*「オクウ(ヲク)」の意味についてはこちらから
空前の『ポケモンGO』ブームにより、あらためてそのコンテンツ力をわたしたちに再認識させることになったポケモン。今回は、『ポケモンGO』の日本配信よりも、ずっと前からポケモンにハマり続けている、「ポケモンヲク」に、その愛を語ってもらいました!
全然ポケット級じゃないモンスターコンテンツ、それがポケモン
言わずもがなですが、『ポケットモンスター』(通称:ポケモン)といえば、今や日本が誇るキャラクターゲーム。
1996年にゲームボーイ用ソフトとして『ポケットモンスター赤・緑』が発売されたのが始まりです。おそらく当時小学生だった今のアラサー以下の世代は、ゲームなり、アニメなり、何かしらのポケモンコンテンツを経験したのではないでしょうか。
今年29歳の筆者も、小学生の頃は夢中になったものですが、『ポケットモンスター金・銀』以降は、成長とともにフワーッと離れておりました……。懐かしいなあ。
しかし、わたしがオトナになっていく間にもポケモンの新作は発売され続け、その時々の子どもたちを夢中にさせてきたわけです。いまだポケモンの人気は、顕在!
これって、冷静に考えるとスゴイですよね……。まさにモンスターコンテンツ。全然ポケットじゃないですよ!
大人の「ポケモンヲク」に聞いてみた!
しかし中には、大人になってもポケモンを愛し続けている人も少なからずいます。
マッサージ師として働く、今年29歳のSさんは、まさにその1人。会う人会う人にポケモン好きを公言しており、お客さんの中にも仲良しのポケモン仲間がいるそうです。施術中にポケモンコミュニケーションがヒートアップしすぎて、わざわざ追加料金を払って延長する人もいるほどだとか……!(まじか)
そんな彼女に、都内のとあるカフェで話を聞かせてもらいました。
ポケモンという、ライフワーク
大人になってからの方が、むしろハマった
――Sさんは初期のポケモン世代だと思うのですが、どうしてここまで長い間ハマっているのでしょうか?
「実はポケモンが登場したばかりの小学生の時は、今ほどハマっていたわけじゃなかったんです。みんなと同じように、大きくなるにつれて自然と離れていきましたし。ここまでハマるようになったのは、高校生になった時。大学までエスカレーター式の高校に入学したので、受験勉強しなくてよくなったんです(笑)。じゃあ何しようかな~となった時……。あ、ちょっと待って!! ドードーがいるよ!!」
――!?
「すみません。ここで『ポケモンGO』をやっていると、ポケモンが結構でるので……♡」
田舎住まいにはひんしゅくを買いそうだが、どうやら都会のカフェや商業施設はポケモンが出やすいらしい! このインタビュー中も、席に座っているだけなのに、テーブルに置かれたSさんのスマホは、ポケモンの出現通知にたびたびブルブルしていた。するとどうしてもSさんの意識はそちらに向いてしまうのだ。
※こんな感じで、話の途中でポケモンが出現しては中断して……というインタビューであったことを、そのまま記事にするとともに、先にお伝えしておきます。
「ドードー、ゲット~♪ あ、話の途中でしたね(笑)。えーと、なんだっけ。そうそう、何かやろうかなと思った時に、ふと、“あ、ポケモンやろう!”と思いつきまして。そこからはもう、小学生の時よりも圧倒的にハマってしまいました! たぶん、そこから出たポケモンシリーズは全部やっていますね。もう、ライフワークみたいな感じです!」
家の中でも、コンビニでも、ポケモンをゲットしたい欲求
――ポケモン関連のものは、ゲーム以外にも集めていたりはしますか?
「はい! 家にはいーっぱいピカチュウがいるんですよ♡ 見てください! かわいくないですか♡」
――おおお……スゴイ……! あ、『妖怪ウォッチ』も好きなんですか?
「最近好きになりました! でも最初は、ポケモンの敵みたいに思っていたので、嫌いだった(笑)。食わず嫌いだったんですけど、まわりにおすすめされてアニメを見たら、意外によかったです」
――ぬいぐるみ以外にも、ポケモングッズを集めていたりはするのですか?
「はい! いろいろ持っていますが、ポケモンパンを買い漁った時もありましたね~。パンについているシールを集めると、レアポケモンがもらえるっていうキャンペーンだったんですよ。すっごく欲しかったので、一度に大量のポケモンパンを買って、シールだけはがして、パンは会社の人に配りました(笑)」
『ポケモンGO』の配信、「ポケモンヲク」はどう受け取った?
待ちに待った『ポケモンGO』だけど、怒りが収まらない
――『ポケモンGO』が日本で配信されると発表された時は、どう思いました?
「わたし、昨年からずっと待ってたんですよーーーー!! 何かで『ポケモンGO』の情報を見て、やりたい!!って思っていたのに、全然配信されないし、先にアメリカで出るっていうじゃないですか! もう……もう、怒りが収まらないっていうか……!!(ぶるぶる) だって、先に始められちゃうと、差が出ちゃうもん! 今も、やっと日本で配信されましたけど、ジム(※)にめっちゃ強い人とかいて……名前見ると、みんな明らかに外国人! 意味わかんない強さなんだもん!(怒)」
※ジム…育成したポケモン同士を戦わせる場所。『ポケモンGO』にも採用されている。
――す、すごい熱量ですね……! 普段から、ポケモン以外でもゲーマーなんですか?
「いえ、全然! ゲームっていうより、たぶん“育成”が好きなんですよね。ポケモンをやったことある人ならわかると思うんですけど、育てるといっても本当に奥深いシステムなので、やりがいがあります……! 例えば同じ種類のポケモンにも個体差があって、ピカチュウとかも、この世に1匹しかいないわけじゃないんです。いっぱいいるんですよ。でもみんな、“個体値”と呼ばれる才能を表す数値なんかが違うんですね。だから本格的に育てる前に、できるだけ強くて理想的な子を入手して、そこから絞って育てていくんです。これが“厳選”といわれる作業なんですけど、大変だし、なんかかわいそうだし、本当はあんまりやりたくないんですけどね……あ!」
「プリン出てきたーーーーーーーーー♡♡」
(ポケモンゲットタイムに入ります)
「厳選は、本当はあんまりやりたくないんだけど……」と、少し切なそうな表情で、思いやりが深い一面を見せたかと思えば、ポケモンが出現した瞬間に、すぐゲーマーの目に……! この切り替えができることが、Sさんがポケモンヲクになった由縁なのかも。
ポケモンにしかない魅力、それはやっぱり……
心をこめて育てた子は、愛着が半端ない(たとえそれが計算の産物であろうとも)
――そうやって、手塩にかけて理想に近づくように育てたポケモンって、やっぱり思い入れも大きいのでしょうか?
「それはもう! 例えばこの子!」
「ニンフィアっていうポケモンなんですけど、初代からいるイーブイが、フェアリータイプ(※)に進化した子なんです。わたしが育てたこのニンフィアは、タマゴの厳選から始めたから、もう本当、何個あるのか自分でもわかんないくらい、イーブイのタマゴ(※)がありました(笑)」
※フェアリータイプ…2013年発売の『ポケットモンスターX・Y』で、14年ぶりに新たに追加されたポケモンのタイプ。それまで、対戦において“チート”と称されるほどの強さで猛威をふるっていたドラゴンタイプの攻撃を、唯一無効化できるタイプ。見た目がかわいいポケモンが多い。
※タマゴ……その名の通り、ポケモンが生まれるタマゴ。タマゴから生まれるポケモンは親の能力を引き継いでいることがあり、初めから潜在能力の高いポケモンを育てることができる。
「そこから、“こういうタイプの子にしたい!”っていうのを目指して、レベルを上げる前に、“どのくらいの割合で努力値(※)を最大にするか……”っていうのを、緻密に考えながら鍛えていくんです。数字とか、本当はすっごく苦手なんですけど、ポケモンだけは計算も頑張ります! まあ時々、そんなの知らずにやった方が楽しいんじゃないかって思うんですけど、でも、頑張って育てると……すっごくカワイイ!! この子なんかはもう、心をこめて育てたから、すっごく愛着があります!」
※努力値…公式の名称ではないが、ファンの間で呼ばれている隠し数値で、バトルでポケモンを倒していくごとに各能力別で加算されていく。あくまでも隠し数値なので、理想のポケモンに育てるためには、自分で記録しておく必要がある。
――『ポケモンGO』でも、そういった愛着のある子はいるんですか?
「います、います! またイーブイからの進化系なんですけど、このブースターがお気に入り♡ でも実は最初、“ブースターにだけはしたくない!”って思いながら育てていたのに、結局ブースターになっちゃいました(笑)」
――え、ブースターは嫌いなんですか?
「いえ、そういうわけじゃないんですけど……」
「昔、種馬みたいにしちゃったことがあって」
――た、種馬……!?
「ポケモンって、ゲームだと“ミラクル交換”っていう、いろんな人とインターネットでポケモンを交換できるシステムがあるんです。そこで昔、パッと見のスペックが高いブースターをもらったんですけど、きちんと鍛えられてなかったせいで、才能はあるのに、弱い子だったんですよね。なんだかな~と思って、結局、種馬というか、タマゴ要員にしちゃたんです。その時の経験があるから、なんとなくブースターにはあんまりいいイメージがなくって……。引け目なのかなあ」
――でも、そんなブースターが、今じゃ“愛着のある子”になった経緯とは?
「不本意に(笑)ブースターになっちゃったんですけど、『ポケモンGO』で育てている子の中で、初めて名前をつけてみたんです。例の、ミラクル交換でもらった時のブースターに “Dr.Pepper”って名前がついてたから、“じゃあ、わたしもそうしよー!”って、ふと思い出して。そんな感じで名前をつけたら、愛着がわいてねえ……。しかもいつの間にか、今持っているポケモン中で一番強くなってました(笑)。だから、今はこの子がいいんです!」
「弱くたって、勝てます」 やっぱり特別なピカチュウ愛を語る
――たまたまイーブイ関連のポケモンが続きましたが、一番好きなポケモンはどこ子ですか?
「うーん。でもやっぱり、ピカチュウは特別かわいいですね~! ピカチュウの……おしりの曲線が、すっごくかわいい!! でもあの曲線、アニメのピカチュウにはあるんだけど、ポケモンセンター(※)のピカチュウにはないんですよ~。わたしからすると、それがちょっと不満!」
※ポケモンセンター…ポケモン関連のキャラクターグッズを扱う専門店。
「ほら、この曲線が、すっごく柔らかそうでしょ……?」
「アニメだと、喋ってるのもかわいいんですよね~! っていっても、“ピカチュウ”しか喋らないけど。アニメのXYシリーズ(※)のとある回で、モンスターボール工場でピカチュウとニャースが追いかけっこする回があるんです。その時のピカチュウを、ぜひ見て欲しい! サトシ君(※)に褒められて、“ピカチュウゥ……”とか言って、照れるの! ヤバイ!! カワイイ~~!と思って、何回も見返してます(笑)」
※XYシリーズ…2013年から開始したテレビアニメシリーズ。2015年10月からは、『XY&Z』として放映中。
※サトシ…アニメ『ポケットモンスター』シリーズの主人公。「ポケモン、ゲットだぜ!」のセリフの人。ピカチュウとは親友。
――じゃあ、ピカチュウは育てるっていうより、愛でる対象なんでしょうか?
「かわいいんだけど、戦っているとこも好きです。そもそもピカチュウって、ゲームでは超弱くて使いづらいんですよね。どんなに厳選してもダメ。そもそもが弱い種類だから、でんきだまとかの強化アイテムを持たせて、さらに先制攻撃できれば、もしかしたら……もしかしたら……!って感じですけど、その後攻撃されちゃったらもう、アウト!みたいな弱さなんですよ」
――えっ……。それじゃ戦わせられないじゃないですか……! サトシ君はどうしてるんですか!?
「たぶんなんですけど、アニメのピカチュウはレベル100くらいまでいってて、種族とか超えて、めっちゃ強くなってると思うんです。なにせ、20年近く連れ回しているので(笑)」
――あ、そうか。1997年放映開始で、主人公はサトシとピカチュウから約20年間変わっていないんですもんね……!(それもスゴイ)
「そうなんですよ~。これもアニメの話なんですけど、とある回で メガルカリオっていう、すごく強いポケモンと戦った時のピカチュウは……泣けた。その戦闘シーンがめっちゃ緊迫していて、あのかわいいフォルムで、強面のメガルカリオとにらみ合って……! 最後はね、ピカチュウの10まんボルトで勝つんですよ。もうね、やあぁぁばい……!!(力をこめて) 目が離せなかったし、本当に涙が出るくらい感動だった! 本当は弱いピカチュウなのに、頑張って勝った……!っていう感動!」
「ああ、やばい! 早く帰って、今週の録画分を観なきゃ……!!」
――えっ!! す、すみません! もう少しで終わりますので!!(笑)
あらためて、なぜこんなにポケモンが好きかを考える
生き物を育てるのが好き
――Sさんはゲーム全般が好きというわけではなく、育成要素のあるゲームが好きということでしょうか?
「ゲームに限らず、根本的に、“生き物を育てる”のが好きなんでしょうね。昔から動物が好きで、実家には犬も猫もハムスターもいました。1人暮らししたら動物を飼えなくなっちゃって寂しくて……。管理会社の人に怒って電話したこともあります。“どうしてハムスターも飼っちゃダメなんですか!?”って(笑)。職場で飼おうかと思ったんですけど、それもみんなに怒られました……。しょうがないと思って多肉植物を育てはじめたら、これにめっちゃハマって! だからきっと、何かを育成するのが好きなのかなって、最近になって自覚し始めました」
――なるほど。とにかく育てるのが好き、と! 他には何か、育てる系でハマったものはありますか?
「小学校の時、『たまごっち』も好きでした。でも最初はちゃんとしたたまごっちが買えなくて、パパが、『いぬっち』という、モドキみたいなものを買ってくれたんです(笑)。たまごっちじゃなくてショックだったし、ぶっちゃけ、おもしろくなかったけど、始めちゃったからには、死ぬまではやめられない!って思ってやっていました。昔から犬を飼っていたし、生き物に対する愛着はあったから、途中で投げ出すことはできないじゃないですか。だから頑張って育ててましたね~……」
「あ、トサキントが出てきた!! 捕まえた方がいいですよ!!」
(恒例のポケモンゲットタイム)
――えっ! い、いいです……!
「なんで!? アズマオウになるよ!! とりあえず捕まえておきなよ! トレーナーのレベルもあがるよっ♪」
トサキント自体は弱いが、『ポケモンGO』では、いっぱい集めるとアズマオウに進化させられる(アズマオウは、対戦でなかなか使える)。他にも、コイキングは見た目からしてクソ弱いけど、いっぱい集めれば、ギャラドスという見た目からして超凶悪なポケモンに進化させられる。
だから彼女は、どんな弱っちいポケモンでも、すぐさまゲットするのだ。それは「ポケモンはライフワーク」と豪語する彼女にとって、インタビューよりも圧倒的に大切なことなのだ。きっと。
――あ、はい……わかりました、一応、捕まえておきます!(笑)
「ポケモンヲク」の愛をまとめてみる
この記事に書かれているのはほんの一部で、実際のインタビュー中は、ほとんどが『ポケモンGO』に使われていたのでは……というくらい、話が中断しまくり。
でもあまりにも楽しそうに、「○○が出たよっ♪」「○○がこんなに強くなったんだよっ♪」と語られるので、思わずわたしも、しばらく放置していた『ポケモンGO』を自然と起動していました。
ヲクの巻き込み力……おそるべし!!
ちなみに、そんな彼女はいま「『ポケモンGO』を一緒にやってくれて、かつ、ニンテンドー3DSのポケモンを一緒にやってくれて、かつ、(Sさんの)セーブデータを邪魔しない彼氏」が欲しいそうです。
※元カレは、彼女の3DSを使って勝手に遊んでしまう人だったらしいので、ダメだったとのこと。
と、いうことで! 今回のヲクのケースをまとめてみます。
・ゲームというより、生き物を育てるのが好き。
・生き物は、育て始めたら最後まで面倒をみなきゃいけない。
・ピカチュウの魅力は、かわいさと、弱さと、おしり。
・とりあえず今は、何をしてても『ポケモンGO』がインターセプト。
女子の“好き”は果てしない――。
次はどんな○○ヲク女子の心の中が明らかになるのか!?
こうご期待!
(文・イラスト:佐藤由紀奈)