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『害虫』の塩田明彦監督初ロマンポルノ作品『風に濡れた女』が国際映画祭へ出品!

ソーシャルトレンドニュース編集部

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宮崎あおい主演映画『害虫』で知られる塩田明彦監督が、“28年ぶりに復活するロマンポルノに挑んだ”『風に濡れた女』。
本作が8月に開催される第69回ロカルノ国際映画祭コンペティション部門へ正式招待されることが決定した。金豹賞(グランプリ)が対象となる部門への参加となることから、受賞への期待も高まっている。

『風に濡れた女』は“製作開始から今年で45周年を迎える日活ロマンポルノが、28年ぶりに完全オリジナルの新作を発表する”「45th ロマンポルノリブートプロジェクト」の一環で製作された作品。
1971年〜1988年の17年間製作されたロマンポルノ作品群を含め、日活ロマンポルノ作品が国際映画祭のコンペティション部門へ選出されるのは、本作品が初。

また、日活ロマンポルノ代表作の1本である『恋人たちは濡れた』が、同映画祭のHistoire(s) du cinema部門にて上映されることも決定している。
『恋人たちは濡れた』は、先月6月14日に逝去した女優の中川梨絵さんの主演代表作。
塩田監督による『風に濡れた女』は、この中川梨絵さん主演の『恋人たちは濡れた』をリスペクトした作品となっており、国際映画祭で両作品を鑑賞できる奇跡的な機会が訪れた。

『風に濡れた女』が制作された「45th ロマンポルノリブートプロジェクト」には、塩田明彦監督のほか白石和彌監督、園子温監督、中田秀夫監督、行定勲監督らが参加。
現在、全ての監督作品がクランクアップしており、5作品全てが完成するのは9月頃を予定しており、映画ファンを中心に注目が集まっている。

塩田明彦監督コメント

N2

ロカルノ国際映画祭からの正式招待について

限られた予算と撮影期間、武器として手にしているのは俳優たちの肉体と存在感のみという状況の中で、いかに私たち人間が生きることのすべてを映画の中で描き出すか、それこそが、かつて日活ロマンポルノに関わるすべての作り手と俳優たちが全力を挙げて取り組んだことの全てであり、そこから多くの傑作・名作が産み落とされたことは、いまや日本映画の常識といってもいいかと思います。

しかしその歴史は必ずしも順風満帆だったわけではありません。初期においては映画表現のわいせつ性をめぐって警察権力から度重なる告発を受け、長期にわたる裁判闘争も行われました。
いわゆる成人映画というものに対する世間の視線も決して温かいものばかりだったわけではないはずです。
だからこそ、私の新作がいまこうして由緒あるロカルノ国際映画祭の場で上映されることには、強く心揺さぶられるものがあります。

拙作『風に濡れた女』に対するロカルノ国際映画祭からの評価はまた、これまで積み重ねられてきた日活ロマンポルノの歴史そのものへの評価でもあると思われるからです。
その評価のきっかけとして拙作『風に濡れた女』があることをなにより光栄に感じております。

神代監督『恋人たちは濡れた』が同映画祭で上映されることについて

今回、『風に濡れた女』と共に、神代辰巳監督の『恋人たちは濡れた』も上映されると聞いたときには心震えました。
これは僕が日活ロマンポルノとしても、神代辰巳監督作品としても最も好きな作品のひとつだからです。

俳優たちの肉体と、その動きこそが映画に奇跡の一瞬をもたらす、ということをあの映画は僕に教えてくれました。
一度観たら決して忘れることの出来ない映画であり、日活ロマンポルノの驚くべきクオリティの高さを世界映画界に対して証明するためにも、最もふさわしい映画の一本なのではないかと考えております。

また先日、惜しくも亡くなられた女優・中川梨絵さんを追悼するという意味でも、この上映には強い意義を感じております。今回の上映によって世界が再び、神代辰巳と中川梨絵という偉大な日本の才能を見いだすということ、そして、それが今後の日活ロマンポルノの歴史そのものの再評価へと繋がることを、その末席を汚す映画人として強く期待しております。

『風に濡れた女』ストーリー (2016年製作、塩田明彦監督)

N3
ある昼下がり、リアカーを引き海辺を歩いていた男の横を、自転車に乗った若い女が横切る。
リアカーの男は、都会の喧噪をさけ、山に小屋を建て住んでいる高介(永岡佑)。
過去から逃げるように、今は静かな生活を楽しんでいる。
自転車の女は、汐里(間宮夕貴)。高介の目の前で海につっこみ、今晩泊めてくれと交渉を仕掛けてくる。話しを聞こうともしない高介に、汐里は、濡れた肢体をおしげもなくさらけ出し「5000円でいいよ」と告げると、高介に野良犬のようにまとわりつく。
生命力と性欲を持て余し、野性味溢れる魅力を放つ汐里との出会いによって、高介は欲望の渦に巻き込まれていく……。
主演の汐里を間宮夕貴(『甘い鞭』)、高介を永岡佑(TBS『重版出来!』)が務める。
塩田明彦監督が、欲望に純粋な女と無欲な男の躍動感あふれる駆け引きを軽妙に描く。

『恋人たちは濡れた』ストーリー(1973年製作、神代辰巳監督)

過去を封印した男が故郷に舞い戻り、町の住人に疑われながらも他人として生きていこうとする。そこで出会った1組の男と女。
海辺の裏寂れた町を舞台に3人の若者たちの青春を描く。主演は中川梨絵。劇場公開前の予告編の中では“濡れた妖精”と称された。

70年代特有の若者の浮遊感、倦怠感を切り取った神代辰巳監督の初期ロマンポルノの傑作。2015年に行った、映倫の再審査により「R15+」指定作品となり、高校生の視聴も可能となった。

ロカリノ国際映画祭から、塩田監督と日活ロマンポルノへコメント

“ロカルノ国際映画祭プログラム・ディレクター”
マーク・ペランソン氏のコメント

日本の映画業界が、再びロマンポルノリブートというプロジェクトの名の元に、日本映画の大事な歴史を繰り返してくれることを大変嬉しく思っています。
ロマンポルノというジャンルは、その名前から誤解されることも、嘲笑されることも多かったのではないかと思います。
しかし、実際には多くの偉大な監督たちが、初期のキャリアを積んだ場所であり、今度はその場所で、今の時代の監督たちがどのような偉業を成し遂げてくれるのかを見ることがとっても楽しみです。
『風に濡れた女』は、憧れの作品にオマージュを捧げつつも、ロマンポルノというジャンルの新しい第一歩を踏み出しており、大変感銘を覚えました。

“ロカルノ国際映画祭プログラム・ディレクター”
カルロ・シャトリアンのコメント

『風に濡れた女』は、平凡な撮影技法を使わずチャレンジングな方法で、女と男の関係を大胆に描写したなんとも破天荒な作品です。
私にとって本作は、ロマンポルノへのトリビュートであるという以上に、新たな1つの作品として際立った存在だと捉えています。
塩田監督のオフビートな笑いは、人々の心の扉を開く素晴らしいものだと思います。

(文:ソーシャルトレンドニュース編集部)

【塩田明彦監督 プロフィール】
1961年、京都府生まれ。立教大学在学中より黒沢清、万田邦敏らと共に自主映画を制作。その後、多数のロマンポルノ作品で脚本を手掛ける大和屋竺の下で脚本を学ぶ。劇場映画デビュー作『月光の囁き』(99)と『どこまでもいこう』(99)がロカルノ国際映画祭に正式出品。2001年、宮崎あおい主演『害虫』(02)が第58回ベネチア国際映画祭の現代映画部門に正式招待をうけ、ナント三大陸映画祭では、審査員特別賞、宮崎あおいが主演女優賞を獲得する。
2004年には『カナリア』が、第13回レインダンス映画祭でグランプリを受賞。
『黄泉がえり』(03)、『どろろ』(07)が興収30億円を超えるヒットを記録するなどメジャー大作も多数手掛ける。
著書に『映画術・その演出はなぜ心をつかむのか』(イーストプレス)、『映画の生体解剖×映画術 何かがそこに降りてくる』(Amazonにて電子書籍として販売中)など。近年の作品として 『抱きしめたい』(14)などがある。
【ロカルノ国際映画祭/日本映画の主な受賞歴(※長編映画)】
1954年 (第7回)『地獄門』(衣笠貞之助監督)金豹賞を受賞
1961年(第14回)『野火』(市川崑監督) 金豹賞を受賞
1970年(第23回)『無常』(実相寺昭雄監督)金豹賞を受賞
1987年(第40回)『ロビンソンの庭』(山本政志監督)新鋭監督コンペティション部門審査員特別賞を受賞
2004年(第57回)『トニー滝谷』(市川準監督) 審査員特別賞を受賞
2005年(第58回)『不完全なふたり』(諏訪敦彦監督) 審査員特別賞を受賞
2007年(第60回)『愛の予感』(小林政広監督)金豹賞を受賞
2009年(第62回)高畑勲と富野由悠季が名誉豹賞を受賞 ※1989年にはじまった賞
2011年(第64回)『東京公園』(青山真治監督)金豹賞審査員特別賞を受賞  ※この年、特別に設けられた賞
2015年(第68回) オフィス北野が「ライモンド・レッツォニコ賞」(ベスト・インディペンデント・プロデューサー賞)を受賞。『ハッピーアワー』(濱口竜介監督)主演の川村りら、三原麻衣子、菊池葉月、田中幸恵が最優秀女優賞受賞
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