ー3カ月前、童貞を捨てた。思ったほど、世界は変わらなかったー
チェリーについて

RADの歌詞から逆算 新海誠が語る『君の名は。』ラストの決め方

(c)2016 TIFF

10月25日から11月3日にかけて開催された、東京国際映画祭。ここでしか見られない、世界の映画を見られるのも本映画祭の魅力だが、実は邦画ファンにとって魅力的なのが、昨年新設された『Japan Now』部門。
安藤紘平氏のセレクトにより、2016年を代表する邦画が上映され、しかも監督や出演者とのトークセッションも見られるという企画だ。

そして、今年2016年は邦画の当たり年。3月にオープンした“永遠のオトナ童貞のための文化系マガジン・チェリー”でも、豊作すぎて、どれを選んでいいか迷うほど、多くの邦画を取り上げてきた。インタビューした監督は、岩井俊二宮藤官九郎西川美和山下敦弘……と錚々たるメンバー。
そこで、本記事は過去のインタビュー記事とともに、『Japan Now』部門でのトークセッションの内容をレポート。コレを見れば、一足早く2016年の日本映画が総決算できる……はず!

新海誠監督「どんなカップルも、『もう少しだけくっついていよう』の繰り返しで一生は続いていく」

まずは、興行収入179億を突破した『君の名は。』。
映画祭3日目のこの日は監督の新海誠氏、劇中の音楽を担当したRADWIMPSの野田洋次郎氏が登壇した。
ちなみにチェリーでも先日、下北沢・本屋B&Bにて「三葉は処女か」という議題で激論したばかり。“リア充を嫌うこじらせ男子”たちまでも、こぞって胸キュンさせてしまった背景はどこにあるのか。

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(c)2016「君の名は。」製作委員会

(※本記事はネタバレを含みます。映画『君の名は。』を未見の方は、ご了承の上、読み進めて頂けますと幸いです)

まず新海監督から野田洋次郎氏に向けて、“音楽”だけではなく、“言葉”における信頼も寄せていたことを告白。
「キャラクターに言わせたい気持ちは、普通に言っても伝わらないので、洋次郎さんの書く詞に任せようと思いました。途中までこの映画のタイトルも彼の詞の中から探していたんです」

さらにQ&Aのコーナーでは新海監督からラストシーンの誕生秘話が。
「洋次郎さんからエンディングテーマ『なんでもないや』の“もう少しだけでいい あと少しだけでいい もう少しだけ くっついていようか”という歌詞をいただいた時に、二人を出会わせて終わらせていいんだ――という確信を持てた」と発言。
続いて「どんなカップルも、二人の関係はずっと続くかどうかはわからない。でも『もう少しだけくっついていよう』の繰り返しで一生は続いていくと思えた」とラストシーンの誕生秘話誕生にRADの楽曲が深く関わっていたことを語った。

関連リンク
RADWIMPSの激動の3カ月を並走! 朝倉加葉子監督が見たRADの正体

※新海監督も絶賛した野田洋次郎氏率いるRADWIMIPS。チェリーは彼らのドキュメンタリー映画についても取材を行っているので、ぜひこちらもご覧ください。

『湯を沸かすほどの熱い愛』監督
「オファー前から杉咲花で当て書きをした」

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(c)2016 TIFF

10月29日から一般公開もはじまった『湯を沸かすほどの熱い愛』にも潜入!
主人公・双葉(宮沢りえ)の娘・安澄を演じるのは、ゆうばり映画祭の受賞時など、チェリーがオープンして半年で2回も登場してくれた杉咲花さんだ。

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(c)2016「湯を沸かすほどの熱い愛」製作委員会

今回の『湯を沸かすほどの熱い愛』でも、中野量太監督と、杉咲花さんにインタビューを実施した。

ティーチインでは満員の観客が待ちわびる中、中野監督が登場。
中野監督は宮沢りえさんにオファーをするより前に、会ったこともなかった杉咲花さんを当て書きして脚本を作ったという。
「若い世代で安澄を演じられるのは、憂いや、寂しさを背負っている彼女しかいなかったと思う」と絶賛した。

でも、松坂桃李さんの大ファンの方が「正直、桃李くんの姿だけを見るために映画を観に来たのに、ストーリーに入り込みすぎて、桃李くんの姿を追うのを忘れた」と発言。
一足先に本作を観たという滋賀県からやってきた男性も、「中野監督に直接感想を届けにやってきた!」とまさに“熱い”感想を披露した。
多様な理由で来場した人々が、感激の声や、積極的な質問を監督に投げかけ、まれにみる愛に溢れた舞台挨拶となった。

『怒り』李監督「森山未來君に演技の要求をしたことは無かった」

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李相日監督の3年ぶりの新作となった『怒り』も『Japan Now』部門で上映が行われた。
ティーチインには李監督と“沖縄に突如現れた謎の男・田中”役の森山未來さんが登壇。会場は日曜日の終電間際にも関わらず、多くの観客が集まった。

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(c)2016映画「怒り」製作委員会

千葉・東京・沖縄にそれぞれ素性の知れない指名手配犯に似た男が現れ、周囲の人物が彼らを愛すれば愛するほど「彼は殺人犯なのではないか」という疑惑にとらわれてしまう――李監督の現代を舞台にしたフィルモグラフィの中でも、かなり骨太な人間模様を描いた本作。
李監督は「最初の編集では4時間ありました。東京編、千葉編、沖縄編と3本の映画を撮るような気持ちで臨みました」と巨編の制作を振り返った。

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森山さんは「沖縄の持つ闇が演じている田中に同化したように思える瞬間がありました」と自分が演じた役を分析し、「沖縄はオープンな空気感とは裏腹に、かなり闇深い一面もあります。日雇い労働をしようと沖縄を訪ねたこともありましたが、周囲に『そこで働く人は素性が知れなすぎる』と止められました」と告白。
『苦役列車』の時にも、役作りのために四畳半で生活していたという森山さんのコメントは、さすがの役者魂を感じさせるもの。
李監督は「田中は未來君しかいないという話を、撮影前にはよく自分の周囲に言っていました。田中を演じる上で重要なことは自由度。未來君がイスラエルから帰ってきて最初の舞台を観た時、未來君にやってもらうことを決めました」とベタ褒め。
現場でも李監督から森山さんに「こういう演技をしてくれ」と要求することは無かったという。
お互いの信頼感に満ちた発言が目立った『怒り』の舞台挨拶。日本を代表する監督と俳優の“本作限りには終わらない”絆を目撃することのできたイベントとなった。

(文:小峰克彦)

※宮藤官九郎監督『TOO YOUNG TO DIE! 若くして死ぬ』、岩井俊二監督の特集上映(『Love Letter』、『スワロウテイル』など)をレポートした第二弾弾記事はこちら!

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