楽をしようとしたら、人間のように人間の音楽(聴き慣れた音楽)を演奏するロボットを目標にしてしまうものですが、僕のロボットはそうなりませんでした。人間のようにはならなかったので、ゾンビと名づけました」とのこと。なるほど、ゾンビ音楽という名にはそんな所以があったのですね。
映像を見て頂けると、ゾンビ音楽を演奏する装置はかなり大掛かりであることが伺えます。
視覚的にもかなりかっこいい。
演奏が始まると、ソレノイドと呼ばれる機械部品が演奏を始めます。
指先だけが動く様子はかなり異様な光景…。
そして4つのリコーダーがセッションしていきます。
ただその音色はかなり気の抜けるような独特な旋律。聞いているとクセになってきてしまうというか……見たことのない世界に誘われるような本当に不思議な感覚です!この「人間味のなさ」はまさにゾンビ音楽といった感じ。
ところで、こちらのゾンビ音楽の作家である安野太郎さんとはどのような方なのでしょうか。
安野太郎さんは1979年生まれで、日本とブラジルのハーフ。東京音楽大学の作曲科を卒業し、情報科学芸術大学院大学を修了していらっしゃいます。いわゆるDTMやエレクトロサウンドとしてのコンピューター・ミュージックとは違う軸でテクノロジーと向き合う音楽を作り発表してきた方で、ゾンビ音楽は2012年から取り組んでいるテーマ。2013年には、ゾンビ音楽が第17回メディア芸術祭アート部門審査委員会推薦作品になり、楽曲「Quartet of the Living Dead」が第7回JFC作曲賞(日本作曲家協議会)を受賞しています。また、2ndアルバムである「カルテット・オブ・ザ・リビングデッド」は今年の文化庁芸術祭のレコード部門に参加しています。まさに芸術界注目株!
そんなゾンビ音楽、生で聞いてみたいという方は、予定されているライブに是非足を運んでみてください。最近出来あがったという新編成の演奏をいち早く聴けるというだけでなく、掃除機のルンバとゾンビのコラボレーションが見られる機会まで!一見の価値ありです!
以下ライブと展覧会の予定です。
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【ライブ】
12月21日 『音楽の展覧会』
日本大学芸術学部江古田校舎 11:00-12:30
ゾンビ音楽のデモ演奏。最近出来あがったフルートとクラリネット、サックスのゾンビ音楽とルンバ+ゾンビの演奏を発表。
フライヤー画像はこちら
12月22日 『パフォーマンス東京』
六本木CUBE 開場18:30 開演 19:30
入場料 2000円 +1ドリンク
作曲家の野澤美香さん主催のイベントで、フルートとクラリネット、サックスのゾンビ音楽を発表。
【展覧会】
11月23日~30日 OPAMIC PNEUMA -風の挨拶-
大分県立美術館 OPAM
電子音響をバックに、ルンバとゾンビ(自動演奏の縦笛)が合体した作品を大分県立美術館OPAM開館イベントで初披露します。もしかしたら会期中に動き回るかも知れないとのこと!
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また、ライブに足を運ぶのが難しいという方は、11月9日に京都で行われたソロ公演『死の舞踏』のライブ音源の配信を待ちましょう!リリースは2015年1月が予定されていますのでお楽しみに。
ちなみに、ルンバとゾンビのコラボレーションってなに……?って思った方へ、画像を用意しましたので最後にご紹介します。
自動でお部屋を掃除してくれると名高い、ルンバ。なんとその背にゾンビリコーダーが積載されています!これはメディア芸術クリエイター育成支援事業により制作をサポートされているプロジェクトで、プロトタイプが一台完成したばかり。これから開発を進めて、ゆくゆくは複数のゾンビルンバが徘徊する光景が見られるとか!
リコーダーの旋律と共に移動していくルンバ……そのシュールな様子、絶対に見てみたいと思う一方で、どうしてこれを思いついたんだろうという疑問で頭がいっぱいになりました(笑)。
これからどんな進化を遂げていくのか、目の離せないゾンビ音楽です!
(文:ノリコ・ニョキニョキ)