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中国でもタピオカブーム!激戦地で“SNS映えスポット”が成功する秘訣とは?

黄 未来(こうみく)

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黄 未来(こうみく)

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今回で4回目となる、中国トレンドマーケター・こうみくさんによる好評連載『中国トレンド最前線!』。今回のテーマは「中国版:SNS映えするお店=网红店(ワンホンディエン)」についてです。

いまやSNSキッカケで新たに流行るモノ・場所が生まれることは日本でも当たり前になってきましたが、中国でもそれは同じ。むしろインパクトやスピードでは日本を凌ぐほどだと、こうみくさんは言います。

中国の“SNS映えスポット”事情とともに、日本でも参考にできそうな“网红店”成功の秘訣を伺いました!

中国で大ブーム!「インフルエンサー店」

こうみくさん

“网红”はインフルエンサーという意味。つまり网红店は、“SNSで影響力のあるお店”といった意味です。ここ10年のうちに発達した概念で、SNS映えするド派手なお店が、中国では非常に増えているんですよ

動画:http://v.douyin.com/hVKxGF/

――これらはカフェですよね? もはやフォトスタジオかというくらい、SNS映えを意識した店づくりですね……!


動画:http://v.douyin.com/hqF9AW/

こうみくさん

そうなんです。いま中国ではTikTokが非常に流行っており、中国国内でのDAUは2.5億人を超えています(※2)。TikTokをはじめとする様々なSNSの台頭で、“网红店”が広まるスピードはより加速しましたね。撮影ブースや“映え”を意識した内装を施した店が急増しています

※1:中国版TikTokは抖音というサービス名
※2:2019年1月のバイトダンス新製品発表会より

――人口で計算すると、中国人の約5人に1人は毎日使っているということになりますね。すごい……!

「マネされやすくて」、「飽きられやすい」

こうみくさん

しかし、“网红店”は流行りやすいという反面、すぐに飽きられてしまうという実情があります。新たにオープンする店も多ければ、廃れる店も同じくらいです

▲すっかり廃れてしまった、とある“网红店”。

動画:http://v.douyin.com/hq1tQ8/

――中国のお店やブランドが長く生き残るのは非常に難しいと聞いたことがあります。見た目のおもしろさは、すぐにマネされてしまうからだと。

こうみくさん

そうです。アイデアの斬新さだけでは、飽きられてしまうのも早いもの。一説には、中国の飲食店の寿命は508日と言われています。とても短いですよね。これが“网红店”になると、さらに短くなるんです

※美团「中国餐饮报告2018(2018年の中国レストラン産業レポート)」より抜粋。

――ブームになったとしても、マネされたり、飽きられたりという課題を克服できない店が多く、商売として続けるのは難しいということですね。

こうみくさん

この問題にうまく対処し、生き残っているお店が、タピオカ屋の『HEYTEA』です。数年前に中国でタピオカブームを作り出してから、今も人気を保つ元祖“网红店”と呼ばれています。なぜ厳しい中国市場で『HEYTEA』が生き残れたのか、2つの理由を説明しましょう

タピオカブームの火付け役、『HEYTEA』成功2つの秘訣

こうみくさん

まず1つ目は、サプライチェーンの強化です。『HEYTEA』は他の“网红店”と差別化をするため、農園を作るといった投資を行い、今までのミルクティーには使えなかった独自の茶葉を使うなど、常に商品開発を磨き続けています

――新しい商品を開発し続けることで、他の店が簡単にマネできなくなるということですね。

こうみくさん

2つ目は、ブランドコンセプトを確立していることです。 “网红店”に多い失敗として、ブランドコンセプトなく、パッケージや内装など表層部だけ工夫しているケースが散見されます。でもそこにコンセプトがなければ、何をやっても統一感が生まれず、お客さんのブランドに対する愛着やロイヤリティーが育ちません。すると、リピートしようという発想にならず、1度試せばいいやと思われてしまうんですね。さらにいえば、飽きられやすい

――お客さんを飽きさせない『HEYTEA』のコンセプトとは?

こうみくさん

こんな面白いエピソードがあります。CEOの聂云宸がかつて『HEYTEA』の味作りに悩んでいた時、SNSでとあるユーザーの“『HEYTEA』は普通だよ。恋するような感覚がしない”という意見を目にしたそうなんです

――“恋する感覚”……。難しいですね。ドキドキや、サプライズということでしょうか。

こうみくさん

そうです。それまでの『HEYTEA』は当たり障りのない、だけど記憶に残らない平凡な味だった。それ故、リピートされないのだと。ここから『“食感”と“香り”にこだわる』という、『HEYTEA』の哲学が生まれたのです

――食感や香りは、恋のようなサプライズを与えられるはずだ、と。

こうみくさん

味の好みは人それぞれですが、いい食感や香りはそれほど差異なく、記憶に残りやすいということに気づいたそうなんです

――確かに、KFCの香ばしくジューシーなチキンにがぶっとかぶりつく感覚は、すぐに思い出せます(笑)。

こうみくさん

そうですよね! 以来、『HEYTEA』は一貫して食感と香りを重視した商品づくりを重ねています。果肉がたっぷり入っていたり、ぷるぷるのゼリーが入ったフルーツティーを展開したり。こういった工夫が、今でも絶えず顧客のリピートを生んでいるのです。顧客のリアルな声から生まれたエピソ―ド、面白いですよね

――まとめると、『HEYTEA』はサプライチェーンを強化することで他店にマネされにくい商品開発を行い、記憶に残る食感と香りというコンセプトでリピートを促す。こうして長く“网红店”として君臨しているということですね。

“网红店”として成功した、日本の『BAKE』

こうみくさん

実は日系のお店で“网红店”として成功している例もあるんですよ。焼きたてチーズタルトで有名な、『BAKE』です

――日本でも大人気ですね。BAKE社が手がける別ブランド『クロッカンシュー ザクザク』は、私も好きで原宿店の前で行列ができているのをよく見かけます

動画:http://v.douyin.com/hqFAWq/

こうみくさん

実はあの原宿にあるZAKUZAKU、中国でも展開しブランドのローンチから1年半ほどで20店舗ほどの急拡大と現地の若者の心を掴んでいます。『BAKE』は単一商品展開なので、“网红店”の課題であるマネされる・飽きられるという課題はよりシビアかもしれません。しかしそれを、“立地”や“コンセプト”でカバーしているんです

――確かに『BAKE』は日本でも非常にコンセプチュアルなブランドとして知られています。それが強みであることは理解できますが、“立地”というのは?

こうみくさん

まず、『BAKE』は上海や北京といった一級都市に、最初のうちは進出しませんでした。二級、三級の都市を中心に事業をスタートしていったのです。日本でいうところの、横浜くらいのイメージでしょうか

――日本の場合は、東京や大阪のような都会から広げていくのが定番というイメージですが。

こうみくさん

中国の場合は、先ほど申し上げた通り、“マネされる”というのが大きな課題です。いきなり都会に出てしまえば全国的に注目を集めることになり、却ってそれがリスクになります

――なるほど……。あえて注目が集まりすぎない場所から攻めていくんですね。

こうみくさん

加えて、必ずそのエリアの一等地に出店することによって、その地域で最も力を持った不動産会社と関係性を築くことができます。一旦その地域の一等地で成功すれば、後発でライバル企業が近隣に出店しようとしても、事前に不動産会社から情報を入手して、対策することができるのですね

こうみくさん

実はこのやり方は『HEYTEA』も同じで、彼らも地方から事業をスタートさせました。この共通項は、非常に興味深いですね。おそらく『BAKE』は、かなり『HEYTEA』を参考にしたのではないでしょうか

――これもひとつの“マネされる”への対処法なのですね。

こうみくさん

はい。そして“飽きさせない”対策として、コンセプチュアルな店舗づくりを徹底しています。まるでアパレルショップのように、季節によって商品や店頭のウィンドウやパッケージデザインなどをガラっと変えるんです。単一商品で飽きられやすい弱点を、消費者に向けたコミュニケーションを随時変更する事でカバーしています。SNS映えのために、何度でもお店に足を運びたいと思わせる。こうしたクリエイティビティは非常に重要です

(北京のZAKUZAKU店内で写真を撮るお客さんたち ZAKUZAKUの公众号より)

(通常時の店舗写真 ZAKUZAKUの公众号より)

(ハロウィン時期の店舗写真 ZAKUZAKUのTwitterアカウントより)

――“网红店”は、オンラインとオフラインを繋げる工夫としてクリエイティビティを発揮すべきだ、と。

こうみくさん

はい。この2社のように、“网红店”として成功した企業の秘訣や理念を理解することで、日本のSNSマーケに携わる方々にノウハウを吸収していただけたらな、と思います

激しい競争を勝ち抜くマーケ戦略

熾烈な競争を強いられる中国市場で生き残るための2つのポイント。それは「ライバルにマネされない」、「顧客に飽きられない」こと。そのために各社工夫を凝らしているということがわかりました。こういった視点は、日本のマーケティングでも非常に参考になりそうです。

次回も、現地から中国の最新トレンド情報をお伝えいただきます。お楽しみに!

(文:ソーシャルトレンドニュース編集部)

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