○消えるトークアプリって知ってる?
突然ですがみなさん、TonTon(トントン)というアプリを知っていますか??

TonTonはCocone社が開発したトークアプリ。
LINEなど既存の他アプリとは違い、メッセージを読んで一定時間がたつとメッセージが自動的に消去されるのが大きな特徴です。
海外ではこのような“消えるトークアプリ”が徐々に市民権を獲得しつつあるらしいのですが、日本での認知度はイマイチ。
しかし、このTonTon、一部の人々にはすでに熱い支持を受けているそう。
その“一部”とは浮気や不倫をしているカップル。
メッセージが残らないので、浮気の証拠が残らないからなんですって!
○浮気してみよう!
というわけで私もTonTonを使って浮気してみることにしました!
早速、彼女に浮気してもいいか頼んでみます。

「あのさ、次TonTonってアプリの記事を書こうと思ってるんだ」

「そうなんだ。いいじゃん」

「でね、そのアプリ、メッセージを読んだら自動的に消去されるんだけど」

「へえ。面白いね」

「それでさ、TonTonのその性質を使って浮気に使ってる人がいるって噂を聞いたんだ」

「証拠が消えるんだもんね。浮気に使えそう」

「だから、僕も記事のために自分でそれを体験してみようと思うんだ。というわけで、一日だけ浮気してもいい?」

「いいわけないだろ。バカじゃないの」

「あ、やっぱり……」

「当たり前じゃん。そんなことが許されるわけねえだろ。ついに頭おかしくなったのかって感じ」

「す、すいません……もうバカなこと言わないので許してください。この澄みきった目を見て」

「まあいい。許す。目は思いっきりにごってるけどな」

「ありがと……最近、編集長にずっとPV数PV数って言われてて、追い詰められたみたいだ。WEBライターってさ、ほんと原稿料安い大変じゃん? だから、目を引けそうな無茶苦茶な企画ばかりやっててさ……」

「……」

「今回のアイデアもね、別に君を傷つけたくて考えたわけじゃないんだ。僕はただ、みんなに喜んでもらえる記事にしたいだけで」

「……んー、まあ色々事情はあるもんね。わかった!じゃあ条件つきでならいいよ」

「えっ、いいの!? なにその条件って!?」

「相手が男ならいいよ」

「……え?」
○3月1日・13時30分(日曜日・雨・最高気温6℃)

こんにちは。今日は横浜にやってきました。
浮気相手とは13時30分にみなとみらい駅改札前で待ち合わせ。
ほぼ時間通りに相手が来ました。

(浮気相手プロフィール)
・名前⇒だいすけ
・年齢⇒23歳
・彼女いない歴⇒半年
・TonTon使用歴⇒1日
・その他の情報⇒金融関係の仕事をしている。今回のことが会社にバレたらヤバいかもしれない。
はい、私の男友達です。
「それってただ友達と一緒に遊ぶだけじゃないの」という声が聞こえてきそうですが無視します。本人が浮気というんだからこれは浮気です。
さて、今回の横浜浮気デートですが、待ち合わせ場所決め等のやり取りはすべてTonTonで行っていました。

(※だいすけくんには女子っぽく振る舞ってもらってます)
相手が自分のメッセージを読んだら、時刻の隣にチェックがつきます。
そして、メッセージ開封から一定時間がたつと……

こんな風に消えて読めなくなってしまいます。上にスクロールしようとしてもできません。

つまり、こんな感じで甘い愛のセリフを送っても、すぐに消えてしまうというわけ。
一瞬一瞬を楽しむことが大事なんですね。

また、TonTonではスクショをすると表示される仕組みになっています。

相手から見るとこんな感じ。
(浮気)相手が勝手にスクショしても、この機能があれば証拠が残る危険性もありませんね。
なんて使い勝手のいいアプリなんでしょうか!

というわけで横浜浮気デートの開始です。レッツゴー!

○14:00(赤レンガ倉庫)

「赤レンガ倉庫に来ました」

「横浜デートの定番スポットだね」

「そうですよ。だってこれデートですもん。しかも浮気ね」

「なるほど。普段、岡本がどんなデートをしてるのかわかるってことか」

「やめろよ恥ずかしい」

「てか俺、赤レンガ倉庫はじめて来たわ」

「本当に? 神奈川県民なんでしょ」

「(ああ、なんで岡本と来てんだろ……)」

「言葉にならないうめき声はやめてください。心を強く持つように」

「……」

「しかし、さすが横浜。雨といえど、カップルが多いね」

「相合傘してるカップルがたくさんいるね」


「おい、どうした」

「ごめん、一瞬我に返ってた」

「心を強く持てってさっき言ったじゃん」

「……中に入りましょう」
********


「帽子屋さんに来ました。ここでは試着したりして『どうかな?変じゃない?』『ううん、似合ってるよ』なんて言ってカップルっぽくじゃれてみましょう」

「おお、なんかデートっぽい」

「デートなんで。もっと緊張感とドキドキ感と背徳感をもってください」

「……」

「この帽子、かぶってみれば? 似合うと思うよ」

「黄色かあ。似合うかなあ」

「意外と似合ってるかも」

「うん、似合ってる。やっぱり元がいいとなんでも似合うよね!」

「(こいつ、普段こんな風に女子を褒めてるのか……気持ち悪いな……)」
********


「昼食を食べましょう。私のオススメはこの洋食屋さんです」

「オムライス食べたい」

「私はカツカレーにしました。早く食べたいところですが、ここではカップルっぽく写真を撮ってみましょう」

「なんでもいいから早くしてくれ」

「今回、浮気デートにあたってこんなものを買ってきました」


「セルカ棒、通称“自撮り棒”です。リア充必須のアイテムですね」

「もはや浮気関係ない気がするぞ」

「早速撮影してみましょう」


「三回目のチャレンジでうまく撮影できました。『ちゃんと写ってる?』『もっとこっち寄って!』というやり取りがデートっぽくて非常に良かったです」

「ありがとうございます」

「では、この写真を共有しましょうか」

「そうだね、じゃあせっかくだからTonTonに送って……」

「ちょっと待った!TonTonは画像も一定時間たつと消えてしまうんですよ!」

「急に大きな声出すなよ」

「まあすぐに保存すれば問題ないのですが、しかし、そもそもそのまま保存してしまうこと自体が危険です。こんな写真、彼女に見られたらなんて言われるかわかりません」

「(設定に入り込んでる……)」

「というわけで、浮気相手との写真は“鍵付き写真アプリ”で管理しましょう。フリーのアプリもたくさんあります」

「了解しました。今後のために覚えておきます」
○15時(ワールドポーターズ)

「ワールドポーターズに来ました。コールドストーンクリーマリーでアイスを食べましょう」

「もう帰りたいです」

「浮気デートの場合は周りに注目されない方がいいので、店員さんに『歌を歌ってもいいですか?』と聞かれても容赦なく断りましょう」

「冷たいね。アイスだけに」

「……」

「もぐもぐ」

「どうですか? 美味しいですか?」

「寒いです」

「喜んでもらえたようで嬉しいです」

「……」

「……あれ、電話かかってきたぞ。誰だ……うわ、彼女だ!」

「う、うん。今? あ、ちょっと取材で横浜に来てる……え、なんもないよ。うん、じゃあね、はーい……ふー、危なかった。あやうく浮気がバレるとこでした。女の勘、あなどれません」

「いやいや、彼女今日のこと知ってるから。むしろなんでごまかしたんだ」

「でも、この“バレるかバレないかのスリル感”にみんな夢中になるんでしょうね」
○15時25分(イオンシネマ)


「最後に映画を観ましょう。カップルっぽいですし、なにより映画を観ている最中は誰かに目撃される危険性がないので浮気にちょうど良いです」

「映画館とか一年半ぶりくらいだわ……なんで男と……」

「私を責めるような目で見るのはやめてください。さて、今回はデートムービーを選びました」


「テラスハウスです。10代、20代女子に絶大なる人気を誇る番組なので、デートには最適でしょう」

「テレビ一回も見たことないわ」

「……あらま」

「デートなんだったら相手の好み調べとかないと」

「……」

「寝ないのが目標だな」

「……」
……… 二時間後。

「大変面白かったです。そして、とてもむなしい気持ちになりました」

「正直ナメてたけど、普通に面白い。そして、今すごくむなしい」

「おたべさんに感情移入しちゃいました。むなしいです」

「なんでこんな恋したくなる映画、俺は男と観に来たんでしょうか」

「浮気ってこんなにむなしい気持ちになるんですね」

「この場合は特殊だと思う」

「やっぱり、浮気は良くないですね。浮気以外の目的でTonTonを使いたいと思いました!」

「そんな雑なまとめ方でいいのか」
********
いかがだったでしょうか。
実際に浮気をしてみて思いましたが、このTonTonというアプリは本当に使い勝手がいい!
まさに浮気向きアプリです!
“読んだら消える”ので証拠が残らないし、普段なら言えないような甘い甘い言葉も言えちゃうところもいい。
皆さんも、このアプリを使って愛を深めてみてはいかがでしょうか?
でも、やっぱり浮気はやめといた方がいいけどね!
※この作品は基本的にフィクションです。
(文:岡本拓)