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ギャンブルだけではない!実は深くて泣ける「競馬の世界」に魅せられた女子たち

佐藤由紀奈

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佐藤由紀奈

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このコーナーでは、深く広がる愛でもって、“何か”にハマる女子を「オクウ(ヲク)」と名付け、紹介していきます。
*「オクウ(ヲク)」の意味についてはこちらから

今回は、ギャンブルということもあり、どちらかというと男性……というか、おじさんのイメージが強いテーマ、「競馬ヲク」について!

女子ファンも増えているけれど、まだまだそこは「オトコの世界」

競馬をざっくり説明すれば、競走馬に、騎手が乗り、決められたコースを走り、その着順を予想するというもの。こう書くと、えらくシンプルですが、数あるギャンブルの中でも「ドラマがある」と言われ、熱烈なファンも多い競技です。
最近は競馬場側も、女性が入りやすいような施設の工夫や、イメージプロモーションにも力を入れているもよう。
とはいえ、まだまだ「オトコの世界」というイメージが強い世界。

実際に競馬場にまで足を運ぶような女性は、どんな気持ちや目的で来ているのでしょう? そこでヲク編集部は、府中にある東京競馬場へ突撃取材を試みました!

「競馬ヲク」たちに聞いてみた

どうせなら大きいレースの日に、ということで、GIレース(※)の「安田記念」が開催されていた6月5日(日)に敢行。メインレースである「安田記念」の発走時間より約2時間前に到着したのですが……すでに場内は人、人、人!

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比率で言えばもちろん男性の方が多いわけですが、辺りを見渡せば、女性もチラホラ見受けられました。早速、直撃!

※GIレース…競馬において、最高レベルのレースのこと。

◆競馬場に来るようになった“3大きっかけ”

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――あなたが競馬場に来るようになったきっかけを、教えてください!

“男友達”に誘われて

「男友達に誘われて、です。東京競馬場は広くてキレイですし、食べ物とか、プレイランドも充実しているので、気軽に来やすいですね」(27歳・会社員Hさん)

“彼氏”に連れられて

「 (隣にいる)彼が、競馬がめっちゃ好きで、1年前くらいから連れられて来るようになりました。競馬のルールは全然わかんないんですけど、レースを見ていると、感動しちゃいますね~」(21歳・学生Aさん)

“お父さん”が好きで

「今日は、山形から出てきた両親と来ました。昔から父が競馬好きなので、幼稚園くらいの時から競馬場には、家族でちょくちょく来ています。でもわたし自身はすごく詳しいわけでもなくて……。どちらかというと、競馬を一緒に見に行くという、親孝行の意味合いが強いですね」(30歳・会社員Kさん)

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どうやら、きっかけは「男友達」「彼氏」「お父さん」という、3大キーワードに集中しているようです。さすがに男性からの誘いがないと、なかなか踏み込みにくい世界ですよね。しかし一回訪れてみれば、「意外とキレイ」「フェスみたいで楽しい」「馬がかわいい」「レースに感動」といったように、女性でもポジティブな印象を持つ人が多いようです。
“深くて広い愛”……とまではいきませんでしたが、“彼氏”や“お父さん”など、自分の大切な人きっかけで、新しい“好き”が生まれるというのは、ヲクになっていくポテンシャルを感じさせます!
(そういえば、“彼女”きっかけで、女性ならではの世界を好きになっていく男子……というパターンはあまり聞かないですよね)

……と、ここまでは比較的“ライトヲク”な女子たちの話でしたが、これまたちょっと違ったきっかけで競馬にハマったという「競馬ヲク」に出会いました!

馬のイラストがかわいすぎて……!

「もともと、学生の頃からギャンブルや競馬は好きだったんですが……あ、20歳は超えていましたよ(笑)。でもその頃は、競馬場に通うほどではなかったんです。まだ女性にとってはメジャーな場所でもなかったですし……。そんな感じで数年経っていたんですが、昨年、とあるイベントで “おがわじゅり”さんというイラストレーターの方の作品を見て、“かわいい~~!”となりまして。以来、おがわさんのブログをよく見にいくようになったんですけれど、もう、馬のイラストがかわいくて、かわいくて……! 見ているうちに馬への愛着がどんどん湧いてきて、競馬場にまで来るようになった、という感じです! とりあえず、おがわさんのイラストは本当にかわいいので、ぜひ見てみてください!!」(39歳・会社員 Yさん)

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キラキラした瞳で、おがわじゅりさんのイラストについて語ってくださったYさん。一体どんな素晴らしいイラストなの……!? と気になっていたら、そのイラストは競馬場内でも見ることができました。そう、おがわじゅりさんのイラストは、JRA(日本中央競馬会)のオフィシャルグッズとなっているなど、ものすごい“馬イラストレーター”だったのです!

▼こちらは取材より以前に、東京競馬場で撮影したもの。かわいかったので思わず撮っていました。どおりで見たことがあると……!

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これはぜひとも、おがわじゅり先生のお話も聞いてみたい!
そして競馬場で出会った「競馬ヲク」のYさんの熱い気持ちをお伝えしたい……! という勝手な使命感から、ヲク編集部はおがわじゅり先生にメールでコンタクトを取ることに!!

カリスマ馬イラストレーターに質問!

馬のイラストを描き続け、そのイラストで、おそらく多くの競馬ヲクを生み出しているであろう、おがわ先生にも、馬と競馬の魅力について質問してみました。

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――馬のイラストを描きはじめたきっかけは、何ですか?

「20歳の時に乗馬を習っていまして、乗るたびに乗馬日記(※)をつけていました。しかし、文字だけでダーーーッと書くのはつまらなくてですね。その日の出来事を漫画にして描いていました。それがきっかけです」

※乗馬日記…その日の乗馬における出来事を、ハガキサイズの紙に細かくイラストつきで記録していたそう。一部は、ブログ『おがわじゅりの馬房』内で見ることができる。

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――競馬には、どんな魅力があると思いますか?

好きな馬を見つけると、ずーーーーっと応援できることでしょうか。もちろん、いつかは引退してしまいます。でも、今度はその子供や兄弟などを応援できます。それがもうエンドレス!!! それと、あんな大きな動物が全速力で走ったり、ジャンプしたりするところを見ることができるのは競馬だけだと思いますので、そこも魅力的ですね」

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競馬は“ブラッド・スポーツ”とも言われるほど、血統が重要視されており、より速く、より強い競走馬にするために、血統を意識して交配する。
そのため、現役時代にいい結果を残した馬は、引退後も種馬として非常に重宝され、たくさんの子孫を残すという使命を課せられるのです。
しかし優秀な遺伝子だからといって親のような結果を残せるとは限らず、結局はその馬の個性や育った環境によるところも大きいんだそう。
なんだかこれって、まるで人間ドラマを見ているかのようじゃないですか……?

▼こちらは、おがわ先生のイラスト
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©おがわじゅり

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例えば代々続く医者の家系に生まれて、本人の意思とは無関係に医者になることが決められていて。
しかもただの医者ではなく、“より優秀な医者”であることを義務づけられているわけです。

逃れられない宿命と向き合いながら、自分なりに精一杯、“優秀な医者を目指す”。
でも“優秀”なんてものに、最高はないじゃないですか。

だからこそ、その思いは次の世代に受け継がれていくわけで、最高を求めるブラッド・ストーリーは終わらない。
この未来予測不可能でありながら、何世代にもわたるエンドレス・ストーリーこそが、“競馬はロマン”と言われる由縁なのでしょう……!(※途中から完全に筆者の妄想が混じっておりますが、泣けます)

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――最後に、競馬や馬を好きになったことで、何か他にも興味を持ったことや、よかったことなどはありますか?

「乗馬ですかね(結局、馬なんですけど……)。乗ってみてわかったんです。馬を指示通りに走らせる難しさが身に染みます。ジョッキーって本当にすごいなと驚きますね」

以上、「競馬ヲク」の先駆け(!?)的、カリスマ馬イラストレーター・おがわじゅり先生からのコメントでした。
おがわ先生、深い愛がつまったコメントを、ありがとうございました!

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ちなみにそんなおがわ先生ですが、7月16日(土)から8月9日(火)まで、東急ハンズ渋谷店1Aフロアにて、【SHIBUYA HORSE MARKET】を開催されるそうです。
馬グッズがたくさん並ぶとのこと。これを機に、また新たな「競馬ヲク」が生まれるかもしれませんね……!

【おがわじゅり】
1978年11月29日生まれ。神奈川県出身、宮城県在住。
馬のイラストを描いていたところ、ホースシューの社長の目に留まり商品化。
現在は、JRAの競馬場や施設、乗馬クラブなどでグッズ販売中。
2011年~2016年はJRA発行の『KEIBA CATALOG』の表紙を担当し、2014年には東京競馬場の馬券売り場のシャッターイラスト、2015年に東京競馬場のターフビジョンの裏のイラストを手掛ける。

実はわたしも「競馬ヲク」なんです 泣ける話、語ります

さて、最後に。ちょっと……語らせていただいてもよろしいでしょうか?

何を隠そう、わたくしも自称「競馬ヲク」なのです!
きっかけとしては、縁あって仕事で競馬に関わる機会が多くありまして。競走馬たちの生き様を知るうちに、馬たちに愛着が湧いてきて……という感じです。既出の競馬ヲクの皆さんと似たような感じですね。
だってですね、本当に競走馬の生き様って、すごいんですよ……!
競走馬は「サラブレッド」という品種の馬ですが、これは“速く走ること”を目的に改良された馬のことなんです。競馬に興味のない人だと、馬のカタチなんてよく見たことはないかと思いますが、競走馬は速く走れるように、頭は小さく、胸やお尻の筋肉が発達していて、脚は細いのが特徴。
ただ、その分とてもケガをしやすい体で、精神的にも超デリケートと言われています。
とても臆病で、ちょっとした光や物音にも敏感に反応してしまい、ストレスでお腹を壊す馬も多いのだとか。遠方のレース場へトラックで輸送されるストレスから、発熱するケースも多いそうです。

なんだかこれだけ聞くと、とてもかわいそう……。
でもだからこそ、馬の世話をする厩務員や調教師は、普段から馬たちのストレスを考え続けなければいけないし、騎手だって、馬の性格を理解し尽くしたうえで走らせてあげなければいけないわけです。
そこには絶対、馬と、人との絆があるんだろうなあ……と、想像でしかありませんが、胸にグッとくるものがあります。

“名コンビ”に訪れた悲しい最期

馬と人との絆に関していえば、泣ける話として有名なのが、「キーストン」という競走馬の最期。わたしはこの話を、競馬好きの上司から聞かされました。

キーストンは山本正司という騎手と、しばしばパートナーを組み、名コンビと言われるようになりましたが、1967年の阪神大賞典のレース中に、左前脚を脱臼。山本騎手を振り落としてしまいます。
前述の通り、競走馬は元来とても臆病で、痛みにもとても弱い生き物です。脚を脱臼となれば、暴れ出してしまうのが普通なのです。

しかしその時キーストンは、3本の脚でコース上に横たわる山本騎手の元へと一生懸命近づいていき、彼の頭に鼻をすり寄せるという、ありえない行動を取りました。
血が流れ、骨もむき出しの状態なのにも関わらず……。
これはもう、大好きな山本騎手の安否を案じてとしか思えません。

コース上で診断を受けた直後、キーストンには注射が打たれました。競走馬が脚に致命的なケガを負うと、多くの場合が“予後不良”と診断され、その場で安楽死の処置がとられるのです。
デリケートな気性も影響して、競走馬はケガや治療の痛みに耐えられず、回復は非常に難しいそうです。それなのに、キーストンが激痛に耐えながらも山本騎手の側に必死に駆け寄ったのは、「もう会えるのは、最期だから……」と、どこかでわかっていたからかもしれません。

こんな風に、ただ速く走るためだけという”宿命”を背負いながら、それでも人と深く関わり合い、心を通わせ、たった数分のレースを命がけで走り抜ける……。

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これをドラマといわず、何と言いましょう!!(号泣)

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ちょっとわたしの競馬愛が過熱してしまいましたが、競馬って本当に、生き物だからこそのドラマがあると思います。馬たちだってそれぞれ個性があって、いろんな人生……馬生?があって。そんな風に思いを馳せながら競馬場へ行ってみると、きっと自分の中の空想力がヒートアップすると思いますよ。それこそが「競馬ヲク」へとつながるきっかけかと。
ちなみにわたしは、馬券の買い方とか、細かいルールはあんまりわかっていません。ヲタではなくヲクなので、そこはあしからず!

「競馬ヲク」の愛をまとめてみる

と、いうことで! 今回のヲク(自分含む)のケースをまとめてみます。

・一度競馬場を訪れると、ルールは分からずとも、その場の雰囲気で、めっちゃ楽しめる。リピーター多し!
・馬がかわいい。見れば見るほどかわいい。イラストでも、本物でもかわいい。
・人間と同じように続く未来予測不可能なエンドレス・ブラッド・ストーリーと、競走馬の生き様から発せられる一瞬の輝き。

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女子の“好き”は果てしない――。
次はどんな○○ヲク女子の心の中が明らかになるのか!?
こうご期待!

(文・イラスト:佐藤由紀奈)

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