2013年→2020年で大きく変化した『量産型』スタイル
「ぴえん」「○○しか勝たん」「推しが尊い」……。
今SNS上で数々のパワーワードを生み出しながら“推し”を応援し、甘いファッションで身を包む『量産型』女子。そんな彼女たちのファッションやメイクをコスプレ感覚でマネしたり、その姿をSNSで発信したりするムーブメントが中高生だけでなく、大人女子たちにまで波及しています。
ところでみなさん、2013年頃は、デニムシャツにチノパンを合わせた男子大学生や、ゆるふわ茶髪コンサバファッションで群れる女子大生が『量産型』と揶揄されていたことを覚えていますでしょうか?
この通り、従来の『量産型』という言葉はそもそもあまりポジティブな意味で使われておらず、今のように積極的にマネしたり、ましてや自ら発信したりするなんてことは到底考えられなったカテゴリでした。
そこから約7年が経った今。『量産型』は形を変え、新しくマネされるカテゴリへと生まれ変わりつつあるのです。
そこで、どのようにして今のような『量産型』の形が生まれたのか、そのなり立ちを解き明かすべく、今回は『現代版・量産型』ファッションを愛し、SNSでジャニオタ活動を積極的に発信するラテさんにお話を伺いました。
■ラテさん
1999年生まれ。ジャニーズアイドルグループ「King&Prince」のファン。Instagram ・YouTubeでオタ活の情報発信を行い、人気動画『推しのカードの作り方』では40万回再生を超えるインフルエンサー。
新しい『量産型』を紐解く、3つの疑問をぶつけてみた
どうして今の『量産型』女子は甘いファッションになるの?
行谷
今『量産型』と言われる人は、“推し”という存在がいてオタク気質であることと、ガーリーなファッションが特徴だと考えています。そのファッションやメイクと“推し”の存在は、何か関係があるのでしょうか?
ラテさん
まず、私たちのようなジャニオタ女子は、担当*のことを彼氏のような存在だと思っている人が多いです。だから男性受けが良いとされる、王道の女性らしいモチーフを盛り込んだ服装がジャニオタ女子の中で体系化し、それが今流行している『量産型』として増えているのだと思っています
*担当=自分が推している・好きなアイドルのことを「担当」と呼ぶ。
ラテさん
ライブに足を運ぶことが唯一の担当、つまり好きな人に直接会う方法です。前提として、会場で一瞬でも担当に可愛いと思ってもらうために、デート服のようなかわいらしい格好がしたいんですよ!
行谷
あの過剰なまでのガーリーなテイストは、自分の“推し”のために精一杯努力したいという女の子の気持ちからきているのですね。
ラテさん
もちろん担当からしたら、自分の姿はほとんど見えないのも分かっていますが……(笑)
ラテさん
リボンやフリルがふんだんにあしらわれたメゾンドフルールのトートバッグや、ジルバイジルスチュアートの鞄は、今の『量産型』女子の間でとても人気です
本当に『量産型』=ジャニオタ女子なの?
行谷
最近では『量産型』女子が、ネットやSNSでも注目されていますが、そもそも『ジャニオタ=量産型』と表現されることに対して、どんな考えをお持ちですか?
ラテさん
確かにジャニーズのライブの日には、会場に向かう電車の中が『量産型』ファッションの女の子だらけになることも実際あるので、ジャニオタと『量産型』がイコールで捉えられているという自覚はあります
ラテさん
ですが、実際は現場*に行くと本当に色んな女の子がいるので、必ずしもジャニオタ皆が『量産型』というわけではありません。蓋を開けると生粋の『量産型』の女の子も、“恰好をマネして楽しんでいる”だけの子も、色んな方がいらっしゃいます
*現場=アイドルのライブや、握手会などを行う会場のこと
行谷
世間からどう見られているのかという状況は理解しつつ、『量産型』=ジャニオタ、というイメージが勝手についてしまうことは、違うなと感じていらっしゃるんですね。
ラテさん
そうですね。洋服などが派手な分、マナーが悪かったり、悪目立ちする行動を取ってしまったりする子が一部いると、ジャニオタ自体や『量産型』女子の全体として悪くみられてしまうことは悲しいです
ラテさん
私自身あの可愛らしい独特の雰囲気がとても好きですし、そのような洋服をよく着ます。だからこそ、そういった印象を与えないように、日ごろの行動にはとても気を付けるようにしています
実際の現場ではどんな女の子が多い?
行谷
すでにカテゴリが確立している『量産型』スタイルですが、現場での割合も現在進行形で増えているのでしょうか?
ラテさん
確かに多いですが、少しずつ新勢力も増えてきています。最近は、ベージュ系のファッションで、おしゃれなカフェにいそうな落ち着いた雰囲気の女の子が現場に増えているんです!
行谷
今流行りの白やピンク系の『量産型』スタイルとは、かなり印象が異なるファッションですね! すでにジャニオタ界隈では、このような新しいトレンドが生まれつつあるのでしょうか。
ラテさん
はい。かつての女の子らしい要素は残しつつも、色味や雰囲気がやわらかくなったいわゆる“大人女子”ファッションの女の子が新しい系統として増えています!
行谷
そんなトレンドがあったとは知りませんでした! ラテさん、貴重なお話をありがとうございました。
新しい『量産型』は、“好き”を貫く女の子たちの新しい文化
2020年になり、以前とは大きく意味を変えて再登場した『量産型』女子。
共通の“推し”がいる女子同士の強い結びつきの中で生まれたファッションやメイク。それが界隈で盛り上がり、オタク女子としての新しい象徴になったことで一般の人にも興味を持たれ始め、世間的な流行にまで拡がったのでは、と筆者は考えています。
それだけでなく、かつての絶滅した『量産型』のような、周りと違う恰好をして浮かないための「自己防衛としてのファッション」ではなく、自分の好きな界隈で好きなものや世界観を楽しみ共有する、「新しい文化」なのだと感じました。
今回お話を伺ったラテさんのような、熱狂的なオタク女子たちが生み出すニッチな文化やコンテンツは、これからもSNSなどでの流行に大きな影響を与えていきそうです。
(文:行谷麻衣)