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“好き”で消費する時代に、インフルエンサーマーケティングはどうあるべきか

佐藤由紀奈

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佐藤由紀奈

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個人の影響力がどんどん増してきた今の時代。“インフルエンサーマーケティング”というワードはずいぶんと市民権を得てきた。

ある種のブームとも呼べる状況の中、あらためてインフルエンサーマーケティングの本質や今後を考えるべく、日本を代表するPRパーソンであり、インフルエンサーマーケティングの第一人者ともいえるブルーカレント・ジャパン代表取締役社長・本田哲也さんにお話を聞いた。

10年前と変わったインフルエンサーを取り巻く環境

「初めにインフルエンサーマーケティングが注目されるようになったのは2005年から2008年頃。今から10年くらい前になりますが、本質的には今も定義や考え方は一緒です。個人が影響力を持つ時代。その人たちと一緒にマーケティングをやっていこう、という。でもやっぱり、環境は大きく変わっていると思います」

――10年前というと、ブログやmixiが流行っていた頃ですね。スマホはまだ全く浸透していない時代です。

「かつてはインフルエンサー=ブロガーでした。でも当時フォロワーという概念はなかったので、測れるのはPVだけ。そうすると、それまでマス広告ばっかりやってきた大手企業にとっては、数値のインパクトが少なすぎたんです。それはそうですよね」

――TVCMの“GRP”といった指標に慣れていると、「ブログで10万PV」と言っても、なかなかピンと来ないかもしれません。

「でも当時は“新しいから”という理由で、理解が及ばないままインフルエンサーマーケティングをやってみるというケースが多かったから、期待と結果にギャップが生じてしまった」

――ブログは今のSNSよりもクローズドな世界でしたし、影響力を可視化するのは難しかったでしょうね。

「でも今は違う。スマホが普及し、SNSがインフラ化して、10年前よりも本当の意味でインフルエンサーが活躍しやすい時代になってきた。以前とは比べものにならないくらいリーチできるようになったので、再び脚光を浴びたのだと思います」

「インフルエンサーも多様化してきました。ブロガーだけでなく、YouTuber、インスタグラマーにツイッタラーと、表現の場が色々ある。インフルエンサーのインフルエンスが波及する環境が整ったと言えます。それがここ10年で大きく変わったところかなと」

“好き”で動く時代だから、第三者性が重要

――あらためて、インフルエンサーマーケティングをやる意味とは、どんなところにあると思われますか?

「僕の考えでは、“これこそPRである”と思っています。なぜなら、PRというのは第三者発信というのがすごく大事。僕はインフルエンサーのことを昔から必ず“影響力のある第三者”と定義しているんです。みんなインフルエンサーというと“影響力”に目が行きがちだけど、でも実は“第三者である”っていうことが重要なポイント。それは消費者が、広告だけでは信用しなくなっているからですよね」

――消費者は、昔よりも疑い深くなっているということでしょうか。

「“消費者が疑い深くなっている”というのはここ数年言われていた文脈ではありますが、でも僕は最近、疑い深くなったというよりも、消費者の行動原理がより“好きかどうか”だけになっているんだと思っています。“だって好きなんだもん”っていう、理屈ではない話」

――より直感的に、好意を抱くものに対して素直に行動するようになってきているということですね。

マーケティングは恋愛 告白は“広告”で決める

――反対に、こういう場面ではインフルエンサーマーケティングを“やるべきでない”というのがあれば教えてください。

「インフルエンサーマーケティングの意義は第三者性にありますが、反対に、第三者性がいらない・ない方がいいというケースもあります」

「例えば企業としてのビジョンやメッセージ。品質なんかもそうです。それは当事者のあなたが言わなくてどうするの、となる。今インフルエンサーマーケティングが流行っているからって、何でもかんでも言わそうとしたら、逆効果ですよね」

――インフルエンサーのような第三者が言うべきものと、当事者が言うべきものは種類が違う、と。

「よく講座などでは“恋愛に例えてみてください”と話しているんです。ある異性にアプローチしたい時に、しつこく『付き合ってください』と言うよりも、その子の周りの友達なんかに『あの人すごくいいよね』と言ってもらえた方が、信用してもらえる。これがインフルエンサーマーケティングです。でもじゃあ、『告白まで友達にやらせますか?』という話です

――それは最悪というか……ダサイですね。

「ダサいですよね。すぐ分かるじゃないですか。でも企業のマーケティングになると、案外それが起こっちゃう。『我々はこうだ』『こういう者である』っていうことは格好よく、それこそ広告なんかで言わなきゃなんです」

――そう思うとPRだけやっていてもダメだし、広告だけやっていてもダメ、ということですね。

両方必要だし、どのタイミングでどうするかを決めるのが戦略ですよ。いつ友達に言わせて、自分が告白するのはいつで、どんな場面にするか。その告白の方法を考えるのが広告クリエイティブの仕事だったり、告白する場所を考えるのがメディアプランニングだったり」

――なるほど……! 恋愛に例えられると、すごく納得感があります。

「そうですよね。マーケティングなんて、恋愛みたいなものですから

PRで重要なのはOutputの先の効果検証

――ここまでお話をお伺いして、インフルエンサーマーケティングの意義について、これまでよりも理解が深まりました。

とはいえ、やはり“効果が見えづらい”というのを課題に感じているマーケターは多いように思います。効果検証については、どのようにお考えでしょうか?

「これは非常に旬な質問ですね。確かに、いろんなシーンで課題として話題にのぼります。日本は特にそうですが、Outputと呼ばれる、リーチ数や記事掲載数といった、施策を実施して一義的に出てきた数値報告で終わってしまいがちです。これはインフルエンサーマーケティングに限らず、PR全体の話になりますが」

「でも欧米では、その先のOutcomes、Outtakesと呼ばれるエンゲージメント率や購入意向の変動、すなわち“ターゲットオーディエンスにどのくらい響いて、影響があったのか”の検証がより大事だと考えられています。ここがブラックボックスになってしまっていると、『なんとなく良かった気がする』という、原始的な会話しかできない。こうならないための効果検証が必要ですね。インフルエンサーマーケティングを含む、PR施策全体においてこのような意識がより重要になってくると思います」

“好き=信用”の時代に、誰を巻き込むべきか

2010年代以前の第一次インフルエンサーブームがそうであったように、今もまだ、「流行っているから」「今までやったことがないから」という理由でインフルエンサーマーケティングを実施しているケースは少なくないように思う。

本田さんの話にあったように、何でもかんでもインフルエンサーではなく、目的に合わせた戦略立てが重要だ。マーケティングは消費者に“好き”になってもらうためのコミュニケーションであり、恋愛のようなものなのだから。

(文:佐藤由紀奈)

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