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大人になるって何だろう 『THE LAST-NARUTO THE MOVIE-』が教えてくれた劣等生のサクセスストーリー

小峰克彦

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小峰克彦

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2014年11月10日に「週刊少年ジャンプ」(集英社刊)にて15年間の連載を終え、完結した『NARUTO』。その人気アニメシリーズの映画最新作で完結編『THE LAST-NARUTO THE MOVIE-』が6日公開初日を迎えました。新宿バルト9での舞台挨拶にはナルト役の竹内順子、ヒナタ役の水樹奈々らメインキャストである豪華声優陣が揃い、劇場は大盛況。

この作品は漫画699話と最終話700話の間を繋ぐストーリー。まさにこれを観ないと『NARUTO』は終わらない!そんな大作です。

この日はナルトの息子「ボルト」を主人公とした新作映画の公開情報が発表されたこともあって、「終わり」ではなくこれからのナルトの物語に期待する言葉がキャストから多く聞かれ、和やかな雰囲気。その中でもサクラ役、中村千絵が原作者、岸本先生に対して「映画と漫画の間が気になる。サクラの恋愛も書いて欲しい」とお願いする場面が印象的でした。その要望に共感して何度も頷くお客さんも見られます。

会場は家族連れ以外に若者が多く、20歳以上に見える方がほとんどです。不良っぽい人や読者モデルのように綺麗な女の子のグループ、オタクっぽい男子のグループや内気そうな女子の2人組など多種多様な方が来ていました。ナルトのアニメが放映された当時に主人公である彼と同い年、小学生くらいの年齢であったことが伺える世代です。

動員も公開初回の土日2日間で39万6280人、興業収入5億1500万を突破するなど大ヒット間違いなしの記録。

 

■描かれる「実現不可能ではない理想」

なぜ子どもだけではなく、タイプを問わない多くの大人に「ナルト」が刺さっているのでしょうか。それはファンタジーのような設定の少年漫画でありながら主人公ナルトの生きざまには「決して実現不可能ではない理想」が描かれているからに思います。

特に「落ちこぼれ」の烙印を押されつつも、もともとポテンシャルがあったナルトが努力を重ね、それを周囲が認めていくさまは1度でも「劣等生」というレッテルを貼り付けられた人なら必ず共感できる筋書き。それゆえに「自分にも真似できそうなサクセスストーリー」たりえるのではないでしょうか。

 

■大人になるということは、「自分より“大切なだれかのため”に行動できること」

『NARUTO』全シリーズを振り返ると、愛に飢え、「自分を認めさせるために火影(里で一番権力をもつ忍者)になる」と公言し周囲にうとまれていたナルトが「特別な人を守る」「友だちの誤った選択を止める」ことに夢中になるごとに、逆に愛情を与える存在となっていくことがわかります。最終的に漫画の最終回で描かれているように周囲から慕われ「火影」という地位に就きます。結果的に彼は夢を叶えたのです。「自分をみんなに認めさせる」という欲が消え、行動の目的が「大切なだれかのため」に変化する。それがすなわち大人になることなのかも知れない。そんなことをナルトからは学びました。

 

■理想を口にしていた子ども時代に戻れない悲しさ

今作では回想として子ども時代の彼らも出てきます。体の小さいキャラクターを観ているとリアルタイムで視聴していた自分の小学生時代を思い出し、久しぶりに仲が良かった友だちに会った気持ちになりました。

純粋に夢や理想を口にしていたころに戻れない悲しさがある分、苦悩を乗り越え成長し、いまを必死に生きるナルト。

漫画ではしっかりと語られなかった彼の恋愛も今作の見どころの一つです。劇中には昔の彼を知っているだけに気恥ずかしくなるようなシーンもあります。しかし身体も心も大人になった彼の恋愛には23歳の男子として共感してしまいました。昔から知っている友だちの恋愛を見ているようで下手なラブストーリーより染みます。

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大人になった今だからこそ見てほしい『THE LAST-NARUTO THE MOVIE-』。しばらく『NARUTO』 から離れていた人、これから初めて観る人にとっても新しい感情に触れられる映画だと感じました。

特に小学校時代の友だちと久しぶりに集まってワイワイ観に行くことをオススメします。子ども心に戻れるだけではなく、知らず知らずのうちに大人になった自分にきっと気づけるはずです。

 

(文:小峰克彦)

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