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他人の咀嚼音を聞いて楽しむ「モッパンASMR」。クチャラーとは何が違う?

たなか もみこ

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たなか もみこ

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今、他人の咀嚼音を聞く動画が大人気!

食事中に音を立てる人のことを嫌悪感を含めて「クチャラー」といいますが、不快であるはずの咀嚼音をあえて聞く「モッパンASMR」がYouTube、Instagram、TikTokなどで“心地良い”咀嚼音を楽しむ、新たな動画ジャンルとして流行しています。

何を隠そう筆者もファンの1人。「クチャラー」との違いも考えながら、モッパンASMRの魅力を紹介します。

2大動画トレンドが融合した新ジャンル「モッパンASMR」

まずは言葉を分解して解説します。

ASMR(Autonomous Sensory Meridian Response)とは人が目や耳を刺激されたときに、ゾワゾワしたり、心地良いと感じる感覚のこと。特に耳への刺激に特化した「音フェチ動画」は人気があり、これまでも石鹸をカッターで削っていく「石鹸カーヴィング」や中国の女性たちが色とりどり、様々な形をした氷を食べる動画が大きな話題になりました。

参考記事
【寝落ち確実】眠れない夜に聴いて欲しい、おすすめASMR動画3選
https://social-trend.jp/52114/

一方、モッパン(먹방、mukbang)は「먹는방송」(モグヌン バンソン)の略で、テレビ番組で出演者が食事をするシーンを指す韓国の造語です。もとはテレビ番組のいちシーンだったものが独立し、およそ10年ほど前から“食事をする姿を楽しむ”コンテンツとしてテレビ、そしてYouTubeでプロ・アマ問わず愛されています。

そしてそれらのいいところを見事に掛け合わせたのがモッパンASMR。他人が食事している姿を見て、聞いて楽しむ1つの動画ジャンルとして誕生しました。

音だけでなく、画づくりもすごい!

モッパンASMRで聞ける音は主に「もちもち」「パリパリ」「サクサク」「シュワッ」の4種類。
これらがさまざまな食べ物で表現されます。

人気クリエイターの動画はとにかく量が多かったり、 こんなもの食べるの!? といったものだったり……。音だけでなく画づくりにも力が入っているのがモッパンASMR動画の魅力のひとつです。

ここからは、ASMR動画で人気の料理をいくつか紹介していきます。

こんなの本当に食べきれるの!?段違いのスケールで用意する大食い料理

まずは誰もが見たことがある食べ物から。
モッパンASMR動画は検索によって一覧表示されたときに、どれだけ視聴者の目を引けるかが再生回数に直結するため、画面いっぱいに食べ物を見せるのが定番となっています。しかもしっかりそれらを食べきるから驚きです。別の意味でも見ていて気持ちいいんです!

麺類

麺は2玉以上が基本。パスタよりも中華麺や春雨を炒めた料理が多く、辛い麺を大量に食べたり、大量の麺の上にチーズをかけたりと千差万別。本当に見ているだけで満腹になってきます……。

ファストフード

ファストフードはバーガー少なめ、揚げ物多めの比率が定番。わずか10分弱のこの動画では、吸い込まれるように女性の口に入っていく食べ物を眺めながら、バーガーに入っているレタスのサクッ、フライドチキンの衣のサクッ、パイのサクッと、この動画だけでも3種類のサクッ音を楽しむことができます。

刺身

意外と海外クリエイターに人気があるのが、刺身や生の魚介類。ただし、サイズ感は日本で日常的に見ているものとは比べ物になりません。そして特に多いのがサーモン! サクというか、もはや頭と尻尾を落としただけの塊ともいえそうなサイズ感の刺身にそのままかぶりつく迫力は、和食の範疇を超えています。

「え!食べるの!?」身の回りにあるアレを再現したびっくりスイーツ

お菓子の城や動物をかたどったスイーツは数多くありますが、モッパンASMR動画で食べられているのは、思わず「えっ!そっち?」とツッコんでしまいそうになる、身の回りのアイテムたち。しかも、その再現率がすごいんです。

マヨネーズ

画面に映るのは、個性的な風貌のマダム。左手に持っているマヨネーズをたっぷりかけたローストチキンを食べるモッパンASMR動画かと思いきや、食べるのはまさかのマヨネーズのほう!!

この方は他にもコーラやジュースのボトルをゼリーで本物そっくりに作ってドッキリ! というような動画をたくさんアップしています。しかし、このマヨネーズが何でできているのか、どんな味がするのかは明らかにされていません。でも躊躇なくマヨネーズをかけてマヨネーズボトルを食べているシーンもあるし、マヨネーズが合うものなのでしょうか。気になります。

ヘアブラシ

タイトルに「EDIBLE BRUSH(食用ブラシ)」とあるように、本当にヘアブラシやネックレスを食べているのかと目を見張ってしまうモッパンASMR動画。これにはきゃりーぱみゅぱみゅさんも興味津津のツイートをされています。

ちなみにヘアブラシは、キャンディやスポンジケーキ、ライスクリスピー、パスタなどで作られているのだとか。パスタで作るということは別に美味しいわけではないですよね……。 本物と見まごうような精巧さと、そこにかける熱量の高さにただただ感服します。

日本ではあまり見ない、世界の料理

音フェチ動画の魅力の1つに言葉の壁がないことが挙げられます。つまりそれは、世界中の料理を垣間見れるということ。初めて見たときにはギョッとしてしまうような料理も、彼女たちが美味しそうに食べている姿を見ていると、だんだん食べてみたくなってくるから不思議です。

スパイシーエノキ

スパイシーエノキは中国や韓国にルーツがある料理で、「茹で」「炒め」「蒸し」いずれかで火を通したエノキに、唐辛子やガーリック、醤油、オイスターソースなどで作った辛いソースを絡めたもの。欧米圏ではベジタリアンにも人気があるようです。

ところでエノキの音って想像できます? モッパンASMR界隈ではなんと「パリパリ(crunchy)」に分類されています。歯ざわりのイメージは全く異なりますが、音だけ聞いてみると……どうなんでしょう。ぜひ確かめてみてください。

ホットチートスフライ

こちらはスナック菓子のチートス(日本にはない激辛フレーバー)を砕き、衣にした揚げ物。材料にはカニやエビといった生ものはもちろん、フライドチキンにまとわせて再び揚げるというちょっと意味不明なものも。さらにチーズソースをつけて食べるのもポピュラーで、そのカロリーは計り知れません。

たくさん食べるmukbanger(モッパンをする人)ですが、アジア発のコンテンツのためか画面内に映るクリエイターたちの多くが健康的な体型をしています。やはりカロリーを気にしている方もいて、こちらの動画のクリエイターさんも以前Instagramで「動画でハイカロリーなものを食べるために、それ以外の食事はヘルシーなものにしている」と発信していました

ポッピングボバ

ポッピングボバは、海外のモッパンASMR動画がきっかけで日本のトレンドとなったスイーツ。筆者も食べてみましたが、食感はイクラそっくり! 中にシロップが入った甘いイクラが、同じ味のシロップ漬けになっています。噛むと口の中でプチプチっと弾け、ジュワーっと甘い液体が広がります。

見て、聞いて、愛おしくなる。ペットたちのモッパンASMR

さらにモッパンASMRは人間だけでなく、ペット動画界隈にも拡大!
ペットのモッパンASMR動画は癒やし100%! 動画を見ながらついつい目を細めてしまいます。

人気なのがサモエドのMAYAちゃん。飼い主さんに出されたもの(主に野菜)を食べてみるというモッパンASMR動画です。まずは匂いをかいで、とりあえず口に入れてみるのですが、初めて見るものに向ける表情や、嫌いな味に出会った時にボロッと口から出す姿がたまらなくかわいいんです!

うさぎ

こちらは犬とは違い、ほとんど意思もなく、ただ食べている様子のモッパンASMR動画。一心不乱に食べる規則的な咀嚼音がとても癒やされます。人参はもちろん、意外とスイカも好きなようです。

クチャラーとは何が違うの?

さてモッパンASMR動画とクチャラー、両者の違いはなんでしょう?

日本ではクチャラーは忌避されがちです。しかし、他の国ではごく普通の仕草であったり、「美味しいですよ」という意思表示として好意的に捉えられたりします。モッパンASMRがエンターテインメントとして盛り上がってきた背景にもそういう文化的な理由があるのかもしれません。

さらに、いま人気のモッパンASMR動画は咀嚼音が洗練されているともいえるのでしょうか。フライドチキンの「パリッ」や麺の「モチッ」など、視聴者の大多数が共通してイメージしているその食べ物の“美味しい音”を強調して録られています。少しの差のように思いますが、これが大きなポイントなんです!

きちんと工夫され、食べ物のいいところを引き立てた咀嚼音。だからこそ聞いているとお腹が空いてきたり、「食べたことはない料理だけど美味しそう!」というポジティブな感情を引き出すのではないでしょうか。

また、当たり前のことですがクリエイターによって骨格や噛み方が違うため、同じ食べ物でも仕上がりが十人十色。筆者も日々さまざまなモッパンASMR動画を見漁っているので、推しもいれば苦手だなと感じる方もいます。自分好みのクリエイターさんを見つけて、また別の食べ物の動画を見て……と深堀りできるのも、モッパンASMRが長い間人気であり続ける所以かもしれません。

一度ハマるとどんどんクセになる音フェチ動画、まだ聞かず嫌いしている方はぜひ挑戦してみてください!

(文:たなかもみこ)

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