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「実は違法じゃないんです」R15映画をラクラク鑑賞している中学生に直撃

大久保彩乃

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大久保彩乃

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先日映画館でのこと。混雑した中で1人の小学生がふらふらーと劇場に入って行きました。
しごく普通、当たり前のことなのですが、その劇場の上演作品をみてぎょっとしました。

それは、平凡な日常を送っていた福士くんが命をかけたゲームに巻き込まれる話題作、“R-15指定作品”(『神さまの言うとおり』)だったのです。

しかし今回見かけたのはどう見ても小学生。神さまの言うとおりにしなくてもいいから、せめて劇場のいうとおりにしてほしい!それにしても、普通ならチケット購入の際に年齢確認をされるはずなのに何故……。

実はこの映画館、最新技術を導入していてチケットはタッチパネルを使い自分で購入するタイプ。しかも入場の際のチケットもぎり係は少しだるそうな学生アルバイト。少年は容易にR-15作品を見ることができてしまったわけです。

そもそもR-15指定映画とは、『主題や題材の描写の刺激が強く、年少者には、理解力や判断力の面で不向きな内容が含まれている。』として15 歳未満は観覧禁止とする規律のこと。映画界以外の第三者によって運営される自主規制機関「映画倫理委員会」によって審査されています。そう、実はR-15指定とは法律ではないため、破っても罰せられることはありません。

法律ではないけれど規律ではある、という微妙な線引きがこのような事態を引き起こしている気がします。
そこで今時の映画事情を知る現役中学生に話を聞くことができました。彼は13歳にしてR15映画鑑賞しているというのです。

●映画好き中学生に聞いた、13歳の好奇心とませてる本音!

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――R-15作品についてどんな意識を持ってる?
正直な所、あんまり意識はしてないですね。内容も、そんなに驚くほどグロいわけでもエロいわけでもないし。むしろこれでR-15なんてヌルいなって思うことが多いですね。

――その言い方だと、もう結構な数の映画を観ていそうだね。
映画が好きなんです。だからいろんな作品を観たいけどそういう制限があると億劫に感じます。そもそも芸術鑑賞なのに、なんで駄目なんだろうと思っています。それで1年くらい前にダメ元で映画館に行ったら1人でもあっさり見られてしまったんです。
あれ、いいんだ?みたいに感じました(笑)。拍子抜けでそれから抵抗なくなりましたね。

――周りもそんな感じ?
はい。みんな、観たい映画を観ますね。みんなでR-15を観に行くことも多いです。チケットを自分で買える映画館に行けば楽勝ですよ(笑)ちゃんと料金は払っているんだから、いいんじゃないですか?

――罪の意識はないの?
うーん。あんまり。でも自分の観たいものを我慢したくないし、それで気持ち悪くなったり、観なきゃ良かったって後悔してもそれは自己責任かなって思います。それに、ダメって言われたら余計気になるんですよ。だって面白そうな予告編ばっかりだもん。それで見ちゃダメなんてひどいです!

純粋な映画欲故に観てしまう、また観てしまえるのが現状で、そこの罪の意識は薄いようです。

にしても自己責任とか、エロがぬるいとか考え方がませている気がしますが思春期の好奇心旺盛な時期、隠されれば隠されるほど覗きたくなる気持ちもわかるような……。

●つづいて映画倫理委員会に突撃取材!しかしまさかの展開に……。

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ではR-15指定を設定する映倫側はどう思っているのでしょうか、取材を行いました。
何人かの職員さんを経てたどり着いた担当者は50歳くらいの男性。

――R-15作品を15歳以下が見れてしまう現状があるようですがどう思いますか?
そんなのね、こちらに言われても困りますよ。

――言われても困るとは?
こっちはきちんと「15歳以下は見てはいけませんよ」、と指定を行っているんですから。実際に守ってもらうには劇場側にしっかりしてもらうしかないんです。R-15指定は倫理上の問題なので、破っても法律で罰せられることはありません。でもこっちは世の中に提示していますし「年齢確認をしてください」と全国の劇場にも喚起しています。それがきちんと実施されているか、すべての劇場に確認しに行くことはできないですからね。

――しかし、せっかく決めたR-15指定が破られているのはとても悲しい現実ですよね?
そりゃあ私どもはせっかく決めた決まりが守られていないのは無念ですよ。

――今後どう改善していくかとか予定はないのでしょうか。
ないですよ。委員会は劇場に「きちんとやってください」と呼びかけるしかないし、それならもうやっています。というより、あなたライターなんでしょう?だったらそうやって書けばいいじゃないですか。守るようにって。

――え、いやそれはもちろん書かせていただきますけれども……。

こんな具合でまくしたてられ、予想とだいぶ違う取材結果になったのでした。
実際に行っているのは月1で行われる、委員会と劇場会社の話し合いでの呼び掛けのみ。対策や取り締まりをする予定さえないようです。これではR-15映画を観てしまう15歳以下の子が増える一方なのも頷けます。

しかし映倫の管轄は映画を審査、R15指定を行うところまでです。公開したのちの責任は劇場にあるのでR15指定を見てしまえる現状を考える上で、責められるべきは映倫だけではないのかもしれません。

映画区分を行うだけの映倫。危機感無く15歳以下を受け入れる劇場。それをいいことに興味のむくまま娯楽にいそしむ子どもたち。

いたちごっこな3つの立場は滑稽にも見えます。

階段を上ったことを実感するには、多少の障害が必要。大人になるということは、単にグロやエロに免疫があるのかだけではない気がするのです。

筆者は15歳になった時、真っ先に『バトル・ロワイアル』(深作欣二 2000年)をレンタルショップに借りに行った覚えがあります。貸し出ししてもらえるか手に汗を握りながら、昨日の私とは違うという緊張とワクワクでいっぱいだった懐かしい思い出です。ショッキングな内容に衝撃を受けたと同時に「ああ私は大人になったんだ」と実感しました。

正直、映画欲を邪魔されない現代の中学生がうらやましい!

律儀にR-15を守って、観たい作品を我慢していた私ってなんだったのでしょう……。

しかし、不自由から解放された時の嬉しさを、今ドキの子たちは知らずに大きくなってしまうのだと思うと、少しかわいそうにも思えます。

(文:大久保彩乃)

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