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『リアル鬼ごっこ』トリンドルが出る意味 現代女子のアイコンが血塗れパンチラ疾走!

小峰克彦

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小峰克彦

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7月11日から公開されている映画『リアル鬼ごっこ』。

原作の小説は全国の「佐藤」の姓の人々が、ある日突然何者かに追われ、殺されるというストーリー。累計200万部を売り上げ、何度も映像化された問題作だ。

今年、改めて映画化されるにあたり虐殺のターゲットとなったのは「JK(女子高生)」。

予告編では「全国のJKの皆さん、あなたたちはちょっとふてぶてしいので、数を減らすことにします」とおどろおどろしいセリフも……!

特筆すべきは今回の映画化における監督が、日本を代表する鬼才・園子温だということ。

最近は “1人も死なない怪獣映画”『ラブ&ピース』など、“エログロ”のイメージから離れつつある園監督。

そんな彼が、久しぶりに血にまみれた映画を撮ったということで、本作に注目が集まっている。

『バトル・ロワイヤル』から15年、若者を騒がす問題作が再び登場

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“ある日突然、青春まっただ中の制服の若者たちが大量に殺される”映画と聞いて、思いだす作品の一つに『バトル・ロワイヤル』(2000年)がある。

当時の衆議院議員・石井紘基が、国会で『バトル・ロワイヤル』の原作本に対する政府の見解を求めるなど、この作品には「中学生が殺し合いをするなんて、命を軽んじている」というイメージがまん延していた。

しかし実際には、鑑賞当時、高校生だった筆者に “命の大切さ”を教えてくれた映画だ。あの時の感動は昨日のことのように覚えている。

本作、『リアル鬼ごっこ』もまた、大人が予想だにしない学びを高校生に残してくれたのではないかと感じた。
 

実は平和で幸せな“つまらない”毎日が強制終了

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いま高校生活を送る人の中には、毎日をそれなりに楽しみつつも、「このつまらない人生がずっと続くのかな」と考えている人も少なくないのではないだろうか。

スマホやテレビから“作られた理想の青春”が大量に発信される現代。

それらと比べて、若者たちの現実は“まったくドラマチックなことが起こらない”つまらない青春だと感じてしまうことは仕方がない。

だが多くの人は大人になって振り返ってみると、その時間がキラキラと輝く純粋な青春の思い出として残るのだが……。

しかし大人になってから「当時は幸せだった」と気づく場合はまだ幸福だ。

本作の設定のように、ある日突然訪れた悲劇によって“幸せを実感させられる”という不幸もある。
 

園子温ワールドで血まみれでたたずむトリンドル玲奈

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園子温監督の作品はいままでキャスティングにおいても観客を驚かせてきた。

今回、主演に選ばれたのはトリンドル玲奈。“CMに数多く出演しているモデル出身のゆるふわ美女タレント”は一見、“エログロ”バージョンの園子温の世界観にはそぐわないように思える。

しかし彼女の初主演作となったこの作品は、日本の残酷映画に新しい、たしかな可能性を与えた。

過去にも園子温が“新宿武蔵野館の歴代動員数を塗り替えた”ヒット作『自殺サークル』(2002年)で、新宿駅のホームで女子高生54人が手を繋いで飛び降り自殺するシーンを描き、当時の邦画ファンの中に、今までにない需要を生んだ。

『リアル鬼ごっこ』も、そのシーンがルーツとなったような女子高生の衝撃的な虐殺シーンが頻出している。

そんな異常な園ワールドの中に立ちつくす、華奢すぎるトリンドル玲奈のたたずまい。

多くの友の死を1人で背負っているかのように絶望を重ねていく表情の妙なリアルさ。

それらが、いままでの園作品に見られない種類の神秘的な画を作りだしている。
彼女が主役を演じたことで、スプラッター映画ファンにも新鮮な作品となったのだ。

その一方で、このようなジャンルを普段観ない人たちを取り込む間口となったことは間違いない。

“何者かに目の前で友達が次々と殺されていく”正体不明の惨劇。

それを終わらせるために“キラキラ女子の体現者”が泣きながら、友の血にまみれながらも走る。

その“体現者”が、今までの出演作では華やかな容姿ながらも、平和で天然なキャラクターが多かったトリンドル玲奈なのだ。

その点が高校生のみなさんを“スクリーンの中の理不尽な状況”に感情移入させるのではないだろうか。

とっつき易く、ゆるふわな雰囲気を兼ね備えている彼女が主演の1人を演じたからこそ、観客は“普通な自分”と戦う勇気をもらえるのだ。
 

『リアル鬼ごっこ』でしかに教えてあげられないこと

「人生はシュールだ。シュールに負けるな」

劇中で冨手麻妙演じるJKが、授業をさぼる同級生に対してこんなセリフをいう。

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「こんな理不尽なことがあってたまるか……」と思う機会はこれからもっと多くなるだろう。正体不明の風に体が斬られるということはなくとも、「死にそうだ……」っと思う状況に陥ることは幾度となくある。

その時シュールさに呑まれず、現実と戦う姿あなたは、きっとこの作品のヒロインたちのように美しい。

普段観ている“平穏な月曜9時のドラマ”が教えてくれないことを、この作品で血まみれで命を燃やす高校生が教えてくれるはずだ。

(文:小峰克彦)

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■関連リンク
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映画『リアル鬼ごっこ』 7月11日(土)、全国ロードショー
「一度乗ったら、降りられない! 恐怖のジェットコースタームービー!!」
(C)2015「リアル鬼ごっこ」学級委員会

監督・脚本:園子温 原作:山田悠介「リアル鬼ごっこ」(幻冬舎文庫・文芸社刊)
出演:トリンドル玲奈、篠田麻里子、真野恵里菜、桜井ユキ
イメージソング:GLIM SPANKY「リアル鬼ごっこ」(ユニバーサル ミュージック)
配給:松竹、アスミック・エース R-15
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