北海道・夕張市で開催中の『ゆうばり国際ファンタスティック映画祭2016』で、ファンタスティックオフシアター・コンペティション部門の授賞式がおこなわれた。
この部門は、過去には山下敦弘監督や(『どんてん生活』・2000年)、入江悠監督(『SR サイタマノラッパー』・2009年)など、作家性の高い映画監督を数多く輩出している。
今年、グランプリに輝いたのは、小林勇貴監督が実際の不良たちを出演させて撮影した映画『孤高の遠吠』。
そして、審査員特別賞は現役女子高生・松本花奈監督による『脱脱脱脱17(ダダダダセブンティーン)』が受賞した。
『孤高の遠吠』の小林監督は25歳で、松本監督は18歳。今後の日本映画界を背負いそうな2人がゆうばりの地で受賞を果たした。
小林監督「“きっとこうだろう”は差別」
小林勇貴監督は本作同様、本物の不良を出演者にした『Super Tandem』でぴあフィルムフェスティバルに入選し、映画界に現れた25歳の映画監督だ。
本作『孤高の遠吠』は、小林監督の友人が不良にリンチをされたという経験から、撮り始めることを決意。
いくつもの実話を繋ぎ合わせて脚本を作ったという。
完成後は、昨年のカナザワ映画祭の上映で映画ファンを中心に話題になり、元・関東連合の工藤明男氏とのトークショーはアウトロー界隈からも注目された。
また、会見では「プロの俳優を使おうとは思わなかったのか?」と聞かれると、
「例えば、不良っぽい歩き方を“きっとこうだろう”と思ってやることは差別だと感じた」と、実際の不良たちを起用した理由を明かした。
受賞した賞金200万円に関しては「これでノーギャラで出てもらった不良にいくらか握らせてあげられますね」と冗談めかしたあとで、「この作品は、不良をつかっているということで、賞をあげにくい部分もあったと思う。だから、受賞させてくれたゆうばり映画祭は“やるなあ”という感じですね」と小林流に感謝の意を述べた。
子役も経験 18歳の現役女子高生監督
一方で、審査員特別賞を受賞した松本花奈監督は今年の3月に卒業を控えた現役女子高生。
映画・テレビドラマの現場で幼少期から、役者として活動していた彼女は中学生の頃から映像を撮りはじめた。
そして、16歳の時に撮影した『真夏の夢』が高校生のための映画の祭典・映画甲子園で賞を総なめ。昨年のゆうばり映画祭にも出品された。
また、映画以外でもシンガーソングライター・井上苑子のメジャーデビューアルバムの収録曲『大切な君へ』の監督もつとめるなど、10代の新進気鋭の映像作家として注目を集めている。
今年は、昨年のゆうばり映画祭で出会ったという、同じく10代の上野遼平プロデューサーと手を組んで『脱脱脱脱17』を完成させ、ゆうばりへ戻ってきた。
現役女子高生ならではの、青春を純度100パーセントでキャッチアップできる感性の細やかさをベースに、確かな演出力と隙がないキャラクター造形が大人の心も動かした結果となった。
「メジャーでは描きづらい人々を描く作品が多い」
審査は授賞式の直前まで混迷を極めたという。
審査員のフランス人監督イブ・モンマユールは、今回のゆうばり映画祭に出品された作品について「社会におけるアウトサイダーを描いた映画が多く、日本のメジャー映画ではなかなか成立しづらいだろうものだった」と出品作品の鋭さに言及。
また、柏原寛司審査委員長は「映画は犯罪的であるべきである」という言葉で、小林監督の受賞理由を語った。
『孤高の遠吠』は、3月末に渋谷のアップリンクにて再上映が行われる予定だ。
(文:ソーシャルトレンドニュース編集部)
★ソーシャルトレンドニュースでは、後日、松本監督の単独インタビューを配信予定です!
■関連リンク
≪ゆうばり国際ファンタスティック映画祭2016≫
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開催期間:2月25日(木)~2月29日(月)
公式サイト:http://yubarifanta.com (PC・モバイル共通)
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