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五木ひろしがノリノリ 田原俊彦の曲をタップ踏みながら熱唱し番組カオス状態に

シエ藤

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シエ藤

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昨今、テレビ番組がつまらなくなったと言われて久しい。たしかに、地上波の総世帯視聴率は減少しており、テレビ離れは進んでいるのかもしれない。しかし、まだまだ面白い番組があることも事実である。

特に、BS の場合、毎日視聴率という数字に追われる地上波と違って、視聴者を気にしすぎることなく、ゆったりとした番組作りができる。

今回、私は、BS朝日『日本の名曲 人生、歌がある』(水曜19時〜20時54分)というお宝コンテンツを発見してしまった。
五木ひろしを司会に据え、演歌勢を中心に2時間たっぷり、歌で魅せる番組だ。

そもそも、“五木ひろし司会の演歌番組”という発想自体、地上波のゴールデン帯では生まれない。もしも会議で、「五木ひろしの司会で、レギュラーの歌番組をやりましょう」と提案したら、空気は凍り付き、桜庭あつこがリングに上がったときのような罵声が飛び交うだろう。

この番組には、BSらしさが存分に現れている。
現在、地上波の歌番組はあまり視聴率が取れず、特に歌唱中に毎分視聴率が下がる傾向にあるそうだ。しかし、この番組はフルコーラスでの歌唱が目立つ。また、80年代の音楽番組のようにフルバンドが演奏する。余裕の感じられる作りだ。

目玉コーナー「TRIBUTE TIME」では、時間を特にじっくり掛けている。本人が椅子に座っている横で、ほかのゲスト歌手がご本人の曲をフルコーラスで歌うのだ。

たとえば、八代亜紀にスポットを当てた回では、「雨の慕情」を川中美幸が、「舟唄」を五木ひろしがカバー。このように、今まで基本的には演歌歌手の曲を、ほかの演歌歌手が歌うというパターンがほとんどだった。

だが、6月3日は異変が起こった。五木と親交の深い田原俊彦が出演し、「TRIBUTE TIME」でスポットを当てられた。田原の曲は、いわゆる歌謡曲。これを五木ひろしなどの演歌勢がカバーする。今の地上波では、絶対に観られない構成だろう。
以下が、田原の曲とカバーした歌手の名前である。

「哀愁でいと」岩本公水&原田悠里

「ハッとして!Good」黒川真一朗

「恋=DO!」榊原郁恵&早見優

「さらば…夏」布施明

「夏ざかりほの字組」五木ひろし&小林幸子

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岩本公水&原田悠里、黒川真一朗の演歌勢は意外にも違和感なく、耳に馴染んだ。榊原郁恵&早見優は80年代、田原と何度も共演しており、画面からは懐かしさが漂った。

その空気を一変させたのが、布施明だった。舞台の照明が夕日色に変わると、下手奥からゆっくりと登場。ここまでは、何気ない普通の光景だった。
だが、最初のフレーズを歌い出した瞬間から、様相が一変した。

布施は、曲のテンポにほとんど合わせることなく、フェイクをかけながら歌う。一小節が終われば、次の一小節もまた……絶え間なく“布施節”で歌い続けた。
なんという違和感。

パンに例えれば、カレーパンの中身にジャムばかり入っているような状態だ。
要するに、表面上は田原俊彦の曲だが、完全に布施明の持ち歌のようになっていた。

最初に覚えた違和感は、徐々に快感に変わり、私は布施明ワールドに引き込まれてしまった。
二日酔いで就寝中の横山やすしが飛び起きるほどの声量。松野明美並みにしつこいビブラート。三遊亭好楽のうまい答えと同じくらいの確率で出るファルセット(あくまでたまに)。
“布施ワールド”は全開だった。

布施が無駄に(失礼!)ビブラートを効かせ終わると、舞台後方から五木ひろしが小林幸子とともに登場した。五木は、なぜか「ヘイ!」「ヘイ!」と叫んでいる。

ノリノリだ。

いつも深刻そうに歌っている(気がする)五木が「ヘイ!」「ヘイ!」とノっているだけで、目が離せなくなる。
布施に負けず劣らず、五木も「夏ざかりほの字組」を完全に“五木バージョン”にアレンジしている。こぶしを効かせ、若干のフェイクをかけながら、吐息まじりに熱唱する。
ノリノリの五木は歌詞に合わせて、ドラムを叩くマネを披露。ついには、歌いながら、タップを踏む場面まで見られた。

常にしみじみしながら歌う(のかと思った)五木が、まさかのタップダンス。
ノリノリの五木に対してのアンサーだったのか、曲終了の直前、小林幸子が、なぜか小声で「オーライ」とつぶやいた。
今、地上波にこんな意外性のある番組があるだろうか。
 
もしかしたら、五木ファンにとってみれば、五木のタップダンスは当たり前なのかもしれない。もしかしたら、五木は家でいつもドラムを叩くマネをしているのかもしれない。だが、見慣れていない視聴者にとっては、衝撃以外何ものでもない。

「ヘイ!」「ヘイ!」と叫びながら登場し、突然タップを踏む五木ひろし。原曲をほぼ無視して、気持ち良く発声する布施明(ハッセイと言っても、オリヴィアではない)。

いずれも、フルコーラスで歌ったからこその発見だった(五木のタップダンスは後半に登場)。

ゆったりとした構成のBSには、せわしない作りの地上波では観られないお宝映像が眠っている。
きっと、森川由加里もこの番組に満足したはずだ。

(文:シエ藤)

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