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情報の“ケーキブッフェ化”?赤文字・青文字が消えた理由

あまの さき

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あまの さき

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かつて、女性ファッション誌は『JJ』や『ViVi』などコンサバ系の赤文字と、『Zipper』や『CUTiE』など原宿系の青文字に二分されていました。

ところが時代の移ろいとともに、両者の境は曖昧に。これは一体なぜなのか? そして、現在のファッションとファッション誌の関係はどうなっているのか?

2000年初頭まで『ViVi』の黄金期を支えた編集者・軍地彩弓さんに伺いました。

2007年以前のファッション雑誌


――以前はファッション誌といえば赤文字系と青文字系に分けられていましたよね。

「雑誌はもともとセグメントメディアでしたからね。各雑誌が、メインとなる読者の年齢層や居住エリア、職業などの背景をディスクライブして、そのデータを広告代理店に提出していたんです。

その中で『ViVi』は、全国区の18~25歳までのトレンドに敏感なミーハーな女の子たちというセグメントでした」

――競合する雑誌との棲み分けは?

「よく比較されたところでいうと、『CanCam』でしょうか。あちらも同じく20代なんだけど、もうちょっとお姉さんで、えびちゃん(蛯原友里さん)やもえちゃん(押切もえさん)を中心にして、“モテ”を推していましたよね。一方で『ViVi』は安室ちゃんを中心に、デニムに腹見せのTシャツという、全然違うファッションを展開していました」

――たしかに、お嬢様風の『CanCam』と、かっこいいギャルの『ViVi』。同じ年齢層をターゲットとしていても、明確な違いがありましたね。

「男の人からしたら20代の女の子って1つの同じくくりだったかもしれないけど、女の子同士の中でははっきりとした違いがあった。特に青文字に関しては、モテよりも自分たちの個性を重視していましたよね。当時はそんな風に細分化されていて、部族のように個人のファッションが雑誌に帰属していました

――ファッションが雑誌に帰属……本当にそうでしたね。

「『ViVi』の全盛期である2000年から2007年にかけてというのは、『ViVi』の読者の女の子はだいたい同じ服を着ていて、同じような化粧をしていて、同じようなブランド物のバッグが好きだったんです。

だから、企画を考えるにしても読者の女の子がどういう服を喜んでくれるのか?誰が誌面に登場したら喜ぶのか?ということが、ある意味で分かりやすかったんです」

幕の内弁当からケーキブッフェへ 変化した情報のとり方

――その境界線が曖昧になったきっかけはなんだったのでしょう?

「大きなきっかけはスマホの登場なんじゃないかなと思います。

それまでファッション誌が担っていたセグメントの枠が、スマホの登場によってより小さなものになりました。その結果、は雑誌じゃなくて、人に帰属する時代になったと思うんです」

――確かにそうですね。全然ギャルじゃない子も、この子のメイクが好きだから、という理由でギャルのアカウントをフォローしていたり……。

「世の中のそういった流れに合わせて、『ViVi』の中にも色んな個性が集まってきました。以前ならできていた“ViViっ子”の定義が、ものすごくふわっとしたものになりましたよね。

SNSの世界では好きな人をフォローすることで、自分だけのメディアが作れます。つまり、スマホは自分の“好き”を凝縮した個人メディア。自分が好きな人を好きなだけ集めればいい。まるでそれは“食べ放題のビュッフェ”のようだと思うんです」

――食べ放題というのは、面白い表現ですね。

「これに対していうならば、以前の雑誌は“幕の内弁当”でしょうか。お弁当屋さんによって中身は変わるんだけど、中でもここのお店の幕の内弁当は、主菜から副菜まで全部気に入っているという状態。だから、『ViVi』が紹介するスカートは絶対可愛いに決まっている、とか、『ViVi』に載っているんだからこのモデルはかっこいいんだ、とか、信頼していたんですよね」

――それが今は、食べ放題……。

「そうです、自分の好きなモノを好きな量だけ。それがスマホの中に詰まっている……ケーキブッフェのような状態なのかな。しかも、それをある程度自分の好きな見え方で保存しておくことができるのも魅力ですよね。

これは実は社会も同じで、組織がゆるくなって個人が強くなりました。大衆から、個の時代。くくりというものがあやふやになって、1人1人のライフスタイルや1人1人のファッションが別なので、同じところにいるから同じ服が好きというわけではないんですよね

そういう時代に対応するために、雑誌はInstagramの画面のように“ケーキブッフェ”化していった。でもそうなると、雑誌の色はどうしても薄くなってしまいます。この時代になるほどに、境界線は曖昧になっていくのです」

自分のプレートを見つける楽しみ

「個の力が強くなった」と話す一方、「様々なファッションが入り乱れていたはずの原宿の交差点で、トレンチコートを着た人を、信号が1度変わる間に5人も見た」というエピソードも、軍地さんは話してくれました。

それぞれの“好き”が多様化しているように見えて、“ギャル”や“お嬢様”のような、個々の雑誌の独自の色が出しにくい時代。それはつまり、ファッションが画一化されてきている、と言い換えることができるのではないでしょうか。

雑誌によってはっきりとしたお手本が提示されていた時代と、それぞれの“好き”を集合させることが可能になった結果、個性が曖昧になっている現在。どちらがファッション史として面白いのか、それは過ぎてみて初めて分かることなのかも。

(文:あまのさき)

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