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「20歳に戻りたいとは思わない」 『あやしい彼女』志賀廣太郎インタビュー

小峰克彦

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小峰克彦

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倍賞美津子演じる73歳のおばあさん、瀬山カツが突然20歳に若返り、歌手としてあきらめていた夢を叶えていく……。
多部未華子主演のコメディ映画『あやしい彼女』が4月1日から公開がはじまった。
その中で瀬山カツの幼い頃からの親友であり、淡い恋心を抱き続けている次郎を演じたのが、志賀廣太郎だ。
そんな“一目見れば、誰もがピンとくる名脇役”に幼少期の話や、本作でも名場面を生んだ“泣く演技で心がけていること”など、現場の話について伺った。

小さい頃から常にお芝居がある環境で育った

――倍賞さん演じる、カッチャン(瀬山カツ)との絆がとても素敵でした。
最初に脚本を読んだ時、次郎という男性にどのような印象を持ちましたか?

「倍賞さん演じるカッチャンにとても支えられている人であり、カッチャンを支えている人だと思いました。
怒られてばっかりいるようで、幼い頃から、2人で苦労を乗り越えてきた絆も感じますよね。カッチャンがいたからこそ、一軒のお店を持てる、立派な男になったのだと思います」

――志賀さん御自身も、小さい頃から今までずっと支え合ってきた友達はいますか?

「さすがにカッチャンと次郎ほどではないけれど、幼稚園の同期会はいまだに交流があります。僕が通ってた幼稚園が浜田山にあったのですが、いろんな会社の社宅が多かったんですよ。卒園しても、社宅の中で付き合いがあったので、ちゃんと覚えているのでしょうね。最近になっても同期で集まって、懐かしい話をしますよ。当時の園長先生が来て『子どもの頃、すごいしゃべってたよ』と言われて、全く覚えていなくて驚きました」

――先生の記憶力すごいですね(笑)。 志賀さんは浜田山の後に世田谷区で過ごされたとお伺いしました。

「世田谷は小学校5年から大学出て少し経って引っ越しをするまで、ずっと住んでいましたね。
僕が小さい頃は世田谷にも原っぱがたくさんありました。今みたいに、機械で遊ぶことなんてなかったから、ひたすら走り回っていましたね。

あの頃を振り返って思うのは、原っぱみたいに広いところで遊んでいると、自然に声が大きくなるということです。役者になる前から、発声の練習ができていた気がします。
自分が子供の頃は、今から比べたら不便な時代ではあったんだろうけど、本当に恵まれていましたね」

――本当に素敵な時代ですね。東京でも原っぱがたくさんあった時代はうらやましいです。
志賀さんが演技と出会ったのはいつ頃だったのですか?

「引っ越した先で通った小学校の担任の先生が、民藝の俳優教室に通われていた方で、先生の脚本で演劇をやった思い出があります。小さい頃から“演技”について考える時間は比較的多い環境にいました。
ちなみに、次に進学した中学の国語の先生が演劇部の顧問をなさっていて、高校時代は演劇部に入りました(笑)」

――少年時代の志賀さんにとって演じることが身近だったのですね。いつ頃から俳優を志していたのですか?

「高校生の時、将来のことを考えていく中で、ひとつの選択肢として俳優が挙がりました。
でも、入ろうとしていた俳優座養成所がなくなってしまって……。『いきなり高校を卒業して俳優座養成所に入るのもどうなんだろう、大学を出てからでも遅くはないのではないか』と考え直したのですが、入りたかった俳優座養成所が、桐朋学園に移管されると聞いて、進学しました。身分は学生だし一石二鳥だろうと(笑)。軽い理由です」

――タイミングの良さが奇跡的ですね(笑)。プロの俳優になられる前に、まず演技を教える立場に就いたとお伺いしたのですが、転機はどのように訪れたのでしょうか?

「『教えているだけで本当にいいのか?』と自分に問いはじめて、俳優業をはじめました。実際にやってみると、結果的に生徒にフィードバックできることも多くてよかったです」

「ゼロからお芝居を作るのではなく、自分の記憶を再現する」
“泣く演技”の秘密と現場の話

――この作品に限らないのですが、志賀さんが演じられる泣きのお芝居につられて、よく泣いてしまいます。特に“言葉がつぶれて声にならないセリフ回し”が素敵です。泣く演技をされる時、ついつい言葉が潰れてしまうのか、計算して言葉をつぶしているのか……心がけていることがあれば教えてください。

「『泣くという行為を演じる』よりも、人が泣いてしまう時の声の出し方や、身体の状態を再現しようとは思っています。
その時に参考にするのは、人が泣いている場面に出くわした時の記憶です。
自分の記憶を照らし合わせずに、ゼロからお芝居で感情を作ることは、嘘になってしまいますから。そういった意味で、いつも心がけていることは“俳優としての感覚を日常生活でも常に研ぎ澄ませている”ということかもしれません。まあ、僕、実はあんまり泣けないんですけどね」

――心を揺さぶられた理由がわかりました……! ありがとうございます。
今回、完成された『あやしい彼女』を観て、どのような感想をお持ちになりましたか?

「完成した映画を観たら、多部さんの中身が本当に73歳の倍賞さんにみえたのが一番の衝撃でした。
撮っている時は、“73歳の老人が20歳の女の子になっている”という設定を頭では理解していたのですけど、ここまで見事な仕上がりとは……。
倍賞さんも終始チャラチャラしているのかと思いきや、いきなり人を怒鳴りつけたりするなど、シーンごとに緩急が付いていて面白かったですね」

――共演者の方から見ても、多部さんの演技は衝撃的なのですね。志賀さん御自身が現場で演技をする上で、苦労したシーンはありますか?
「この作品では、障子を突き破ったり、血糊つけて拘束されたり、すごい状態になっていたけれど、そんなに苦労は感じなかったです(笑)。
『真冬に池の中に飛び込め』と言われたらつらいですけどね。『あやしい彼女』では本当に楽しく仕事をさせていただきました」

『あやしい彼女』は人生を振り返れる映画

――志賀さん御自身は20歳に戻りたいという願望はありますか?

「『戻りたい』という願望はないですね。やはり今の自分が選んだ生き方が一番いいです。色々な失敗も、恥ずかしい経験もたくさんあったけれど、それぞれが起きたお陰で今がありますから。自分が作られてきた過程を振り返って、その記憶や経験、出会った人たちを大事にしていかなくてはいけないなと思っています」

――「今の自分が選んだ生き方が一番いい」というお言葉、『あやしい彼女』にも当てはまりますね。この映画を観て、もっと近くに居る人を大事にしたくなりました。この作品は本当に世代を問わず楽しめる作品ですよね。

「そうですね。小さいお子さんから大人の方までそれぞれの楽しみ方がある映画です。
とにかく観ていて、笑えますし、じわっと目頭が熱くなるシーンもあります。
観終わると、自分がどう生きてきたかを、思い起こさせてくれるんじゃないかな。
ぜひ多くの人にご覧になって頂きたいですね」

(取材:霜田明寛 小峰克彦 文:小峰克彦)

■作品情報
映画『あやしい彼女』

公式サイト:http://ayakano.jp
公式twitter:twitter.com/ayakano2016
公式Facebook:facebook.com/ayakano2016

監督:水田伸生   脚本:吉澤智子   音楽:三宅一徳   劇中歌監修:小林武史
出演:多部未華子、倍賞美津子、要潤、北村匠海、金井克子、志賀廣太郎、小林聡美
配給:松竹   原作映画:「Miss Granny」(CJ E&M CORPORATION)
©2016「あやカノ」製作委員会 ©2014 CJ E&M CORPORATION

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