2015年、ドローン戦争映画が2本
第28回東京国際映画祭「コンペティション」部門に出品されている映画『フル・コンタクト』。ドローンを操縦するひとりの兵士が主人公だ。彼は戦地には赴かず、コンテナの中からドローンの遠隔操作によって異国での殺戮を行い……といったあらすじを追うと、どこかで聞いたような気が。そう、10月1日より日本で公開中の映画『ドローン・オブ・ウォー』と内容が類似しているのである。
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子どもを殺してしまったことで、主人公が悩み始めるといった設定も同じ。もちろん、これは「パクリだ!」とかそういう話ではない。『ドローン・オブ・ウォー』はアメリカ、『フル・コンタクト』はオランダ・クロアチアの共同製作の映画であり、同時期に、同じ問題を取り上げる映画が2つできるほど、この問題が大きな社会問題だった、と考えるほうが自然だろう。
仕事がうまくいかなかったとき、どう行動するかで分かれる2本
仕事でうまくいかなくて女に逃げる、というのはよくあるパターンで『フル・コンタクト』では、その方式で主人公は逃避をはかる。
しかし『ドローン・オブ・ウォー』では、その逃げ道ができかけた瞬間、主人公が自らで、その道を断つのである。そして、再び仕事に向き合った結果、ラストは一筋の希望の光りが見える……のはこの記事でも紹介した通り。
『フル・コンタクト』では、精神的なものも含めたその仕事からの逃亡の様子を描くが、大きな解決は示されないままだ。結局、仕事に戻るシーンもない。もちろん、個人の力で解決できない問題であるからこそ、このような社会性の高い映画作品のテーマと成り得るのだが、個人の抵抗が描かれる『ドローン・オブ・ウォー』に比べると、いささかの物足りなさは否めない。
というか、『フル・コンタクト』は『ドローン・オブ・ウォー』に比べて、格段に仕事をするシーンが少ない。対局にありそうな日本のポップな映画の代表格『モテキ』ですら、主人公が再びヒロインに振り向いてもらう前にとった行動は“仕事をする”である。
“大きな体制に戦おうとする個人”を描くからこそ物語になる
ドローンによる遠隔殺人がおこなわれているという事実を前に、確かに一個人にできることなど、小さなことかもしれない。しかし、それでも“大きな体制に戦おうとする個人”を描くからこそ物語足りうるのではないだろうか。
仕事の悩みは仕事で解決するしかない。戦争映画であるということを抜きに、自分たちの生きる世界のレベルで考えてみても、2作品を比較すると、そんな当たり前のことが見えてくる。
(文:霜田明寛)
【関連リンク】
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【作品情報】
タイトル :フル・コンタクト
スタッフ:監督/脚本 : ダビッド・フェルベーク
キャスト:グレゴワール・コラン
リジー・ブロシュレ
スリマヌ・ダジ
© Lemming Film 2015
105分 英語、フランス語 カラー | 2015年 オランダ=クロアチア |
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