Social Trend News

更新

中国のインフルエンサー経済はなぜ発展したのか?「ブランド」と「若者」の存在

黄 未来(こうみく)

Creator

黄 未来(こうみく)

Read more

Share!!

中国トレンドマーケター・こうみくさんによる好評連載『中国トレンド最前線!』。現在、上海に留学中で多忙を極めるこうみくさんのお話を、今後はインタビュー形式でお伝えしていきます!

第3回となる今回は、前回に引き続き「中国インフルエンサーの威力」について。なぜここまでインフルエンサー経済が大きくなったのか、こうみくさんならではの視点で紐解いていただきます。

養成所も出現!中国インフルエンサー経済の熱狂ぶり

モノを売るなら「店舗、EC、インフルエンサー」

こうみくさん

中国ではインフルエンサーは“网红(ワンホン)”と呼ばれていますが、直訳すると“インターネットの有名人”といった意味合いです。こう聞くと日本のインフルエンサーと似たような印象を受けるかもしれませんが、規模感は全く違います。

――日本では「若い世代の一部に人気のSNSフォロワーが多い人」といったイメージが強いかもしれません。

こうみくさん

そうですよね。でもイメージとしては、アメリカのセレブリティの方が近いかもしれません。商品プロデュースをしたり、自分のブランドを立ち上げたり。タレントとはまた違った存在です。今は中国のインフルエンサーは力を持ちすぎているとすら感じますね。

――日本でいう、タレントのような存在なのでしょうか?

こうみくさん

有力な网红(ワンホン)になると、普通の芸能人よりも影響力が強く、収入も高い。それが中国のインフルエンサーです。その理由としては、インフルエンサーの力ではっきりと経済が動くからです。フォロワー10万人以下のマイクロインフルエンサーでも、日本円で月に数十万円くらいは稼げていると思いますし、前回の記事で紹介した大物インフルエンサーであれば、月に数千万円は稼いでいるのもざらにあります。

――月に数千万円……! セルフブランディングができる人であれば、事務所にマージンを取られてしまうタレントよりもメリットが大きそうですね。

こうみくさん

たとえば、元々モデルとして活躍していたところ、より商機があるからと自らインフルエンサーに転向した、薇娅さんという方が象徴的です。中国最大のECサイト『アリババ』では毎年「W11(ダブルイレブン)-独身の日-」というビッグセールを開催するのですが、この女性はアパレル商品を1日で約3億元、日本円にして約50億円以上を稼いだと報じられています。


出典:百度

――中国のインフルエンサーはどのような分野で活躍している方が多いのしょう。やはりアパレルや化粧品でしょうか?

こうみくさん

日本ではそうだと思いますが、中国では活躍の場は食や教育など、多岐に渡っています。例えば下の写真の方はワイン系インフルエンサーで、人気の商品やワインの開け方、おつまみなどの小ネタをTikTokをはじめとする各種プラットフォームで紹介しています。そこからサイトへ促し、自分で仕入れたワインの購入へ繋げる。こうして自分で事業を行っているんですね。

――そこまで力を持っているとなると、企業も当然、無視はできませんね。

こうみくさん

インフルエンサーマーケティングは、消費財を扱うどこの企業も100%と言っていいほど取り組んでいますし、もはや成熟した産業として確立しています。企業のマーケティング戦略において、店舗、EC、インフルエンサー……といった感じで、重要な販売チャネルのひとつとして認識されているんです。

稼げる職業への憧れ…一部では社会問題も

――中国におけるインフルエンサーの威力は理解できました。そうなると、「やってみたい」と言う方も増えているのでは?

こうみくさん

10代の子にとって今やインフルエンサーは、良くも悪くも“最もなりたい職業のひとつ”です。また20代の若者においても、インフルエンサーを目指したいという声は年々大きくなっています。2016年に行われた新卒を対象としたアンケートの中で、実に8%もの人々が、インフルエンサーやコスプレイヤー、声優といった新産業と呼ばれる分野への就業を希望し、その内の54%(全体の5%)がインフルンサーを目指しているという統計もありました。


出典:2016高校毕业生毕业去向的大数据报告

――日本でもYouTuberになりたがる子どもが増えているというニュースを聞きます。

こうみくさん

そうですよね。でもトップYouTuberとして名が知れているのって、せいぜい数十人ではないでしょうか。まだまだそれで食べていくとなると希少な職業と言えると思います。ところが中国は有名インフルエンサーがすでに数万人と存在しているし、YouTuberのようにプラットフォーム依存でもありません。人口も14億人いますから、個性さえ伝われば特定の層には売れるし、まあまあの規模になるんです。

――でもインフルエンサーって、なりたいと思ってなれるものなのでしょうか……?

こうみくさん

実はインフルエンサーを養成する学校のような場所も増えています。ほとんどが芸能系の事務所が開いているもので、メイクや配信方法のレッスンなどが受けられるそうです。

――しっかりサポート体制が機能しているんですね。

こうみくさん

ところが今、問題視されているのが、インフルエンサーになりたい子を食い物にするような養成所が存在している“らしい”ということです。アンダーグラウンドな部分なので確かな情報はあまり出てこず、人づてに聞く話ではありますが……。

――と、いいますと……!?

こうみくさん

どうやら地方から出てきた子を寮に住まわせ、衣食住を提供しながらライブ配信をさせるらしいのです。ネットで流行る定番の顔に整形させるケースもあると言います。でもそうまでしても、みんなが売れるわけではないですからね。夢のある職業として確立されたからこそ、こういった問題も出てきています。

――ネットで流行る顔……!(そんな概念が……)

こうみくさん

はい。あるんですよね……。中国語で网红脸(直訳:インフルエンサー顔)と呼ばれています。もし機会があれば、中国の検索エンジン『百度」で“网红脸”と検索してみてください。様々な参考画像が出てきますよ。尖った顎にストレートの長い髪、ぱっちり二重……といった特徴が、標準的なインフルエンサー顔な特徴とされています。

なぜ中国のインフルエンサー経済はここまで発展したのか?

【1】ブランド産業の未成熟

――なぜ中国ではここまでインフルエンサー経済が発展したのでしょう?

こうみくさん

理由は大きく2つあると考えています。ひとつは、ブランド産業の未成熟です。

――ブランド……。あらためて問われると、説明しづらい概念ですよね。

こうみくさん

日本では国産ブランドもたくさんありますし、自然とブランドに対して理解があると思います。ところが中国は長い間において、機能性重視、そしてコスパ重視の価値観が浸透していて、ブランド力で購買を決めるという文化が乏しかった。それが急速な経済発達を遂げ、ここ10年くらいで、機能性や価格性の他に、ブランド志向という概念がようやく広まってきたんだと思います。

――そうなると、ブランド産業は一気に拡大へ向かうのでは?

こうみくさん

とはいえ、まだまだ理解が追いついていない部分があります。お金ができたからブランド物を買ってみようと思うけど、何しろ新しい概念なので、ブランドに対するロイヤリティーも、総じてまだまだ低い……といった感じです。中国社会はまだブランド発展途上のステージにあります。したがって、中国の国産ブランドも、まだまだ少ないのが現状です。

――ブランドに対するこだわりが少ないからこそ、インフルエンサーの存在感が増す……ということでしょうか?

こうみくさん

そうです。なので、ブランドというものに対して、企業や個人という垣根がないんです。わかりやすい例で言うと、中国のファッションECでは、UNIQLO、MUJIのようなブランドの横に、インフルエンサー個人が運営するショップが同じように並んでいます。ユーザーとしては、同じ見え方なのです。


(中国のファッションECサイト。UNIQLO、MUJIの両隣は個人インフルエンサーが看板となっている個人ブランド)


(個人ブランドの一例)

――いいものがあるなら、企業であっても個人であっても同じように広められる土壌があるのですね。

こうみくさん

たとえば日本のモデルがプロデュースしたコスメブランドが、資生堂のような大手の企業ブランドに経済効果で勝てるかというと、難しいですよね。そこには明確なブランド力の差があり、それを大衆が認識しているからです。ところが中国では、多くの人々が、ブランドに対する知識やこだわりが少ないため、たとえば、由緒ある大手の企業のブランドと、インフルエンサーが始めた新興の個人ブランドが横並びに並んでいたとしても、あまり違和感がないのです。さらに言えば、有名インフルエンサーが打ち出す新興ブランドは、中国国内において、世界的な企業ブランドを上回るほどの販売力、影響力を持っている場合もあるほどです。


(左はECサイトにある、中国の若者の間で大人気のブランド、カナディアングースのブランドページでフォロワー44万人。右側はファッション系トップインフルエンサーの個人ブランドページで、フォロワー1,170万人)

【2】Young is King. 若者が引っ張る産業構造

こうみくさん

もうひとつ、中国のインフルエンサー経済を語るうえで欠かせないのは、若者の存在です。『Young is King』と呼ばれているほどですから。

――中国経済は若者が動かしている……ということでしょうか?

こうみくさん

日本では若者はお金を使わないと言われていますよね。高齢化社会で、お金を持っているのはシニア層です。一方、中国は人口ピラミッド的に20~30代がボリュームゾーンで、そこの層が一番お金を使います。中国の上の世代は貧しい時代を生きてきたので、節約志向です。一方で、30代以下の若い世代は生まれた時から中国は経済的に裕福で、しかもみんな一人っ子。自分のためにお金をバンバン使われて育ってきたのです。

――なるほど……! 今の中国経済の勢いの理由がわかりやすいです。

こうみくさん

中国ではインフルエンサー消費はもはや老若男女当たり前になってきていますが、やっぱり一番影響を受けているのは若い世代でしょう。お金を使う若い子向けのアイテムがたくさん出回って、それを若い子に人気のインフルエンサーがどんどん売っていく。そうやって若いパワーで経済全体が盛り上がり、他の世代がその消費行動を追ってきた背景があります。まさに“Young is King”なのです。

ということで、中国インフルエンサーの経済的威力についてさらに深掘るとともに、発展ゆえに浮上した社会問題や、中国が辿ってきた産業構造までわかりやすく解説していただきました。

次回も現地から中国の最新トレンド情報をお伝えいただきます。お楽しみに!

(文:ソーシャルトレンドニュース編集部)

PAGE TOP