関西には子どもの頃から日常的に耳にし、無意識で口ずさんでしまうようなローカルCMが多数ある。その一つが、「関西電気保安協会」のCMだ。
昭和の頃より数十年、関西のお茶の間に親しまれてきた名物シリーズ。
そんな関西電気保安協会のWEB限定ムービーが2月20日(火)に公開されたのだが……。あまりに予想外な出来に、関西人たちからは「まさか……!!」という声があがり、ザワつきっぱなしなのである。
あの面白系CMが、まさかの感動ムービーに!?
関西電気保安協会のCMといえば、「かんさいーでんきほーあんきょーかい♪」という独特なサウンドロゴと、社員たちが出演するゆるい世界観が特徴であり、関西圏であれば認知度ほぼ100%といわれる。もはや関西人は、「関西電気保安協会」という言葉をメロディなしには発せないといわれるほどだ。
またいつも通りの面白系CMか~と思いきや……。
これがまさかの、感動系ムービーだったのだ。
まだWEB限定ムービーを見ていないという人は、騙されたと思って、まずは見てほしい。
物語を盛り上げる楽曲を、「THEイナズマ戦隊」が担当
関西電気保安協会で働く父親の姿を、息子の視点も絡めて、情緒たっぷりに描いたストーリー。
いわゆる日本の父親!とでも言いたくなるような背中で語る姿勢や、息子が抱える父親への寂しさや誇りといった豊かな感情の変化が、多くの人の共感を誘うことだろう。
そしてなんといっても、BGMがたまらなくイイ。
魂に訴えかけるような熱いボーカルと、後半に向けて盛り上がっていく尻上がりなメロディが、ストーリーと相まって王道的な感動を演出している。
楽曲を担当しているのは、「THEイナズマ戦隊」。
THEイナズマ戦隊
上中丈弥(ウエナカ ジョウヤ) Vocal 78.11.12.生 大阪府出身
山田武郎(ヤマダ タケオ) Guitar 79.01.27.生 大阪府出身
中田俊哉(ナカタ トシヤ) Bass 78.09.01.生 大阪府出身
久保裕行(クボ ヒロユキ) Drums 77.11.20.生 北海道出身
なんとこのWEB限定ムービーのために書き下ろした新曲なのだという。
楽曲制作だけではなく、ムービー自体にも要所で出演しており、見どころの一つにもなっている。
結成21年目のTHEイナズマ戦隊が歌う、「お父さん」への想い
THEイナズマ戦隊といえば、心に突き刺さるアツいメッセージとハードなメロディを、結成21年目を迎えた今も届け続ける4人組ロックバンドだ。自身の楽曲はもちろん、関ジャニ∞の『ズッコケ男道』や『無責任ヒーロー』などの歌詞を手掛けるなど、聞き手を元気づける“応援歌”の名手としても知られる。
メンバー4人のうち、3人が大阪府出身と、縁も深い彼ら。今回の楽曲にどのような想いを込めたのか、聞いてみた。
関西人にとっては、喜びもひとしお
――今回のコラボの話があった時、率直に、どんなお気持ちでしたか?
上中:「僕たちは即答でOKしました! お仕事内容を聞いた時は飛びつくような気持ちで、嬉しかったです。僕らは3人(上中/山田/中田)が大阪出身で、小さい時から見ていたCMだったし、関西では知らない人はいないですからね!」
――子どもの頃は、CMについてどういうイメージをお持ちでしたか?
上中:「正直に言うと、何にも深いことは思わなかったけど歌は覚えている、という感じですね。関西電気保安協会がどういう仕事をしているかなんて、考えたこともなかった。
インパクトのあるCMだったので、唯一無二というか、独特な感じには思っていましたけどね。テンションが吉本新喜劇と一緒です(笑)。関西人に向けてのCMだなあと思っていました」
山田:「誰しも歌えるから、落ち着くというか。子どもの時から見ていたので、もう関西人のDNAに組み込まれているんでしょうね」
(関西電気保安協会のキャラクター、ホアンくんと一緒に)
今の年齢だからわかる、“お父さん”という存在
――今回のタイアップ曲『僕だけのヒーロー』は、どのように制作されたのでしょうか?
久保:「映像のストーリーを最初に聞かせてもらって、そのイメージに合わせたメロディから作っています。
大阪出身のメンバーと一緒にいて思うのが、関西って“人情”みたいなものを普段からすごく感じますし、親と子の絆が、曲の最後に向かってグッと胸にくるようなものにしたいと思いました」
上中:「歌詞は、僕が担当しています。
今回は父と息子がテーマでしたけど、僕のお父さんは僕が小学校2年生の時に亡くなっているんですね。バンドには『33歳』という、お父さんに向かって歌った曲もあります。
今回の歌詞はそれと似たテイストではあるんですが、もう少し父と息子の関係を、俯瞰から見ているような作品にできればと思って書きました。
“お父さんってかっこええ、かっこいいんや”って押し付けるわけじゃなく、僕らも今の年齢になってきて、“お父さん”というものがわかるようになったからこその歌詞ですね」
久保:「昔はこういうバラード調ってできなかったんですけれど、やっぱりここまでバンドを続けてきたから、こういう曲もできるようになったんだと思います。まさに今のイナズマ戦隊だから、やらせてもらえた曲だなと」
それぞれのメンバーが抱く、お父さんのイメージとは?
――みなさんにとって、ご自身のお父さんとの思い出や、お父さんのイメージはどんなものだったのでしょうか?
山田:「僕も実は、父親は小学校2年生で亡くなっているんです。でもね、優しい父親で、よく一緒に公園とかで遊んでくれましたね。まだ父親の仕事について考える年齢でもなかったので、とにかく優しいイメージ」
中田:「うちのお父さんは、とにかく仕事に生きた人。でも日曜日にはキャッチボールをやってくれたりもしました。
そういえば一度、子どもの頃に出張に連れて行ってもらって、取引先を一緒にまわったことがあります。たぶん、子どもに“こういうことやってるんやで”っていうのを見せたかったんでしょうね(笑)」
久保:「うちは酪農家なので、365日ずっと仕事で、遊びには全然連れて行ってもらえなかった。日曜日もないし、夕食を一緒に食べたりはしなかったですけれど、逆に仕事を手伝わされていたから、一緒にいる時間は長かったんです。
だから寂しくはなかったし、一緒に仕事していて、“やっぱり力があってすげえなあ~”って、いつも思っていました」
上中:「僕はガールフレンドのところに、一緒に遊びに連れて行かされていました(笑)。まあ、ロマンチックな人でしたね。
僕にとってお父さんは、カッコイイまま死んでいるんです。なんでもできる、なんでも夢を叶えてくれる、スーパーマンのまま。それがそのまま、今回の作品になったような感じですね。
うん、まあ、やっぱりスーパーマンやと思いますよ。お父さんって」
撮影後にもこだわり、変えた歌詞
――今回のWEB限定ムービーは、曲やストーリーはもちろんですが、みなさんの演奏シーンも大きな見どころですよね。
上中:「めっちゃ良かったですよね、あれ! 電球の演出なんかも、すごくて」
中田:「僕はもう、ミュージックビデオ感覚で見ていましたからね」
上中:「実は撮影時は仮歌の状態だったんですけれど、撮影したものを見てから歌入れをしたので、さらにいいものになったと思います。
とにかく気持ちがノッた段階で歌いたいという思いがあったんです。撮影後、もっと近い距離感で歌えるものにしたいなと思い、歌詞を変えた箇所もあります。後半は特にこだわった」
――みなさんのおかげで、これまでの関西電気保安協会のイメージがガラッと変わったという人も多いのではないでしょうか。
上中:「そうですね、そのつもりで作りました。
僕らがこの歳になって“お父さんってかっこいい”、“スーパーヒーローや”って思えるようになったからこその作品なので、それが聴いている人にも届けばいいな、と。
曲名にもあるように、やっぱり“僕だけの”、ですからね、お父さんの存在って。
僕自身にとっても、お父さんはずっとヒーローのままでした。他人から見たらそうでもなかったかもしれないですけれど、僕にとってはスーパーヒーローだった。ずっと僕だけの、たった一人のヒーロー。
“それでええやん”って、たくさんの人に思ってもらいたい」
関西電気保安協会も、ヒーロー的な存在に!?
「お父さんはヒーロー」と、インタビュー中何度も口にした上中さんが印象的だった。
父親と息子の絆を、俯瞰しているイメージで描いたという本作。
インタビュー後、あらためてムービーを見てみたが、後半に向けてどんどんドラマチックに盛り上がっていくメロディにあわせて、思わず自分自身の父親への思いがこみ上げてきてしまった。
まさかあの関西電気保安協会にじんとさせられる日が来るとは思わなかったが、彼らもまた、誰かにとってのヒーローだったのだなと、見方が少し変わったのは事実だ。
今回のWEB限定ムービーで、関西電気保安協会がどんな仕事をしているか初めて知るという人も多いだろう。
THEイナズマ戦隊のアツいメッセージとも相まって、世間の目がこれまでの面白系から憧れへと、華麗なイメチェンを遂げていく……かもしれない。
(文:ソーシャルトレンドニュース編集部)